Withコロナ時代は、働く場所が日々変化する。従来以上の成果を出し続けるにはどうしたら良いのか。今回は革新的な製品で「働き方」をサポートする4社を選出。GetNavi web編集長の山田が各社の担当者に最新事情と自社のオススメ商品を聞いた。
【座談会の参加メンバー】
働くスタイルを選ばない実用性と携行性が価値
山田 現在、「働き方」が大きく変わってきています。各社の状況はいかがですか?
前川 ニューバランスではポイントが2点あって、まずウォーキングとランニングの需要が世界的に広がりました。もう1点は「THE CITY」コレクションが好調です。これはスポーツ量販店のアルペン様専売品で、30〜40代のファミリー層、つまりお父さんが仕事をする際の快適性と利便性を狙っています。ジャージ感覚で着用できて伸縮性もあって、撥水性もあるから雨の日でも大丈夫。ビジカジに合うデザインでビジネスではもちろん、ゴルフでも着れてしまう。スポーツブランドの機能性に加え、洗濯機でも洗える実用性、オン・オフを問わないシームレスさが支持されていると分析しています。
山田 富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)さんはコロナ禍でパソコン需要は伸びていますか。
近上 伸びていますね。そもそも2020年はパソコン市場が苦しいと見られていたんです。Windows 7のサポート終了が2020年1月14日にあり、その買い替え需要が山場のはずでした。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務制度が普及。近年、PCは「一家に一台」 だったのが、「一人一台」に時代が変わりつつあります。弊社では、この秋にモバイルPCながら重量が約634gという世界最軽量の新製品を発売します。家の中はもちろん、会社や出先など様々な場所に持ち運べて、機動力高く業務を行える。働く場所が多様化する時代にうってつけの製品だと思っています。
山田 FCCLさんは電子ペーパーも力を入れているとか。
近上 モバイルPCと同時に力を入れているのが、電子ペーパー「クアデルノ」 です。PDFデータを画面に表示して、専用ペンで画面に紙と同じ感覚で文字を書けて、またデータとして送れる。ペーパーレスの観点で在宅勤務や外出先の業務でも活躍しますし、アイデアをアウトプットする点でも役立つものなので、今後ぜひ注目してもらいたいですね。
クルマの中の過ごし方という新しいニーズ
山田 パイオニアさんはいかがでしょう。最近、在宅勤務ならぬ「在車勤務」 だったり、ワーケーションが広がりを見せていて、モビリティも働き改革と連動する時代になってきたと感じています。
藤田 パイオニアのカー用品ブランド「カロッツェリア」では以前より「通信」 に着目した商品作りを行っています。弊社の主力商品はカーナビで、ナビの本質を追い求めて安全・安心に短い時間で目的地に到着してもらうことを目指していますが、一方で「クルマの中を自宅リビングにしたい」という思いもありました。 昨秋発売したカーナビのフラッグシップモデルであるサイバーナビではNTTドコモの「docomo in Car Connect」を活用して、車内をWi-Fiスポットにできるようになりました。
そして今冬は、通信機能に特化した「車載用Wi-Fiルーター」を新発売します。自宅にいる感覚で通信し放題で、手続きから開通までを非常にシンプルに設計しており、本体を購入してすぐにエンタメコンテンツを楽しんでオフの時間を充実させることができます。使い方によっては、働くこともできる。市況自体はコロナの影響で落ち込んではいますが、ワーケーションをはじめとしたクルマでの新しい過ごし方について、カーナビとは違う価値を提供できるチャンスであると捉えています。
山田 ありがとうございます。ワーケーションについて、働く現場を知るカウネットさんにもお聞きしたいのですが、ワーケーション需要は出てきていますか?
入谷 現時点では、ワーケーションを企業として積極的に導入する事例はそこまで聞いたことがなく、個人レベルで試験的に取り組んでいる印象です。一方で、 パイオニアさんのお話を聞いて車内でのスキマ時間を使った勤務という観点は新発見でした。都心の企業では業務にクルマを使う会社はそこまで多くないと思いますが、郊外や地方ではクルマを使って移動の合間に業務をされる方は相当数いる。スキマ時間を使い車内で働く方の実情を調査し、弊社でもサポートできることがないか模索したいです。
山田 何やら、コラボレーションの可能性もありそうな話ですね! カウネットさんではコロナ以降、どのような商品がヒットしていますか?
入谷 やはり、リモートワーク関連の商品の人気が高いです。弊社ではワーカーのお困りごと解決をコンセプトとしたオリジナルブランド「カウコレ」プレミアムがあり、業務に必要なツールをひとまとめにできる「テレワークバッグ」などが直近では好調です。また、在宅勤務の導入企業が増えたことで、これらの商品を会社単位ではなく個人で購入いただくケースも増えています。仕事の生産性を高めるツールを会社に提供してもらうのではなく、個人で選択する傾向は加速していくと考えています。
トークはコラボの可能性の話へ
山田 先ほど、コラボのアイデアの話も出ました。本日はまったくジャンルの異なる4社が集まりましたので、せっかくの機会なので「コレは!」というコラボレーションのアイデアはありますか?
前川 クアデルノは場所を問わず書けて、アイデア出しができる特徴があって、これが「THE CITY」コレクションと親和性が高い。「THE CITY」コレクションは、ジャージだけど、きちんとして見える。きちんとして見えるけど、リラックスできる。自宅でも外でもクルマの中でも活躍する。この共通点を一層深堀りできると新しい価値になるのではないかと。例えば、ウォーク(Walk)とワーク(Work)を合体することで「動きながら働く」を新しい働き方改革として提案できるのではないか、といった形です。
もう一点、リモートワークになってから感じるのが、移動時間がなくなって隙間なくミーティングを詰め込まれて、休憩する時間がないんです。今まで「動く時間」があったから息抜きができていたし、インプットもできていた。それがなくなって窮屈。そういった意味では、外に出かけて行うワーケーションは重要だと感じています。ただ、遠くに行く必要はなくて、近場でのワーケーションでOK。そうしたサードプレイスがあるだけでも窮屈にならずに働ける。我々がこうやって集まった中でも一つ形にできるのではないかと思っています。
山田 歩いて行ける近場でもいいですが、ちょっとクルマで移動しつつ、移動した先でクアデルノやリモートワークグッズを使って、リラックスできるウェアで働くということですね。なるほど。近上さんはそれに対してのリアクションはありますか。
近上 そうですね。パソコンは軽くなったといいながらも、やはりキーボードを置いて安定させる必要があります。ただクアデルノだと片手で書けちゃうんですよ。動きながら(外出先で)働くというのも、面白い!と思いました。
前川 場所を選ばない。
近上 はい。紙のノートだと土台となるバインダーなどがないと、力をいれるとグダっとなってしまいますが、クアデルノはそういったことがないので。
入谷 弊社はECショップを運営しており、文具メーカーさんの電子ペーパーデバイスなども扱っています。その動向を見ているのですが、なかなか紙のノートから電子ペーパーに移行していかないと感じています。その要因のひとつとして、用途提案の幅が広すぎるがゆえユーザー側からすると少し迷ってしまうのかなと。紙やノートの代替としてではなく、クアデルノだからできる明確な価値と用途を伝えるのが大事なんでしょうかね。
近上 そこは、まさに試行錯誤をしますね。バナーやコンテンツのABテストはもちろん行いつつ、公式サイト内では、クアデルノを実際に使った方の事例集を掲載しています。自分のライフスタイルに近い人を見てもらって共感してもらうところからクアデルノの世界に入っていただけるようにしています。
前川 ニューバランスの、他のメーカーと大きな違いは、「引っ張るブランド」ではないんですよね。「寄り添って一緒に行こう」というブランド。ニューバランスがニューバランスのことを語るのではなく、第三者が自発的にニューバランスのことを語りたい!というケースが多いんです。これはクラフトマンシップを追求しているメーカーだからこそだと思っていて。語ってくれる人がたくさんいると、「how to use」が増えていきますし、ニューバランスがクアデルノを使ったらこうなるとか、パイオニアさんがクアデルノ使ったらこうなるとか、カウネットさんが使ったらこうなるーーそういったコラボもできると考えています。
近上 入り口を増やしたいですね。いつもと違う入り口が用意できると、これまでアクセスできなかった人たちがやってきて、新しい刺激が生まれる。
山田 トークが加熱してきましたね。この流れで藤田さんはどうですか?
藤田 先ほど、クラフトマンシップの話が出ましたが、カロッツェリアブランドも、非常に熱心なファンが多くいらっしゃいます。すごい厳しいんですけど(笑)、愛があるゆえにとても厳しいですが、そうした方々に支えてもらっています。熱心なファンの方々を拝見していると、ご自身のなかで様々に試行錯誤していただいて、自分なりの使い方や新しい使い方を産み出しています。とてもクリエイティブなんですよね。
なので、あえてひとつのコラボレーション商品を作るのではなく、みなさんの会社の製品の存在を自社のブランドサイトに導線を作って知らせてあげる。これだけでも非常に効果を生むと思います。多くの方が皆さんの会社の製品をすべて結び付けるのも難しいと思うんです。でもそれはとてももったいない。存在をお伝えするだけでも何かが生まれると思うんです。そうした部分はメディアさんの領域だと思うので、あとは山田さんがどんと言ってもられば。
山田 はい! では、ちょっと私も少し語ります。僕、クルマを運転するの好きで、もちろん運転中は運転に集中しているんですけど、同時に、頭の中を整理する時間でもあると思っています。運転に細心の注意や集中は払いつつ、残っている領域で面白い企画ないかなとか、何かできないかなというのを考えていると、ある時、ひらめく瞬間があるんですね。そのときってクルマを止めて、集中できる環境を整えて、すぐにでもメモしたい。その時はキーボードで打つよりは、図や絵でまとめたい。だから、カウネットさんの商品やクアデルノがあるとアウトプットの質が上がると思うんです。
同時に、クルマの話で言うと運転している時に長時間ジャケットを着ていると結構辛い。ドライブは楽しいものなので、なるべくリラックスして疲れを溜めないようにしたい。疲れないという意味では事故のリスクにも影響してくると思います。ドライブは、ランニングやトレーニングのようなわかりやすく身体を動かすものではないですが、カーブでは遠心力が身体にかかるので、実際にはそこそこ身体に負荷がかかっている。目と脳を使いますし、頭と体に負荷がかかって、ドライブのあとって気持ちいいんですよね。そのときにフィットした服を着ていると、何かとても良い時間を過ごしたなという気分になると思っています。
最後に言うと、カウネットさんにはめちゃくちゃ期待しています。車内用のグッズってネット通販で沢山あるんですよ。テーブルだったり、小物入れだったり。でもそれらって、ノーブランドだったり、門外漢のジャンルの会社がやっていたりするので、オフィス用品のプロであるカウネットさんが参入したら、まったく風景が変わると思うんです。
藤田さんがおっしゃるように無理やり結びつけてもしょうがないのですが、僕にとっては自然な形で皆さんの企業のプロダクトを使えるイメージが浮かぶし、働き方が改善されそうな感触があります。
入谷 働く場所が多様化するなかでクルマの中で働くことや、ワーケーションが普及していった場合に、購入商品をクルマや住所として登録されていない場所に届けてくれるといったサービスも面白いなと思いました。あと、FCCLさんとの関連で言いますと、特に最近はPC周りの用品を持ち運ぶことに、お困りごとや不満を感じてる方も多くいらっしゃいます。その結果、PC用品を効率的に持ち運ぶツールが今売れてると認識しています。そのあたり、お互いの知見を活かしながら、良い提案ができたら良いなと。
働き方やライフスタイルの領域では、ツールやインフラはおおよそ整ってきているので、まずは自身がどういった生活を送りたいかを描くことが重要だと感じていたのですが、本日皆さんとお話する中でその思いが一層強くなりました。
【まとめ】優れた機能を選ぶ= 働き方改革になる
さて、4社の座談会を楽しんでいただいたところで、最後にのまとめを。
自宅、オフィス、カフェやワークスペース――働く場所が1日の中でも変化するなかで業務を進めるのに必要なのは、シーンを選ばず発揮する性能や機能、つまり高い汎用性である。
上記のクロストークでも、各社の注力&ヒット商品にはどれもそういった要素が含まれていることがわかる。オン・オフ問わず着られてオンライン会議に臨めたり、軽いエクササイズまでできたりする服、持ち運びしやすくどんな場所でもすぐに仕事ができるモバイルPCや事務用品、はたまたクルマを移動手段ではなく、仕事場にする車載用Wi-Fiルーターといった形だ。
早い企業では在宅/リモートワークがスタートして8か月以上が経過。慣れるフェーズから成果を出すフェーズに入っている。今後のモノ選びではこうした汎用性に加え、軽量性、携行性といった+αの価値観から製品をチョイスすることがそのまま働き方を改革につながるだろう。
撮影/篠田麦也
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