立ち食いそば店の食べ歩きが趣味で、立ち食いそばムックも執筆したことがあるライター、平島憲一郎さんが気になるお店をレポートするコーナー。今回は、東京・四ツ谷の「四谷 政吉」を紹介します。現在、同店の店長を務めるのは現マネージャーの弟子にあたり、名店で長く腕を磨いてきた若き職人。その味は本格そば店にも劣らないと、四谷の食通ビジネスマンたちの支持を集めています。
名店「政吉」の伝統を受け継いだ食通注目の新店
四谷・しんみち通りの「政吉そば」は、かつて信州直送の六割そばを提供した立ち食いの名店だ。平成25年、オーナーの健康上の理由で閉店するも、そのオーナーと兄弟弟子の関係にある方が、26年1月に「四谷 政吉」として店を再開。以前とほぼ同じ食材を使い、「政吉そば」の味を再現している。
そばは信州から毎朝届く上質なものを使用。注文後にゆで始め、冷水でしっかり締めれば、色白でツヤも見事な細麺に。かつお節を中心に丁寧に引いただしは香り豊かで、やや濃いめのかえしに負けないコクがある。そのつゆにそばを少しつけてすすると、そばの鮮烈な香りが鼻から抜け、あとからつゆの豊かな風味が追いかける。麺のコシ、のどごしも絶品だ。
「鴨つけそば」は新規開店後に生まれた人気メニューで、鴨の野性味あるうまみがつゆに加わった、奥深い味わいだ。また、プリプリの小えびの天ぷらが付いた「小海老天つけそば」も人気の一品。かみしめると口の中に広がるえびのうまみで、さらにそばが進む。