クラフトビールの認知が少しずつ広まる昨今。このムーブメントの拡大に、外食シーンで期待されているのがキリンの「Tap Marché」(タップマルシェ)です。これは、お店が気軽にクラフトビールを提供できるようにしたサーバーのことなのですが、本稿では改めてその現在地や、クラフトビール市場の状況などを紹介したいと思います。
開始2年で全国7000店に設置されている
タップマルシェの展開が始まったのは2017年4月。当初は首都圏一都三県でスタートし、2018年3月より全国へ。その累計は設置店舗数が7000を突破し、2019年は1万3000店を目指して拡大を続けています。
設置店舗の数と同じように拡大しているのが、取り扱い銘柄。こちらは当初8種類からスタートしましたが、加盟するブルワリーと併せて商品数も増え、2019年3月時点で24種類に。
そのうち、2019年に入って加わったのが、宮崎ひでじビールの「九州CRAFT日向夏」、小西酒造の「スノーブロンシュ・ジャパン・ホワイトエール」、盛田金しゃちビールの「金しゃち名古屋赤味噌ラガー」、DHCビールの「DHC Premium RICH ALE」と盛りだくさん。
それぞれ九州、近畿、東海エリアのブルワリーですが、直近で参画したのは東京。“真の東京クラフトビール”として名を馳せる、石川酒造の「TOKYO BLUES セッションエール」です。
「TOKYO BLUES セッションエール」のタップマルシェ追加に際しては試飲を兼ねた発表会が開催され、筆者も参加してきました。ストーリーや味わいなど、その真価を紹介していきましょう。
お酒が強くない“柑橘苦味派”に最適なビール
「TOKYO BLUES」を醸造する石川酒造は、創業1863年(文久3)、東京・福生に酒蔵を構えた老舗。ビール造りには明治20年(1887年)に着手し、品質には高評価を得たものの、世間はまだビールを受け入れる体制になく、撤退した歴史をもっています。
その悲願を果たしたのが、現当主となる5代目・石川彌八郎さん。1998年よりビール醸造を再開し、熱い想いを集結させたのが「TOKYO BLUES」です。大きな特徴が、東京の地で醸し、東京の天然水だけを使い、東京の名を冠していること。だから“真の東京クラフトビール”なのです。
「TOKYO BLUES セッションエール」は、同ブランドの第1弾としてデビュー。セッションエールは、苦みや飲みごたえがありながらも、酔いすぎずに長くドリンキングセッション(=飲み会)を楽しむために生まれたビアスタイルで、アルコール度数がIPAなどより低いのが特徴です。
本商品のホップには柑橘系の香りが華やぐ「シトラ」と「アマリロ」を大量に使用し、苦味の指標となるIBUは44.7と十分なパワー(「よなよなエール」のIBUは41)。それでいて、アルコール度数は4.5%と低めな仕上がりです。
飲んでみると、凝縮感のあるジューシーな苦みが鮮烈で爽快。でもボディとしてのパンチはライトなので、ゴクゴクいけちゃう飲みやすさもあります。柑橘系ホップの効いた苦いビールが好きだけど、お酒はあまり強くないという人にはぴったりでしょう。お店で見かけたら、ぜひトライをオススメします。
クラフトビールはやっぱり元気!
タップマルシェを積極展開するなど、大手メーカーのなかでは最もクラフトビール熱が高いキリン。最新の取り組みを聞くと、直営店ではより攻めたビールを造っているとのことで、こちらも取材しました。
今春の取り組みのひとつが、花見シーズンに合わせた桜のビール。これまでも直営クラフトビールレストラン「SPRING VALLEY BREWERY」(SVB)の東京店ではシーズナルで発売してきましたが、今年は京都店も巻き込んで、東京は白、京都は赤いビールをスイーツとともに限定発売しています。
ビールの味わいは、どちらも桜葉の塩漬けを使っているだけあって、甘やかな塩味が特徴。スイーツを食べることによってその特徴がより前面に出てくる印象です。そして東京の「サクラブラン」はバナナを思わせるフルーティな香味、京都の「サクラルージュ」は柔らかな飲み口が特徴で、驚きのおいしさでした。
さらにSVBは今春、日本各地の名産品を使用して限定醸造するシリーズもスタート。第1弾は広島産の「因島はっさく」を使ったビールを発売するとのことで、どんどんクラフトビールのすそ野を広げていくそうです。
ビール類全体としては缶チューハイなどに押されていますが、クラフトビールはやっぱり元気。今後もこのトレンドを追いつつ最新状況をレポートしていきたいと思います!