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お酒
2019/9/17 18:00

【ラ飲みの名店】つまみは、ほぼ裏メニュー!? 〆の一杯は「ある意味、もっとも贅沢」と絶賛される曙橋「角久」

ラーメンは「インパクト重視ではなく、グイグイと引き込まれるタイプ」

次はいよいよラーメンだ。同店はタレ、スープ、麺をそれぞれ1種類だけ用意する、いわばストロングスタイル。濃さや麺の硬さを変更できるほか、トッピングで自分好みの味を楽しむのだ。田中さんの“いつもの”は、味の濃さと油の量はそのままで、麺はやわらかめ。

↑店主の山口正行さん(右)と。女将さんと夫婦で営業していて、常連からは「お父さん、お母さん」の愛称で親しまれている

 

できあがったラーメンは、鶏油(チーユ)が香る豚骨醤油のスープに中太麺を合わせ、ほうれん草と大判ののりをのせた、横浜家系に似たルックス。だが食べてみると、この一杯が平均的な家系とは一線を画すおいしさであることに驚く。

 

「インパクト重視ではなく、グイグイと引き込まれるタイプのラーメン。タレは少なめの薄味で、スープとは別に取った鶏油以外に油はほとんどありません。でも、この骨から出るシンプルなうまみにどんどん魅了されます。僕自身、最初は『やさしいスープだな』というくらいの印象だったんですが、なんだか気になって訪れるうちに、この味の深さに気付かされました」(田中さん)

↑「ラーメン 並」650円。サイズはほかに中(800円)と大(950円)がある

 

丁寧な仕込みが豚骨・鶏ガラ本来のうまみを引き出す

深みはあってもクドさは皆無。ゆえに白濁した豚骨系スープながら、毎日でも食べたくなるやさしさがあるのだ。そしてその秘密は、丁寧な仕込みに隠されている。ベースは豚のゲンコツと豚の背ガラ、鶏ガラの3つ。これらはダシが抽出されるタイミングが異なるため、1時間おきに鍋へ。さらに臭み消し用の香味野菜と昆布を加え、強火で計15時間じっくりと炊いていく。

↑厨房には大きな羽釜が2つ。また、これとは別に寸胴の鍋もある

 

しかもその丁寧な仕事は、下処理からはじまっている。あるとき田中さんが厨房を覗くと山口店主が細やかな所作をしており、そのときに発見したのだとか。

 

「手の空いたタイミングで、大将が豚骨を1本ずつ手に取り、ピンセットか毛抜きのようなものを使って、脂や血合いなどの余計な部分を取り除いていたんです。そうやって完璧なまでに下処理されているから、このスープには臭み、エグみ、雑味が一切なく、豚骨・鶏ガラ本来のうまみをダイレクトに感じられるんです。

 

夜のみ営業の小さなお店なので、炊くスープの量も多くないからこそできる手の掛け方です。ある意味、最も贅沢な一杯。常連さんはラーメンマニアではないですし、味の細かいところまでは気付いてないでしょうが、この丁寧な仕事によって、知らぬ間に連日食べたくなる一杯になっているんです。そこそこウマいくらいのラーメン屋じゃあ、こんなに常連が集うことはありえませんから」(田中さん)

↑麺の量は並で150g。比較的細めな中太タイプで、ほどよくシルキーなスープにマッチする

 

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