No Showを避けるためのリスクヘッジとは?
――となると、No Showが起きた際はお店側が泣き寝入りするか、自力で何らかの策を講じるしかないのが現状なのでしょうか?
安川:言い切ることはできませんが、現実的にはそうなることが多いと思います。しかし、いくつか対策は講じることができます。例えば、予約する人の住所、氏名、電話番号の把握はもちろんですが、予約する際、内金を入れてもらうなどの策を取るのも有効です。
また、大勢の予約でしたら、お客さんは会社や学校など、あるコミュニティの一員であるので、団体・組織名を押さえておくこともよいでしょう。お客さんがそのような団体に所属していることが本当であるとすれば、会社を通して本人に連絡を取ることも可能です。
キャンセルポリシーをしっかり作成し、お客さんに周知することも重要ですが、それでもNo Showが起きてしまったときのために、空席の告知をお店側がインターネットやSNSを使って空席状況をすぐに告知できるようにしておくことなども、リスクヘッジの一つとして挙げられると思います。
さらに、予約サイト側でも一部では「お見舞い金」制度があって、「自社サイトからの予約でNo Showが起きたときにはいくらかをお店に渡す」という対策をしているところもあるようです。こういった一種の保険的なサービスのある予約サイトを利用するというのもリスクヘッジのやり方と言えます。
お客もお店も契約の上では対等
――予約したにも関わらず、当日に連絡もなしにキャンセルをする人たちに対してモラル向上を促す手段はありませんか?
安川:これは難しいですね。日本では、特に飲食店などですと「お客さまは神様」といった風潮がありますが、本来は対価を支払ってサービスを受ける側とサービスを提供する側との間では、身分の上下はありません。両者の関係は対等であり、等価交換によって成り立っているからです。予約もまた、双方の意思表示の合致によって成立する「契約」ということ。要は、お互いを尊重してルールをきちんと守りましょうということです。
そう言うと、客側から「こっちはお金を払っているんだから、何をしてもいいだろう」「店側は客を選べる立場じゃないんだよ」と反論がありそうですが、契約という観点から見ると、そのような考え方は間違っています。「飲食店のサービスも対等な関係同士の契約である」という意識が広まればよいでしょうね。
No Showはお店側にとって迷惑千万な話ですが、裁判を起こすには様々な困難が伴うことが分かりました。No Showに遭わないために、お店側はできる限り対策を講じておくことが重要ですが、それと同時に、その努力を顧客管理やサービスの改善にうまく用いることができれば、悪い客も寄り付かなくなるのかもしれません。