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2017/5/2 17:46

ネットいじめや社会的死をもたらす炎上をどう防ぐ? つながりが生むはずの“喜び”を取り戻す「アディッシュ」の挑戦

五反田スタートアップ第10回「アディッシュ」

 

TwitterやFacebook、ブログなどの普及により、今や多くの人にとって何かを発信するハードルはかなり低くなっている。しかし、ほんの少し使い方を誤れば、個人または企業のイメージダウンや炎上、学校に通っている人であればいじめなど、大ダメージにつながりかねない。

 

そのような状況を防ぎ、人と人との“つながり”による喜びを生み出すという、インターネットやSNSが本来あるべき姿へと戻すサービスを提供しているのが、今回ご紹介するアディッシュだ。一体どのようにして「つながりを常によろこびに」変えているのか、代表取締役 江戸浩樹氏に話をうかがった。

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↑アディッシュ 代表取締役 江戸浩樹氏

 

悲惨な事件を未然に防ぎたい――24時間体制でモニタリング

――:まず、御社の事業内容について教えてください。

 

江戸浩樹氏(以下 江戸):主なものとしては、企業向け投稿モニタリング事業、「スクールガーディアン」という学校向け投稿モニタリング事業、 ソーシャルアプリ向けカスタマーサポート事業の3つです。

企業向け投稿モニタリング事業は、企業の持つユーザー参加型オウンドメディアやソーシャルメディア上に開設された企業の公式アカウントに寄せられたユーザーのコメントを、人やシステムにより24時間体制でモニタリングするものです。 サイトの目的にそぐわないような投稿――たとえばアダルト画像が貼り付けられていたり、誹謗中傷合戦が行われていたり、 荒らしがあったりした場合、利用規約に照らし合わせて、投稿を削除したりクライアント企業にアラートを送ります。

スクールガーディアンではネットいじめの調査、対策を行います。ここでのモニタリング対象は学校が運営していない、いわゆる「裏サイト」。まずは、ネット上でそれらを探すところから開始します。そして、ネットいじめが発生しているようであれば学校側に報告し、トラブル時の対応についてもサポートします。

3番目のソーシャルアプリ向けカスタマーサポート事業は、アプリ、特に最近ではスマホアプリに特化したもので、利用方法や不具合といったユーザーからのお問い合わせに対応するサービスですね。

そのほか、最近はじめたものとして、機械学習と人を組み合わせてお問い合わせに対応するチャットボット「hitobo(ヒトボ)」と、Web集客+Web 接客サービス「フロントサポート」があります。hitoboはメールや電話のお問い合わせのチャット化、機械による合理化、また対応が迅速になることで会員登録や資料請求等のコンバージョンを向上させることを狙い、2016年10月 に開始。フロントサポートは、2016年4月にリリース。公式ソーシャルアカウントを使って、潜在ユーザーにサービス情報をプッシュする「リプライマーケティング」を仕掛けたり、サイト内でのユーザー行動履歴に応じて 「何かお困りですか?」といったポップアップなどを表示させ、ユーザーへの接客を行うような「Web接客」を行っています。

 

――:ガイアックス在籍中にスクールガーディアンなどのサービスを起ち上げられたそうですが、きっかけを教えてください。

 

江戸:ガイアックスはアントレプレナーシップの高い会社だったため、自分も何かやりたい、という想いを常に抱いていました。そんなあるとき、ネットいじめが原因で自殺、というニュースを目にしたんです。徐々に広がりはじめていたネットいじめに対して、それを解決できるサービスを作り上げて悲惨な事件や事故を未然に防げないだろうかと社内でディスカッションし、2007年にこのサービスを立ち上げるに至りました。

 

――:立ち上げ後の学校側や世間からの反応はどのようなものでしたか?

 

江戸:当時、ネットいじめは社会問題となりつつあり、世間からの関心度の高い課題ではありましたが、クライアントが最初からガンガン決まる、ということはありませんでしたね。むしろ、「ネットいじめに対するサービスがあるんだ」という認知を広げるため、広報活動に力を入れていました。その甲斐もあって、年々相談件数やクライアント数は増えてきています。

 

――:学校とはどのように連携しているのですか?

 

江戸:レポートを毎月提出しています。また、いつでも学校側から弊社へ相談していただけるよう、窓口は常に開いた状態にしています。

サービスとしては、ネットいじめがないかモニタリングするものですが、いじめがないというのが最善。なので、先生や保護者、生徒への啓発講座を年100回以上行い、リテラシーの向上に努めています。

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↑ネットいじめそのものをなくせるよう学校現場へ啓発講座を開催。 日々国内・海外にある複数のセンターを飛び回っているという江戸氏

 

――:そういった啓発活動は、すでに契約を結んでいる学校向けに行っているのでしょうか?

 

江戸:クライアントである学校へはもちろん、そうでないところにも出かけていきます。行政とも連携し、ネットでのつながりが原因で悲惨な事件が出ない世界を目指しています。

 

解決すべき社会課題にセンシティブであってほしい――500人以上の従業員に望むこと

――:モニタリング事業の市場規模と、そのなかでの御社の立ち位置はどのようなものでしょうか?

 

江戸:そうですね、矢野経済研究所によれば、ソーシャルメディアBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)市場は100億円あるといわれており、年々約1割ずつ伸びています。正確に調査したわけではありませんが、市場規模や競合の規模を考慮すると、アディッシュは、トップ3社に入っていると考えています。

 

――:事業をはじめてから10年でトップ3ですか! これほどまでに成長率が高いと、逆に苦労することもあるのではないでしょうか?

 

江戸:人の成長、といった面での苦労はありますね。現在の従業員数は国内外、アルバイトも含めて500人以上。目の前にある、または未来に起こりそうな解決すべき課題・ニーズを見続けて、サービスに取り込めるような感性を育てられるのか、会社として、チームとして、人としても成長できるようにマネジメントできるのか、というのが課題ですね。

そのため、全拠点をつないだ短い朝礼を週に3回、さらに私からの中期像の共有や、大きなテーマの横断的ディスカッションを行う、長めの全体会議「ALL adish MTG」も四半期に1度開いています。入社後のOJTも意識の共有を重要課題としており、新人スタッフは基礎業務について学ぶことはもちろんですが、私から直接ミッションについてレクチャーもしています。

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↑「社会課題への感じかたは人それぞれ。敏感に感じ取り、サービスに反映できるような感性を持てる人へと成長してもらいたい」と語る 江戸氏

 

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↑目を向けているのは社外だけではない。「女性が輝ける職場環境を作っている」としてForbes主催の「JAPAN WOMEN AWARD 2016」企業部門では4位を受賞している

 

――:苦労されるぶん、成果が見られるとうれしさもひとしおですよね。

 

江戸:そうですね。ネットいじめはまだまだゼロにはなりませんし、かなり大変な案件も頻繁におこります。でも、悲しい事故を未然に防げたという意味では、やはりうれしいと素直に感じます。

 

【五反田編】次のステップを踏むスタートアップ企業に“あり”な選択

――:続いて、この連載のキモである五反田についてもうかがえればと思います。五反田にオフィスを構えた理由はズバリ何でしょうか?

 

江戸:都内全般にアクセスしやすいのに賃料が安く、そのうえ広い、という点ですね。ベンチャー企業が規模を拡大するタイミングなら五反田という選択はかなり“あり”なんじゃないでしょうか。

 

――:五反田にどんなイメージをもっていましたか?

 

江戸:実は学生時代にお世話になっていた会社が五反田にあったんですよ。そのため、飲み屋も多いけどオフィスも多いなぁと感じていました。

 

――:飲み屋さんの話が出てきましたが、よく行かれる居酒屋などがあれば教えてください。

 

江戸:そうですね、「酒場それがし」や「Setouchi Kitchen (セトウチキッチン)」にはよく行きますね。

 

――:ランチや焼き肉だと、いかがですか?

 

江戸:外出することも多いので、そこまで五反田のランチは開拓できていないんですが、挙げるとすれば「フォレスト」。ランチプレートがあるんですが、自然派な雰囲気でオススメです。焼き肉だと「うしごろ」ですね。

 

――:「うしごろ」の名前はほかのインタビューでもよく聞くので、本当に人気が高いんですね。五反田には飲食店も多いですが、スタートアップ企業もたくさん集まっています。コラボしたい企業はありますか?

 

江戸:すでに「Karte」というWeb接客ツールを出しているプレイドさんとはコラボしていますが、RettyさんやOisixさんと何かできたらと思います。投稿モニタリングやカスタマーサポートに関して、うちのノウハウを生かせないかなと。

 

――:最後になりますが、今後のビジョンについて教えてください。

江戸:私たちの会社のミッションは「つながりを常によろこびに」というものですが、何もネットに限った話ではありません。オンラインであれオフラインであれ、さまざまなつながり・コミュニケーション上で生じうる課題を解決するサービスを展開していきたいと考えています。ただ、私たちだけでは気づけないこともある。だから、こういった社会的課題に関心のある方がいれば、ぜひお会いしたいです。そして、現在は国内メインで活動していますが、ゆくゆくは世界中で起きているコミュニケーション上の課題を解決できれば、と考えています。

 

――:リアルでもバーチャルでも、つながりが生み出してしまう悲しい事件がひとつでも減ればうれしいですよね。今日はどうもありがとうございました。