ビジネス
クレカ
2024/1/26 6:30

【現金VSキャッシュレス】災害時のマネー問題について改めて考えてみた

クレジットカードやキャッシュレス決済にまつわる疑問や悩みに、“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、もしもに備えて知っておきたい災害時の現金・キャッシュレス決済との付き合い方について解説します。

 

【第13回】災害時のマネー問題、どうすればいいの?

【今月の悩める子羊】才賀 剛(さいが つよし)

キャッシュレス決済の便利さに目覚め、ほとんどの支払いを現金からキャッシュレスに切り替えた30代のサラリーマン。ジムやコンビニなど、ちょっとした外出時には小銭は持ち歩かず、何かを買う際にはもっぱらスマホで支払っている。しかし、元旦に北陸地方を襲った能登半島地震の発生を受け、キャッシュレスオンリーでの生活に不安を抱くように。岩田師範に話を聞きに来た。

 

(相談者の要望)

○お金にまつわる災害対策を知りたい

○キャッシュレスオンリー生活を続けてもOKか知りたい

○被災地を応援する方法とは?

 

災害時、キャッシュレス決済は無力なのか?

岩田  災害時のお金の持ち方について相談に乗ってほしいというのはおぬしか?

 

才賀  はい。ここ何年か、クレカとPayPayを中心にキャッシュレス決済をよく使っているんです。ただ、先日の能登半島地震を受けて「地震に備えておかなきゃ」と改めて思ったとき、そういえば大きな地震が起こった際にキャッシュレス決済が全然使えなくなるのではと不安になりまして。災害時のことを考えると、やはりキャッシュレスだけに依存するべきではないのでしょうか?

 

岩田  うーむ、日本は地震大国じゃから、防災を考えるうえで避けては通れん話題じゃな。結論から言うと、キャッシュレスは現金に比べて災害に弱いというのは事実じゃ。決済端末は電源がないと使えないものが多いから、地震などの災害によって停電状態が続くとクレジットカードもスマホ決済も使えなくなってしまう。

 

店舗側が非常用の予備電源を用意していれば話は別じゃが、特に被災直後や被害の大きな地域において、災害時に強いのはやはり現金。キャッシュレスユーザーであっても、いくらかの現金を持ち歩いておけば備えあれば憂いなしじゃ。

 

ちなみに、もし運良く、店舗が営業を再開できたとしても、災害時には店舗側が釣り銭不足になる可能性が非常に高い。買い物ができたとしてもお釣りが返ってこないことを見越して、防災袋などには小銭を多めに入れておくと安心じゃ。

 

才賀  では、災害時にはキャッシュレス決済は使えないものと考えておいたほうが安心ですね?

 

岩田  実は、一概にそうとも言えないんじゃ。一定の条件を満たせば、という形にはなるが、災害時でも使えるキャッシュレス決済方法がある。それが「ユーザースキャン方式」のコード決済じゃ。これは他のキャッシュレス決済とは異なり、店舗側は紙にプリントしたQRコードを提示するだけでよく、特別な決済端末は必要ない。

 

ユーザー側のスマホやタブレットのバッテリーが残っていて通信が使える状況であれば、停電時でも決済が可能。携帯電話の回線は災害時でも比較的早く復旧されることが期待できるから、QRコード決済サービスを利用できる状態にしておくことも立派な災害対策になるんじゃ。

↑「ユーザースキャン方式」とはコード決済の支払い方式のひとつ。PayPayの場合、店舗が提示するコードをユーザーが自身のスマホやタブレットで読み取って決済する。逆にユーザーがアプリ上に表示したコードを店舗が読み取る方式を「ストアスキャン方式」と呼ぶ(写真提供=PayPay)

 

才賀  被害が大きい地域だと復旧まで時間がかかりそうですが、被害が比較的小さい地域で店舗の営業再開が見込める状況であれば、キャッシュレスでも支払える場合があるのですね。でも、スマホのバッテリーが必要なのは難点だなぁ……。

 

岩田  もちろんその問題はある。スマホは重要な連絡手段であるし、最新のニュースを見るにも役立つ。モバイルバッテリーなど複数の充電手段を用意しておくのは災害時の対策として有効じゃ。

 

また、大手携帯キャリア各社は災害時に無料充電サービスを提供することが多いから、近隣のケータイショップが営業再開している場合は訪ねてみるといいじゃろう。

 

才賀  スマホはいまや生活必需品だし、対策が必要ですね。

 

岩田  過去の大きな災害時のデータを見てみると、災害時には窃盗などの発生が一時的に増える傾向にあり、現金だけに頼るのはある意味リスクにもなりうる。

 

とはいえ、上で紹介した支払い方法を使うには、多くの条件が重なる必要があり、キャッシュレスが災害時に「有効」とは言い難い。やはり、普段キャッシュレスでの支払いが多い人も、カバンにいくらか現金を持ち歩いておくと安心。キャッシュレスと現金を併用し、あらゆる可能性に備えておくことが肝要じゃ。

 

災害時もATMから現金を引き出せる?

才賀  災害時、もし現金を持ち歩いていなかったり、自宅に現金の用意がない場合はどうすればよいのでしょう?

 

岩田  停電になるともちろんATMは利用できないが、自家発電装置を導入している店舗であれば話は別。キャッシュカードを利用してATMから現金が引き出せる。例えば、2011年の東日本大震災のときには東京電力が実施した計画停電の影響で、ゆうちょ銀行など多くの金融機関の窓口業務やATMが休止を余儀なくされた。

 

しかし一方で、三菱UFJ銀行(当時の三菱東京UFJ銀行)や三井住友銀行などの大手銀行は自家発電システムを擁していたため、一部店舗をのぞいた多くの店舗で営業を継続できたんじゃ。被災地の金融機関の営業状況は金融庁のHPなどで確認できるから、もしものときにはこうした情報もチェックしてみよう。

 

ちなみに、J-Debitが実施している「キャッシュアウト」という、キャッシュカードと暗証番号を提示すればATMを使わずにレジ経由でお金を引き出せるサービスもあるにはある。ただし、現時点で対応店舗が少なく、また加盟店側は常に多額の現金をレジに入れておく必要があるなど防犯上のリスクもあり、こちらは今後の展開に期待したい。

 

キャッシュレスで被災地を応援しよう!

岩田  直接の被害を受けなかった地域の人は、キャッシュレスを利用して被災地を応援するという手もある。

 

才賀  それは大切ですね。でも、キャッシュレスを使って応援するというのはどういう意味ですか?

 

岩田  例えば、キャリアのポイントを寄付に利用できる。dポイントやPontaポイントなどになるな。

 

才賀  キャリアのポイントは毎月貯まっていくので、使いやすいですね。

 

岩田  それに、クレジットカード会社や航空会社も今回の能登半島地震で、貯めたポイントやマイルを寄付に使えるようにしているところが複数ある。まずは自分が使っているサービス名で「クレジットカード 寄付」などで検索して、寄付を受け付けているか確かめてみよう。受付期間が迫っているものもあるから、早めのチェックがオススメ。

 

クレカのポイントは意外と塩漬け状態になっていることも多いから、ぜひこの機会に使ってみてほしい。また、ふるさと納税でも各種サイトで寄付ができる。基本的に返礼品はないものの、返礼品はいらないからぜひ寄付したいという場合の選択肢になるぞ。

 

才賀  色々な寄付の方法があるんですね!

 

岩田  うむ。ただ、災害に便乗して電話やSNSでボランティアや被災者、公的機関を名乗り、義援金と称して金を騙し取る詐欺が増えていることにも注意が必要。信頼のおける機関かどうか事前にしっかりとチェックするのも忘れずにな。災害はいつ、どこで起こるかわからないが、備えておくことは誰にでもできる。

 

マネー対策はもちろんじゃが、モバイルバッテリーや非常用照明、水、食糧その他の準備、災害時の自宅から避難所への移動経路の確認など、いつ災害が起こっても最大限対処できるよう、普段からしっかり心掛けておこう。

 

構成/佐伯尚子 文/鹿野 薫 監修/岩田昭男