正月に主役となるフードといえば、餅。年始にはあんなに食べた餅も、三が日や鏡開きを過ぎてしまうと、食べる機会がぐっと減る上、食べ方も雑煮、磯辺焼き……とマンネリ化しやすいのが悩みの種です。
そんな正月に食べ切れなかった餅を無駄にせず、いつもとはちょっと違った食べ方で楽しみたい!そんなわがままをフードディレクターの川上ミホさんに伝えたところ、あっと驚くアレンジが。
そのポイントは、“食感”のバリエーションにありました。

「揚げもちと牡蠣の味噌和え」でおもちがメインディッシュ化!

【材料(2人分)】
・切り餅 1.5個
・牡蠣 大6粒
・味噌 30g
・みりん 40g
・しょうゆ 5~10g
・セリ 1.5束
・ごま油 10g
まずは、切り餅を6等分にカットします。

続いて、餅を油で揚げていきます。揚げ物と聞くと難色を示す人もいるかもしれませんが、「お餅は表面に水分がないので油跳ねしにくく、粉を使わないので油も汚れにくいんです」と川上さん。ここで使用する油には、米油か太白ごま油といった、香りが少ないものが適しているそうです。

一方で、タレを作っておきます。味噌、みりん、しょうゆを混ぜ合わせます。このあと、セリは根と茎を5cm、葉をざく切りにしておきましょう。

小さめのフライパンにごま油を熱し、よく水洗いして水切りをした牡蠣を中火で炒めます。牡蠣に火が通ったかどうかを見るには、身の張り具合を確認してください。表面がパンパンに張っていれば、加熱完了のサインです。

あとは、合わせ調味料を加えて、軽く炒めます。このとき、香ばしさが出るように少し焦がし気味に炒めるといいでしょう。

揚げ餅の上に汁ごとかけて、セリの葉を上からトッピングすれば完成です。

和えダレは、ぷりぷりの牡蠣と一緒に香ばしく加熱することで、オイスターソースのような味わいも。その絶妙なタレが絡んだ揚げ餅は、サクサクした食感がたまりません。餅を使った料理ではあるものの、つい白米のごはんも食べたくなるような濃厚な味付けで、酒のつまみにもぴったり。白ワインとの相性も良さそうです。
「揚げ餅入り韓国風スープ」はじゅわっと染み出るスープに感動!
先ほどの揚げ餅を使った別の食べ方が、「揚げ餅入り韓国風スープ」。スープにするならわざわざ餅を揚げなくてもいいのでは、と思われるかもしれませんが、実は揚げていることがとても重要なんです。
【材料(2人分)】
切り餅 1.5個
ニラ 20g
牛肉 80g
チキンスープ 300g
大根 60g
醤油 10~15g
コチュジャン 20g
ごま油 5g
ニラは4cm長さに、牛肉の薄切りは食べやすい大きさに、大根は皮をむいて7mm厚さのいちょう切りにしておきます。鍋にチキンスープと大根を入れて中火にかけ、煮立ったら弱火にして大根に火を通しましょう。それから、醤油とコチュジャンで調味し、残りの具材を加えていきます。

大根、ニラ、牛肉の順に具材を加えたら、盛り付け用の器に揚げ餅を入れ、熱々のスープをたっぷりと注ぎかけましょう。好みでごま油を垂らしても構いません。

揚げ餅を噛んだときに、じゅわっと口いっぱいに広がるコチュジャンを使ったピリ辛スープがたまりません! また、スープを吸った餅は少しとろりとした食感に。揚げているからこそ、一度にいろんな食感を楽しめるのです。
牛肉や大根、ニラなど具がたっぷり入っているので、見た目以上にボリュームも満点。まだまだ続く寒い日にこそ食べたくなりますね。
餅だからできる、もちもち食感の「ポンデケージョ」
ポンデケージョといえば、ブラジル生まれのもちもちした食感のパン。パン作りは発酵や温度管理などが難しそうなイメージがありますが、餅を使ったポンデケージョの作り方はとても簡単なんです。
【材料(2人分)】
切り餅 100g
牛乳 40g
小麦粉 100~120g
砂糖 30g
卵 1/2個
溶けるチーズ 30g
まずは、鍋に切り餅と牛乳を加えて弱火にかけ、焦がさないように牛乳の熱で餅を柔らかくします。ここで焦って火を強くしないでください。

続いて、木べらでしっかりと練って滑らかにします。耐熱ボウルに入れて600wのレンジに2分かけてから、木べらで柔らかく練り混ぜてもかまいません。
次に、ボウルにすべての材料を入れて、しっかりと捏ね混ぜます。手にくっつかないギリギリくらいの固さまで、小麦粉を加えて調節。生地を10個に分けて手で丸め、190度に熱しておいたオーブンで15分焼きましょう。
冷えて硬くなってきたら、オーブントースターやフライパンで軽く温め直せば、表面がカリッとした新たな食感も楽しめます。サイズの割に満腹感があるので、おやつとしてはもちろん、食事パンにもいいかもしれません。
洋風の味付けが新鮮な「かぼちゃ汁粉」
餅を使った定番料理のお汁粉も、あんこを作るのが面倒だったりしますよね。また、少し甘さが控えめの甘味が食べたいときに作ってみてほしいのが、「かぼちゃ汁粉」です。
【材料(2人分)】
切り餅 2個
かぼちゃ正味 140g
キビ砂糖 20g
牛乳(or水) 80g
マスカルポーネチーズ 20g
メープルシロップ 10g
シナモンパウダー 少々
まずはかぼちゃの汁粉を用意します。今回はかぼちゃで作りましたが、さつまいもを使ってもかまいません。

次に、フライパンで餅を焼きます。餅がぷっくり膨らむ様子に期待が高まりますね。

あとは、焼いた切り餅、マスカルポーネチーズを乗せ、メープルシロップを回しかけ、シナモンパウダーをふりかければ完成です。

かぼちゃの優しい甘みは、ポタージュスープのような印象を受けます。マスカルポーネチーズとメープルシロップ、シナモンがいいアクセントになっており、各人がメープルシロップで甘さを調節できるのもいいですね。
川上さんは「お餅は揚げたり、焼いたり、茹でたりするだけで、どれも食感が異なります。この食感の違いを活かせば、いろんな食べ方ができる万能食材なんです」と話します。たしかに、今回教えてもらったレシピはどれも食感が異なり、だからこそ餅の自由度を最大限に引き出している印象を受けます。
このレシピを覚えれば、正月の残りものの餅を使い切るつもりが、ついつい買い足したくなること間違いなし。餅の新たな可能性を楽しんでみてください。
【Profile】
フードディレクター / 川上ミホ
国内外のレストランを経て独立。食のスペシャリストとして書籍、雑誌、TVなどメディアを中心に活動。2014年、目黒区東山にプライベートレストラン「5 quinto」をオープン。2015年、Louis Vuitton city guide TOKYO 版掲載など注目を集めると共に、同名で食を中心としたライフスタイルブランドをスタートしている。また、2015年には、女優・タレントのローラさんのレシピブック『Rolaʼ s Kitchen』にレシピ提供、執筆、フードディレクションを行い、2016年には『キッシュトースト』を、今年『ギルトフリーなおやつ 食べても罪悪感なし。』を上梓した。
『ギルトフリーなおやつ 食べても罪悪感なし。』
1620円/文化出版局
取材・文=今西絢美 撮影=真名子