中華風家庭料理の超名店のルーツだった!
一品料理で絶大な人気を誇るのは「ネギワンタン」だ。これは仕込みが大変なため、夜限定となっているが、それはビジュアルを見れば一目瞭然。ワンタンが隠れるほど、大量の白髪ねぎがのっている。ねぎは「ねぎそば」などにも使われる同店必須の食材であり、聞けば1日に仕入れる数は約30本。5kgもの量を極細にカットし、みずみずしい白髪ねぎに仕上げるのだ。
皮は麺と同じ製麺所に特注したものだが、あんは自家製。使う具材はあえて極少にしており、しょうがやにんにくなどは入れず豚の挽肉とねぎだけ。これを薄口しょうゆで味付けし、素材本来のうまみを凝縮させる。
オリジナリティの高い「山之内」の料理だが、にんじんや納豆を使うチャーハンなど、どこか家庭的なレシピを彷彿とさせるものも。この秘密を聞くと、そこには同店のルーツとなる名店の存在があった。
キラー通り沿いにあるここは、青山の骨董通りで絶大な人気を誇る「中華風家庭料理 ふーみん」がもともとあった場所。ふーみんは1971年に開業し、1986年に現在の地へ移転したという。それまでふーみんで働いていたのが、「山之内」のオーナーである山之内敏昭さん。つまりは移転を機に独立し、古巣の跡地を受け継いで「山之内」を開業したのである。
やがて「山之内」も繁盛店となり、渋谷の宮益坂エリアに2号店となる「中華風家庭料理 Yamaのuchi 渋谷店」をオープン。山之内オーナーはこちらに拠点を移し、いまも渋谷店で腕を振るっている。これら3つの店にはすべて「ネギワンタン」「ねぎそば」「納豆チャーハン」、そして「たらこ豆腐」という個性派メニューなども共通して存在するが、最も街中華な雰囲気なのが原点の地である「中華風家庭料理 山之内 神宮前店」なのだ。
こぢんまりとしているぶんアットホームで、ひとりで気軽に食事やお酒を楽しめる。お客の9割は常連だというが、そのなかにはプロ野球選手や芸能人も少なくない。また、場所柄アパレルやクリエイティブ系の企業で働く業界人も多く、彼らの想像力をかきたてるのに欠かせない存在でもあるのだ。最寄り駅から少々歩くが、だからこそ穴場といえる立地。ぜひ訪れておきたい名店である。
撮影/我妻慶一
【SHOP DATA】
中華風家庭料理 山之内 神宮前店
住所:東京都渋谷区神宮前3-38-11
アクセス:東京メトロ銀座線「外苑前駅」徒歩8分
営業時間:平日12:00~14:30/18:00~21:30(L.O.)、土曜12:00~14:30
定休日:日曜、祝日