クレジットカード~キャッシュレス決済のおトクさや使いやすさを巡る状況は刻々と変化しています。そんな現状に戸惑うビギナーの悩みにクレカの鉄人・岩田昭男師範がズバッと答える連載企画。今回は、物価上昇が続くなかで最近活性化し始めたドラッグストアでのポイント付与事情を解説します。
【第10回】ドラッグストアのポイント還元の最新事情を教えて!
【解説する人】岩田昭男
岩田昭男◎クレジットカード分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。
【今月の悩める子羊】三重鳥 月人(みえどり つきひと)
妻と2人の子どもと暮らす35歳会社員。近年物価が上がり、家計が圧迫されているのが悩みの種だ。生活費を抑えるため、日用品や食品を買うのにドラッグストアをよく利用。ポイントもストアポイントとQRコード決済の多重取りを心掛けている。なんとかいまよりおトクにポイントを貯める方法がないか、師範の助言を求めて道場を訪ねた。
相談者の要望
○ドラッグストアのポイント還元の最新事情が知りたい
○おトクなポイント多重取りのコツを教えてほしい
○食品スーパーでのポイント還元事情も知りたい
クレカ利用で三重取り、四重取りも可能に!
師範 ドラッグストアのポイント還元について知りたいというのはおぬしか?
三重鳥 はい。この頃のドラッグストアって薬や生活雑貨だけでなく食品や調味料も安くて充実して、私も妻に頼まれてよく会社帰りに買い物してます。ただ、それでも最近の物価高でドラッグストアの商品もすごく値上がりしたんで、これまで以上にポイント還元を有効に使って家計の足しにしたいと考えてるんです。
師範 むむ。その気持ちよくわかる! 特に、ペットフードの値上がりにはワシもほとほと困っとるところじゃ。
三重鳥 そもそもドラッグストアのポイント還元の現状ってどうなってるんでしょう?
師範 ドラッグストアはポイント還元についてはどこも積極的じゃな。大手チェーンのほとんどは独自のポイント制度を持っとるし、主要なクレジットカード、電子マネー、QRコード決済ならほぼ対応しとるから、各決済事業者のポイントも貯まる。さらに、チェーンによっては楽天ペイやid、WAONなどの特約店にもなっており、そういう店舗ではポイントの三重取りも可能じゃ。
例えば、マツモトキヨシではストアポイント1%が貯まるが、実は同チェーンはdカード特約店でもあるため、dカード決済で決済ポイント1%と特約店ポイント2%の計3%のdポイントが付与される。さらに、dポイントカード提示でも1%のdポイントが貯まり、実質合計5%ぶんのポイント還元となる。
三重鳥 そうなんです。私もそれを知ってdカードを作っちゃいました。
師範 また、最近巷でおトクな買い物ができると人気なのがウエルシア。「ウエル活」という言葉が話題になったように、毎月20日にTポイントかWAON POINT200ポイント以上を利用して買い物すると、ポイントの価値が1.5倍ぶんになる。
ウエルシアはTポイントカードとWAON POINTカードのダブル提示でダブルのポイントが貯まり、毎週月曜は最大4%ポイント還元、毎月15、16日は最大6%ポイント還元(60歳以上のシニアパスポート保有者が対象)など、高ポイント還元を受けられる機会も多い(もちろんクレジットカードや電子マネー、QRコード決済の決済ポイントも付与)。
さらに、ツルハドラッグやくすりの福太郎を展開するツルハグループとサンドラッグも、独自のストアポイントと楽天ポイントカード提示ポイントを両取り可能。もちろんクレジットカードや電子マネー、QRコードで支払う際の決済ポイントも付与される。例えば、楽天ペイで支払うと決済ポイント1%、楽天カードから楽天キャッシュへのチャージポイント0.5%も付与され、前述のポイントと合わせてポイント四重取りを達成できる。
三重鳥 ウエルシアは近所に店舗がないのでノーチェックでした。ツルハグループはうちではくすりの福太郎によく行ってますが、やはり楽天と相性が良いみたいですね。
師範 このようにいまのドラッグストアはポイント二重取りはおろか、三重取り、四重取りも当たり前。さらに各店舗はポイントアップデーやクーポン配布にも力を入れとる。そうしたポイントの原資はドラッグストアが出しとるわけで、それでも儲かるのがドラッグストア業界の“凄み”じゃな。
マツキヨ・ココカラのポイント統合で業界の勢力図に変化
師範 ……と、ドラッグストアでの基本的なポイント還元の現状を説明したが、実は最近いくつか変化が起き始めた。最も大きいのは、今年6月にマツモトキヨシとココカラファインのポイントが統合したこと。
新たに誕生したマツキヨココカラポイントは、マツモトキヨシやココカラファインだけでなく系列チェーンのどらっぐぱぱす、ドラッグセガミ、セイジョー、クスリのコダマなどでも同一ポイントを貯めて使える。言わば、ドラッグストア版“ポイント経済圏”のような一大勢力が生まれたということじゃ。
三重鳥 いろんなドラッグストアのポイントをひとつにまとめられるのは、商品を購入する側にとってもすごく便利です!
師範 そしてもうひとつ見逃せんのはそのマツキヨココカラポイントが新たにステージ制を採用したこと。この仕組みは例えばPayPayポイントをイメージするとわかりやすいが、その月の買物額によって翌月のポイント付与率が最大3%になる。さらにdカードでの決済でも特約店ポイントを含め3%、dポイントカードやdポイントアプリの提示で1%のポイントが貯まり、実質合計最大7%ぶんのポイント還元となるんじゃ。
三重鳥 おお、それは絶対見逃せません!
師範 これまでドラッグストア業界ではウエルシアのおトクさが話題になりがちじゃったが、マツモトキヨシ・ココカラファイン勢が一気に主導権を奪いにきたかたちじゃな。これに対し、ウエルシアの動きも活発化。ウエルシア全店舗でWAON POINTとの提携がスタートし、TポイントとWAON POINTの二重取りが可能になったのは今年の3月じゃが、さらに9月からは同チェーンがPayPayポイントアップ店制度を導入。
毎週月曜にウエルシアの店舗で「ウエルシアグループアプリ」を使ってPayPayで支払いすると、通常の決済ポイントに1%ぶんのPayPayポイントが追加で付与されるようになった。ウエルシアはPayPay経済圏に加入することで、新たな可能性を模索しているようじゃ。
スーパー業界ではハウス電子マネーの動きに引き続き注目を
三重鳥 スーパーなどのポイント還元事情はどうなんでしょう?
師範 上で解説したドラッグストアと比べるとおトク度は見劣りするものの、スーパー関連ではハウス電子マネーの動きに要注目じゃ。これはすでに2015年に東武ストアが導入した「Tマネー」から始まっとる動きじゃが、直近でもサミットが独自の「サミット電子マネー」を6月から導入、8月末には全店舗に導入完了した。
サミット電子マネーは現金チャージ式で買いすぎを防げるのが現金派には魅力。ポイント倍率アップセールの際に、他のキャッシュレス決済は現金より倍率が低いが、サミット電子マネー払いなら現金と同様の還元倍率になるのもメリットじゃ。店舗側としては決済事業者に払う手数料がかからず、売上金の回収が遅れることもない。
それどころかハウス電子マネーはチャージ式が一般的なため、買い物前に売り上げを確保できるのが大きな利点。客のほうも、毎日の買い物をほぼそのスーパーで賄っているなら、楽天EdyやiD、PayPayなどの“共通電子マネー”でなく、その店独自の電子マネーを持つことはまったく問題にならん。
三重鳥 私でもそっちのほうがトクなら、サミットの電子マネーを利用してみるかという気になります。
師範 さらにおぬしが気になりそうなのが「業務スーパー」が独自Payを使った電子マネー「Gyomuca」のサービスをスタートしたこと。2021年から一部店舗で導入していたが、現在着実に導入店舗が拡大している。「業務スーパー」はクレジットカードや共通電子マネーが使える店が限定的。Gyomuca導入でより多くの人が、食品を格安で購入できるうえにチャージ金額の0.5%相当のポイントがもらえるようになるわけじゃ。
三重鳥 「業スー」は値段が激安なだけですでに大満足なのに、さらにポイントも貯まるとなると、これまで以上に利用したくなりますね。
師範 うむ。いまの物価高に対抗するには、ドラッグストアにしてもスーパーにしても、安売り情報に加えてポイント付与状況を細かくチェックすることが重要だと言えるな。
【もっと詳しくなるためのキーワード解説】
マツモトキヨシとココカラファインのポイント統合
マツモトキヨシとココカラファインは2021年10月に経営統合し、業界に衝撃を与えました。かつて業界トップだったマツモトキヨシは競合他社がM&Aを重ね業容を拡大したことで売上高が業界6位に落ち込んでいましたが、この統合により売上高1兆円規模に。2023年3月のグループ売上高で業界トップ3に返り咲き、ココカラファインの収益性も2022年3月期の2.9%から2023年3月期は5.1%と劇的に向上しています。
またココカラファインでは、2022年11月にココカラポイントとdポイントをダブルで貯めることができるように。今回のポイント統合はそれらの流れに沿ったものであり、グループ各店舗への顧客誘導効果もより高まるはずです。
ステージ制
ポイントプログラムにおいて、年間利用額、利用回数などに応じて会員ランクが変わり、ポイント還元率アップなどランクに応じた特典が受けられる制度のこと。航空系ではJALの「FLY ON ポイント」、ANAの「プレミアムポイント」がステージ制を導入しているほか、楽天市場やdポイント、スーパー、クレジットカードなど、ステージ制を採用しているサービスは数多くあります。
マツキヨココカラポイントの場合、月の合計購入額が1万円以上で翌月の、年間(4月〜翌3月)の合計購入額が10万円以上で翌年度のポイント還元率が2倍に。月間2万円以上で翌月、年間20万円以上で翌年度の還元率が3倍になります。
ちなみに、ドラッグストアではツルハグループもステージ制を導入。また、マツキヨココカラグループやツルハグループのステージ制は家族会員の購入額を合算でき、ランクアップしやすくなります。より多くのポイントを獲得したいなら家族会員の登録は必須です。
ハウス電子マネー
コンビニやスーパー、ドラッグストアなど様々な業種の加盟店で使える Suica、楽天 Edy、WAON などの共通電子マネーに対し、自社ブランドや同一グループの店舗のみで使用できる電子マネーは「ハウス電子マネー」と呼ばれます。スターバックスカードやドン・キホーテの majica などが該当するほか、食品スーパーの多くも 2015 年頃から独自のハウス電子マネーを採用。
多くのハウス電子マネーは既存のポイントカードから切り替えるかたちで 導入されています。使える店が限られる「ハウス電子マネー」は逆に言えば、客の囲い込みにはとても効果的。最近では磁気カードや IC カード型に加え、スマホアプリを活用したハウス電子マネーも増えています。
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構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男