コロナウイルスによってリモートワーク(正確には在宅勤務)が、一部の職種や業界では一般的になりました。自宅での仕事が当たり前になったものの、引き続き様々な課題があります。家族を持つ人であれば「仕事に集中できない」「仕事中でも子どもが遊びに来る」「リモート会議で、生活感ある環境を他人に見られるのがイヤだ」など。
こういった在宅勤務に伴う問題を解決するアイテムとして特に最近注目を浴びているのが、ゲーミング家具ブランド・Bauhutte(バウヒュッテ)の「ぼっちてんと」。
部屋の中にもう一部屋作るための室内用テントですが、見た目は写真現像する暗室のよう。「設営が面倒なんじゃないか」「暗すぎるテント内での弊害はないのだろうか」など、ややネガティブな印象が最初浮かびましたが、実際に使ってみないとわかりません。ということで、今回は実際にぼっちてんとを部屋の中に設営→使用→撤収・収納までを行い、その中身に迫ってみることにしました。
まずは、段ボールから取り出してぼっちてんと設営!
キャンプで使うテントには様々なものがありますが、最も設営しやすいのがポップアップ型のもの。特別な工具は要らず、ワイヤーで自立するものでコツさえ掴めば、簡単に設営/収納可能です。このぼっちテントも、ポップアップテントの構造と同じ。ケースから取り出し収まっているテントの表面を手で少しずつスライドさせていけば、すぐに広がっていきます。
ただし、壁面まで広げて、いよいよぼっちてんとを自立させる際は、四隅をきちんと見極め、四隅と辺とが必ず直角に近くなるようにしないと、すぐフニャッと倒れてしまいます。設営自体はすごくラクで、5分足らずで組み上げることができました。
実際にぼっちてんとを使ってみた!
プライベート空間には、仕事外の情報がたくさんあります。奥さんや子ども、ペットの声、食事の支度の匂い、テレビの音など。普段なら特に気にならない要素も、リモートワークとなると途端にストレスになります。
こういった際に、遮断性のあるぼっちテントはかなり重宝するアイテムで、まず物理的に仕事に集中できます。また、こちらの状況を察してくれない人が周囲がいた場合でも、ぼっちテントにこもることで「今、僕は仕事をしているんです!」とはっきりアピールできる利点もあるように思いました。
また、リモート会議などでは自宅の私物が映り込むのがイヤな場合が多々あります。この場合でも、背景が真っ黒というのはシンプルで良さそうです。
ぼっちてんとを撤収・収納してみた!
使い終わったぼっちてんとの撤収・収納は、なかなか大変でした。まず、ぼっちてんとの4つの壁面を1つにまとめ、さらにねじ込みながら円形に収納していく形になり、これはコツが要りそうです。ただし、使用時はしっかり自立しているので、撤収・収納の際の多少の難儀はやむを得ません。とはいえ、キャンプテントの設営~撤収・収納に比べればラクなことは確か。
自分のデスク用に試作したテントが商品に!
ぼっちてんとはシンプルな構造でありながら、実はそれまでにはありそうでなかったアイテムです。どのようにして誕生したのかを、ぼっちてんと生みの親であり、発売元・Bauhutteの商品企画部・川瀬隼利さんに話を聞きました。
ーーぼっちてんとが生まれた経緯から教えてください。
川瀬隼利さん(以下:川瀬) ぼっちてんとの販売を開始したのは今から6年前の2014年でした。現在、Bauhutteはゲーミング家具ブランドで展開していますが、当時僕は弊社の別のアウトドアブランドの部署にいて、つまり僕もアウトドア用のテントの制作をしなければいけない立場にいたんです。
でも、それまで僕はキャンプをしたことがなかったので、とりあえず自分のデスク用にテントを作ってみたんです。使ってみると、すごく居心地が良くて。「いっそ新しいブランドを作って、この室内用テントを商品化しよう」ということになり、販売し始めたという経緯です。
ーーどんなところに居心地の良さを感じましたか?
川瀬 一つは真っ暗になるところですかね。僕はオフィス空間の明るい場所が相当苦手で。むしろ暗いところでないと集中して仕事ができないんです。逆に、ぼっちテントのような暗い場所にいれば、仕事の能率が格段に上がるんです。一般性の高い商品ではないだろうとも思ったのですが、発売後は「ぼっちてんとじゃないとダメ。絶対にこれを使う」という人が結構いて驚きました。
ーーどんな方が多いのですか?
川瀬 ゲームを楽しむ方ももちろんいるのですが、イラストレーターさん、デザイナーさん、ライターさん、作家さんといった、クリエイティブな仕事をされていて、集中力を高めたい方からの支持が厚いです。また、特にイラストレーターさん、デザイナーさんなどは「PC画面に余計な光が入らなくて良い」という声もあるようです。
また、最近だとやはりリモートワーカーからの支持が高まっていますね。「コロナ禍で急にリモートワークをすることになったけど、部屋がなくリビングで仕事をしていると子どもやペットが乱入してきて大変」という方は、日常と仕事との空間を区切る上で、ぼっちてんとを使われる方が多いようですね。
社員1人ずつのための、ぼっちてんと化を目指す!
ーーこれまでにも改良を重ねてきたそうですが、今後さらに向上させていきたい点はありますか?
川瀬 今のぼっちてんとで十分だと思っており、今後は普及させていきたいです。具体的には日本のオフィスのあり方ですね。オフィスの常識は、広い空間にいくつものデスクがあって、そこでみんなが集まってコミュニケーションを取りながら仕事をしていくものだと思うんです。
でも、これによって、仕事の能率が下がっている人が、実はいっぱいいると思うんです。他人と同じ空間にいることが苦手な人もいるだろうし、作業をしてる自分のPC画面を誰かに覗き込まれたくない人もいるだろうし。そう考えると、社員1人ずつ別室があると良いと思うんですけど、さすがにコストがかかりますよね。そういう際に、社員1人ずつにオフィスの中に、ぼっちてんとを張って作業をさせてみると良いと思うんです。
ーーつまり、広いオフィス空間の中に、ポコポコとぼっちてんとがあるという(笑)。
川瀬 はい(笑)。実際に僕自身もやっていたことがあるんです。オフィスに自分だけのぼっちてんとを立てて、その中で仕事をしていたんですけど、ある日撤去されていました。「景観が悪い」って言われて(笑)。
しかし、ぼっちてんとがオフィスにあると本当に良いと思うんですよ。人にもよると思いますけど、会社全体の作業能率はきっと上がると思うので、業績改善にも繋がるんじゃないかと思っています。もちろん、このコロナ禍でリモートで使われるのも嬉しいですけど、今後はこういった広まり方があると良いなと思っています。
シンプルな構造でありながらも、実際に使ってみないと想像しにくかったぼっちてんと。しかし、今回設営→使用→撤収・収納を経て思ったことは、扱いやすさに対して、集中力アップの効果が絶大だということ。もちろん、川瀬さんのお話のように、今後オフィス空間での使用も面白いかもしれません。無限の可能性と使い方を秘めたぼっちてんと。特に昨今のリモート化で、業務能率が下がっている方はぜひ一度お試しいただきたいアイテムといえるでしょう。
撮影/中田 悟
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