グルメ
ラーメン
2017/11/20 18:30

何度食べても「ウマい!」と感動させる凄さ 地元の常連が行列する『道頓堀』の中華そば ~田中貴のラーメン狂走曲~

ラーメン好きミュージシャンが、一杯の味わいを一曲に例える斬新コラム━━━

 

サニーデイ・サービス 田中 貴のラーメン狂走曲「道頓堀 [成増] 」

ラーメン好きが「成増」と聞くとまずイメージするものは、間違いなく「道頓堀」。これ常識。そして、成増の人が「ラーメン」と聞いてイメージするものも間違いなく、「道頓堀」である。

 

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田中 貴

2008年に再結成を果たし、以来ライブを中心にマイペースながらも精力的に活動を続けるサニーデイ・サービスのベーシスト。ストリーミング配信のみで発表した「Popcorn Ballads」を、12/25にCDおよびアナログ盤として発売。配信時の収録内容から大幅に改訂され、全25曲100分超の壮大なアルバムになっている。

 

食べれば食べるほどに深みが感じられる一杯

僕が道頓堀のラーメンを食べたときの一口目の感想は、いつだって「ふはーウマイ……」だ。近くないのでそんなには行けないが、どんなラーメンかは知っている。おいしいことがわかっていて食べるのに、毎回その期待をちょっとだけ上回る。「うん、やっぱりウマイね」じゃない、じんわり驚く「ふはーウマイ……」。これはまさに、味が進化し続けているということにほかならない。

↑自分で仕込み作る。感謝の心が滲み出る笑顔。山岸氏の思いを正しく受け継ぐのは、弟子ではなくファンの庄司さんだと僕は思う
↑自分で仕込み作る。感謝の心が滲み出る笑顔。山岸氏の思いを正しく受け継ぐのは、弟子ではなくファンの庄司さんだと僕は思う

 

道頓堀は1984年に創業。元々ラーメン好きだった庄司武志さんが独学で味を作り、なんと21歳の若さでオープンさせた。

「あの頃は、春木屋、丸福あたりが有名で、恵比寿ラーメンも人気でしたね。あとはコッテリ系のホープ軒、この近くだと土佐っ子が大行列でした」

懐かしい名前が並ぶ。色々食べ歩いたなかでも、東池袋の大勝軒が一番好きだったそう。確かに道頓堀の味には、故・山岸氏が作り上げた大勝軒の中華そばへの思いがうかがえる。

「昔の大勝軒は、そんなに魚介は強くなかったんですよ」

道頓堀の中華そばは、豚骨、鶏ガラが控えめながらもしっかりとベースを作り、魚介のシャープな味わいが前面に出た味わい。背脂豚骨ラーメンがグイグイと人気を出してきた時代に、若いラーメン店主が、ほかにないほどに魚介を際立たせたオリジナリティのあるラーメンを出してきたのは、当時かなり斬新だったはずだ。

↑中華そば(750円) 奇をてらったところがないので当たり前に食べてしまうが、スープ、麺、チャーシュー、メンマひとつひとつの丁寧な仕事ぶりと、それぞれのバランスは考え出すと気が遠くなるほどの完成度だ。醤油・中太麺
↑中華そば(750円) 奇をてらったところがないので当たり前に食べてしまうが、スープ、麺、チャーシュー、メンマひとつひとつの丁寧な仕事ぶりと、それぞれのバランスは考え出すと気が遠くなるほどの完成度だ。醤油・中太麺

 

地元の人に愛されるもうひとつの理由

数十年間も行列が絶えない大人気店だが、この店の行列はほかの人気店とは少し違う。地元の人がたくさん並んでいるのだ。常連さんが並んででも食べに来るのは、味プラス、庄司さんの人柄も大きい。僕も帰り際にこう声をかけられた。

「楽しかったー。ありがとね。今度田中さんにはいつ会えるかな?」

屈託のない笑顔でこんなことを言われたら、返す言葉はひとつしかなかった。

「ウマかったです! またすぐ食べに来ます!」

この味にこの笑顔。本当においしいラーメンは味だけじゃないのである。

 

これも味わいたい!

↑塩らあめん(780円) 自家製麺もチャーシューも、醤油とは使い分ける。塩なのに尖った感じのしないやさしい味わいは、醤油とどちらにするか本気で悩む逸品
↑塩らあめん(780円) 自家製麺もチャーシューも、醤油とは使い分ける。塩なのに尖った感じのしないやさしい味わいは、醤油とどちらにするか本気で悩む逸品

 

この一杯からはこんな音色が聴こえてきた!

とんねるず「バハマ・サンセット(New Version)」

成増の地名を全国に知らしめたのはとんねるず。石橋貴明が生まれ育った成増への思いを歌い上げる1985年の名曲。道頓堀のオープンがもう数年早かったら歌詞に登場していただろう。アルバム「成増」に収録。

 

【店舗情報】

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中華めん処 道頓堀

住所:東京都板橋区成増2-17-2
営業時間:11:00〜14:00頃、17:30〜20:00頃(いずれもスープがなくなり次第終了)
定休日:水・木曜日(第2木曜日の昼、第3木曜日の昼は営業)

 

取材・文/田中 貴 撮影/高原マサキ(TK.c)