働き方や会社の責任など、いろんなニュースが駆け巡った今年、「いい会社ってなんだろう?」と考えることが多くなりました。そんなの残業がなくて、ボーナスがバンバン出て、2016年の漢字「金」がいっぱいもらえるところだろー! と言う方も多いかもしれませんが、本当に「お金」だけでしょうか?
『だれかに話したくなる小さな会社』(浜口隆則、村尾隆介・著/かんき出版・刊)には、小さな会社でもしっかりブランディングされていて仕事を楽しんでいる会社がいくつもの事例と共に掲載されています。今回はその中から、3社ご紹介しながら、いい会社について考えてみようと思います。
会社名は奥さんの名前! 何よりも家族を大切にした会社経営
イタリアとスロベニアの国境付近にある「コルモンス」という町に、ロレンツォさんが営む小さな生ハム工場があるそうです。ここの生ハムは手に入れるまでに2~3年待ちは当たり前! 首相でさえ、年間に購入できる本数が限られているんだとか。そこにはどんなからくりがあるのでしょうか?
ロレンツォさんは、商品のクオリティや、人生のクオリティを考え、「自分で定めたサイズ以上に、ビジネスの拡大をしない」ということを決めています。
(『だれかに話したくなる小さな会社』より引用)
ビジネスと聞くと、どんどん売上を上げるために人を増やして、事業を拡大して、と考える方が多いと思うのですが、そこを考えない! あくまで自分のできる範囲の中で最善を尽くす…仕事の前に「人生のクオリティ」を考えた経営をするというのは、これから独立しよう! 経営者になりたい! という方に大切な視点かもしれませんね。家族を守るための仕事が、いつの間にか家族との距離を遠ざけていたらそれは「幸せ」とは呼べません。いい会社には心の余裕、豊かさも大切なのですね。フムフム。
働くスタッフは会社一番の理解者であり、表現者
2009年から原宿で大人気の「パンケーキデイズ」というお店。 メディア等にも多く取材されている店舗なので、ご存知の方も多いかもしれません。まるで絵本の中に入ったかのような店内では働いているスタッフさんが本当に幸せそうなのだそうです。
一人一人が、自分たちのブランドを深く理解し、その表現者になっています。
(『だれかに話したくなる小さな会社』より引用)
なるほど! これだけスイーツブームが続いている中でもいまだにファンが絶えなく続いているのは、こうやってスタッフさんが理解者&表現者になっているということなのですね。働いている人たちがいい雰囲気を作り出し、それがお客さんに連鎖し、さらに広がる…いい会社にはいいスタッフ。フムフム。
存在自体が社会貢献に! 住民にとってなくてはならない存在の会社
茨城県にある「やまぐち薬局」は、「相談できる『くすりやさん』」をスローガンに掲げ、県内で一番やさしく、愛される薬局を目指しているんだそうです。町の調剤薬局ならどこにでもありそうですが、何が違うのでしょうか?
「笑いはクスリ」という思いから、薬局の中に高座を設けて落語を開催し、無料で地域のお年寄りを招待。1日中、笑わせてあげたこともありました。
(『だれかに話したくなる小さな会社』より引用)
ただ働く、仕事をするという枠を飛び越えて、地域の人に喜んでもらえるような取り組みを行ってプラスの価値を提供する…、そうすると同じ商品を買うならここの薬局で買おうかしら? と思う方も多いですよね。自分が買い物をするのを振り返ってみても判断しているのは「安さ」だけではないはず! どんな価値を提供できるかをビジネスの中だけでなく、社会の大きな枠組みで考えるのか…フムフム。
振り返る機会が多い12月。この機会に自分なりの「いい会社」について考えてみてはいかがでしょうか? 会社の規模や事業内容だけでなく、自分にとって働く上で何が重要か、頭で思うのは簡単、口で言うのも簡単、来年は実行に移して、悲しかったりあきれちゃったりするようなニュースがひとつでも減って欲しいな…なんて思っています。
(文:つるたちかこ)
【参考文献】
だれかに話したくなる小さな会社
著者:浜口隆則、村尾隆介
出版社:かんき出版
小さな会社でありながら、その地域や業界でブランドと呼ばれるような会社は、人材や情報、お金といった経営資源が、向こうから集まってきます。本書では、そんなブランド会社について、1.どんな会社なのか?(だれかに話したくなるような会社の事例)2.なぜ、今、ブランド化を意識しないといけないのか?(その時代背景や、劇的に変化している経済のトレンド)3.どうやったら、そんなブランド会社がつくれるのか?(具体的な7つの方法)という構成で、人やチャンスが集まってくる方法を綴っています。
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