グルメ
2018/10/15 11:30

この味はクセになる! プロに聞くスパイスの基本と辛旨レシピ

スパイスやハーブは従来、“料理上級者が使うもの”というイメージがありました。ところが最近では、身近なスーパーマーケットでもさまざまな種類のスパイスやハーブが手に入るようになってきており、マッチする料理やスパイス同士の組み合わせを知っておけば、手料理だけでなくテイクアウトしたものも一味違ったおいしさで楽しむことができるのです。

 

今回は、スパイス調合家でもある料理家・日沼紀子さんに、スパイスの使い方やレシピを教えていただきました。

 

味に深みが出て本格的になる!

ハーブやスパイスは、カレーやエスニックにしか使えないと思っている人も多いかもしれませんが、実はいつもの惣菜や和食も、スパイスを使うことで味に深みが出たり、香りが豊かになってうまみが増したりするとか。「たとえばナツメグはハンバーグのタネに使う印象が強いのですが、クリームパスタにひと振りしたり、豚肉の生姜焼きの下味に使ったりすると、洋食屋さんの料理のような芳しい仕上がりになります」(スパイス調合家・日沼紀子さん、以下同)

 

揃えておきたい最初のハーブ&スパイス5種

さっそく、まずはどんなハーブ&スパイスを常備しておけばいいのでしょうか。

 

使い勝手がよく、味の広がりを楽しめるスパイスとして日沼さんがおすすめするのが、「バジル、シナモン、花椒、クミンシード、スモークパプリカ」の5つです。それぞれにどんな料理が合うのか見ていきましょう。

↑左から時計回りに、スモークパプリカ、花椒、シナモン、クミンシード、バジル

 

1.燻香が格上の味わいにする「スモークパプリカ」

パプリカを木のチップでスモークしてからパウダー状にしたもの。食欲をそそる燻製の香りと、トマトを思わせる濃厚な味わいが印象的なスパイスです。

「スモーキーな香りがお料理のアクセントになります。お肉やお魚にまぶして焼くのもよいですし、カレーの隠し味にするとコクが増します。炊飯器で手軽に作るピラフの隠し味にすると、ごちそうのような高級感のある香りに。カレーやピラフなどは、4人分の量に小さじ1/2程度から入れてみて、好みによって調節してみてください。塩胡椒などと同じタイミングで入れます」

 

2.エスニックな香りで和食との相性も抜群の「バジル」

生の葉で有名なハーブ。アジアン料理を思わせる、独特の香水のような香りが食欲をそそります。乾燥タイプはやや硬く舌に残るので、調理のはじめの段階で加えて一緒に煮込んだり炒めたりするといいでしょう。

「鶏肉や白身魚などのハーブソテーでお馴染みですが、おしょうゆ味の煮込みや、野菜の炒め物に少し使うと、アジアンエスニックの香りに変身します。鶏肉を、お酢とおしょうゆとバジル少々で煮込むのもおいしいですよ」

 

3.炒め野菜やサラダなどどんな料理にも合う「クミンシード」

セリ科の一年草で、カレーのような刺激のある強い香りがあります。

「炒めものの最初に油と一緒に炒めてから使うと、いつもの”カレー粉”よりも、ナッティな香ばしさがひきたって、食欲をそそります。蒸したじゃがいもや鶏肉のソテーなどに使うのが定番ですが、オクラやほうれん草などの青物野菜と炒めてもいいですし、サラダに振りかけるのもおすすめです」

 

4.甘くて清涼感のある香りは素揚げした野菜にぴったりの「シナモン」

ニッケイ属などの樹木の内樹皮からとれた香辛料で、甘さを感じるスッとした独特な香りがします。

「お菓子に使う印象が強いスパイスですが、かぼちゃやごぼう、里芋などを素揚げしたとき塩と一緒に振ると、香りのよいおつまみに。サンマやイワシなど、青背の魚を煮つけにするときに、一緒に煮込むと臭み消しのはたらきもしてくれます」

 

5.ぴりっとした香りと辛味が料理に深みを与える「花椒」

痺れるような辛味があり、麻婆豆腐など四川料理で活躍する中国原産のスパイスです。

「花椒だけでなく、シナモンと混ぜることで香りがより強く感じられ、コクが出て本格的な味わいになります。チャーシューや煮玉子、そぼろなど、甘じょっぱい中華味にはぜひふたつを合わせて使ってみてください。パウダー少々なら辛味も残らず香りだけつけられるので、チャーハンや中華丼、ラーメンには直接振りかけ、ギョウザやシウマイなどの餡に練り込むなど、中華料理全般に使えます」

 

基本のハーブ&スパイスをチェックした上で、こういったスパイスを使った料理のレシピを、引き続き日沼さんに教えていただきます。

では、実際にどのような料理でどのようにスパイスを使ったらいいでしょうか。簡単にできる、おすすめ料理のレシピを2点、日沼さんに紹介していただきました。

 

エスニックな香りのスパイスでしっかり下味をつけた「豚スペアリブのやわらか煮込み」

【材料(4〜5人分)】
豚スペアリブ:500g
玉ねぎ(皮をむく):小5個
しいたけ(軸の汚れを削ぎ落とす):10個

<A>
シナモンパウダー:小さじ1/2
ドライバジル:小さじ1/2
塩:小さじ2/3

<B>
しょうゆ:大さじ4
酢:大さじ2
みりん:大さじ4
ナンプラー:大さじ1

 

【作り方】

1.<A>を混ぜ合わせて豚スペアリブにまぶし、10分ほど置いて味をなじませる。

2.大きめの鍋に、1.と水1ℓを入れて中火にかける。沸騰したらアクを取り除き、玉ねぎ、しいたけ、<B>を加えて、落しぶたをして中弱火にする。

3.煮汁が半量程度になって、豚肉が柔らかくなるまで1時間程度煮込む。このとき煮汁の蒸発加減を見ながら、煮汁が足りなくなるようであればフタをする。

 

【調理のポイント】

「豚肉に下味としてスパイスを使うことで、豚の臭みをマスキングする効果があります。また、ゆっくり煮込んでしっかりと肉にスパイスを馴染ませるので、エスニックな香りがお酒やごはんとよく合います」

「シナモンは、今回入手しやすいパウダーを使用しましたが、シナモンカシアのスティックや原型があれば、よりスパイスの香りが立つ仕上がりになります。その場合は、ひと鍋に1本(1片)の分量が目安です。慣れないうちは途中で味見をして、十分に香りがついたと感じたら取り出してください」

 

ビールによく合うスパイシーな香りの「チキンケバブ」

【材料(4〜5人分)】
鶏もも肉(小さめの一口大に切る):2枚
パプリカ(鶏肉と同じサイズに切る):2個
玉ねぎ(鶏肉と同じサイズに切る):1個

<A>
クミンシード(すり鉢などで半ずりにする):小さじ1
スモークパプリカパウダー:小さじ1/2
シナモンパウダー:小さじ1/2
塩:小さじ1と1/2

オリーブオイル:適量

 

【作り方】

1.〔A〕を混ぜ合わせ、鶏肉にまぶす。

2.焼き鳥の要領で、鶏肉、パプリカ、玉ねぎを順に串(または竹串)に刺す。

3.フライパンを熱して、オリーブオイルをなじませ、2を焼く。

 

【調理のポイント】

「スモークパプリカは辛味のあるものとないものがあるので、お好みでお選びください」

「クミンシードは半ずりにすることで香りがたちやすくなると同時に、シード特有のナッティな香りも楽しめます。パウダーを使う場合は、量を1/3程度に減らしてください」

 

単品で使うことに慣れてきたら、スパイスをいくつか組み合わせて使ってみましょう。たとえばシナモンはどのスパイスとも比較的相性がよく、バジルと合わせると東南アジア風の香りが際立つ料理に仕上がるので、海老や鶏肉の炒めものやナシゴレンなどの風味付けに使うといいでしょう。また、シナモンにスモークパプリカとクミンシードを混ぜると中東風になり、チキンケバブやタジン風の煮込みに重宝します。さまざまな組み合わせと、複雑に絡み合うスパイスのハーモニーを楽しんでみてください。

 

【プロフィール】

スパイス調合家・料理家/日沼紀子さん

食品メーカーでスパイス商品開発に携わった後、カフェオーナーとしてスパイスやハーブを使ったオリジナル料理を提供。現在は、顧客に合わせた商品・料理レシピの開発のほか、ワークショップ等でスパイスやハーブを使った生活の楽しさを提案している。独自に調合したスパイスやハーブティーなどを販売するatelierCROISEMENT(アトリエクロワズモン)主宰。著書に「スパイス&ハーブ料理の発想と組み立て」「クミン料理の発想と組み立て」(ともに誠文堂新光社)、「日常づかいのシナモン・レシピ」(産業編集センター)がある。

 

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