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2019/12/9 17:30

【ラ飲みの名店】「超穴場」以外の言葉があろうか? ミシュラン星付きの「息子」が手掛ける「母」の店・本鵠沼「麺バルHACHIKIN」

いよいよ麺へ! まずはつまみにもなる汁なし麺から堪能

ひと通り酒の肴をつまんでいると、本連載に便乗して飲みに来るのが恒例となったGetNaviプロデューサー・松井謙介が合流。座敷に席を移し、いよいよラーメンとのご対面だ。ちなみに「麺バルHACHIKIN」は麺類も豊富で、その数7種類(+限定麺がある日も)。悩みながらも、まずはつまみにもなる汁なし麺「鶏油(ちーゆ)Soba」から注文した。

↑「鶏油(ちーゆ)Soba」920円。かつて、蔦のほか2018年と2019年の3~5月にJALの国際線で提供されていた幻の逸品の系譜を継ぐ一杯だ。肉は低温調理した鶏モモチャーシューがのる

 

こちらは「Japanese Soba Noodles 蔦」の代表的なラーメン「醤油Soba」などに使われている細麺を使用。この風味や食感を最大限に楽しんでもらうため、鶏油とタレでシンプルに仕上げている。添えられているのはトリュフオイルが香るスープで、そのまま味わうだけではなく、つけ麺にしたり、丼に入れてラーメン風にしたりと多彩な楽しみ方ができる。

 

「蔦といえば多様な食材を使う斬新な味わいのスープが注目されていますが、麺のおいしさもズバ抜けているんです。このメニューは、その麺を味わうのにうってつけ。しなやかなのどごしを堪能してください。また、スープが付いているのもいいですよね。いろいろな食べ方をすることで、麺とタレとスープを自分の好きなバランスで味わえます」(田中さん)

↑田中さんがこれを味わうのは、祐貴店主の試作に付き合ったとき以来。ということで、改めて女将さんの由美子さんがオススメの食べ方を解説

 

続いて頂いた「レッチリ」は、祐貴店主がハンバーガーをイメージして生み出した意欲作。醤油ダレに辛味ダレを合わせ、キャベツでフレッシュなアクセントを、トマトで酸味をプラスしている。

↑「レッチリ」920円。こちらも、かつて「Japanese Soba Noodles 蔦」に存在した幻のメニューである。ファン垂涎の傑作が味わえるのも「麺バルHACHIKIN」の魅力だ

 

↑「レッチリ」専用の「特製ごはん」100円。炙ったチーズがのっており、残ったスープと混ぜてリゾット風に食べるのがオススメ

 

「レッチリは、祐貴店主の修業時代に、お遊び的に試作したのをよく食べさせてもらってましたが、それとはまったく別物なくらい進化してますね。こういう、ちょっとジャンクなものまで作ってしまう面白さも祐貴店主の魅力のひとつ。一気にズバズバすすって食べると最高にウマい! しかも、多彩な食材で味に奥行きを持たせてるのが一口ごとに感じられて、やっぱりタダモノじゃないなとビビります(笑)」(田中さん)

 

同店の顔「塩Soba」と、田中さんが「気になっていた」と語る「味噌Soba」が登場

次は「麺バルHACHIKIN」の“顔”である「塩Soba」。ベースとなる素材は、女将さんの地元・高知の大川村から仕入れるブランド鶏「はちきん地鶏」。ごくわずかに香味野菜で味を調えているが、ほぼ100%鶏によるスープだ。

↑「塩Soba」920円。細麺で、鶏のスープに高知の完全天日塩「海一粒」によるタレを合わせている。チャーシューは、豚の肩ロースとモモ肉の2種類

 

「鶏100%の清湯(チンタン)ラーメンって、以前と比べてかなり増えましたが、この『塩Soba』は鶏のうまみだけでなく香りやタレの感じも印象的。どこの店とも違う、蔦・大西祐貴の味というのがはっきりと感じ取れますね。一口でその人の味と思わせる料理人って、そうそういません」(田中さん)

 

田中さんが特に気になっていたラーメンのひとつが「味噌Soba」だ。というのも、以前祐貴店主から、「うちの味噌ラーメンは実家の味噌汁に使っている味噌が決め手」と聞いていたから。実家とはつまり大西家であり、実家の味噌汁とはすなわち由美子さんの味噌汁。その母の味を息子が形を変えて表現した“アンサーラーメン”がこの「味噌Soba」なのだ。

↑「味噌Soba」920円。麺は専用の中細を使用。味のベースは3タイプを掛け合わせたトリプルスープと秘伝の味噌ダレだ。赤い具材は酸味を演出するトマトで、途中で混ぜると効果的

 

そのトリプルスープは、「はちきん地鶏」のスープ、魚と香味野菜を炒めて白ワインや香辛料で炊くフュメ・ド・ポワソンの技法を駆使した鮮魚スープ、そしてウルメ節や真昆布などの乾物からなる濃密な魚介スープを合わせたもの。これに大西家の伝統の味噌によるタレをブレンドしている。なお、女将さんによると、この味噌は徳島産の麦味噌で、地元ではごく普通に売っているとか。女将さんも自身の母から味噌汁のレシピを受け継ぎ、自然にこの味噌を使うようになったとのこと。

 

「これこれ、この味噌の感じ!  蔦は一時期、『味噌の陣』という名で曜日限定の営業をしていたんですが、あのテイストがしっかり出てますね。その時にはなかったトマトがアクセントとしてのっていたり、HACHIKINの『味噌Soba』としてブラッシュアップされてますね。あと、かすかに感じる山椒のピリっとした余韻も絶妙」(田中さん)

 

「HACHIKIN」は、多彩な麺のメニューと女将さんの人柄が作る雰囲気が魅力

そして最後に注文したのは醤油ラーメン「醤油Soba」だ。味噌ラーメンと同様のトリプルスープに醤油ダレをブレンド。そこに細麺が泳ぐ。

↑「醤油Soba」920円

 

「タレの奥底に潜んだ、ハマグリや牛肉、海老といった様々な素材のうまみと、トリプルスープの絶妙なアンサンブルが見事です。塩、味噌、醤油に汁なし麺やつけ麺と、麺のメニューがたくさんあるのもHACHIKINの魅力。何人かで訪れて、お酒とおつまみで楽しんだあとに、数種の麺をみんなで食べ比べるのもいいですね」(田中さん)

↑鵠沼の地に駆けつけたGetNaviのプロデューサー・松井謙介と仲良く麺をシェア

 

このほか、基本的に猿渡店長が祐貴さんのレシピを忠実に守るが、猿渡店長オリジナルメニューも提供する。取材時には品切れで、残念ながら今回は紹介できなかった「ごぼポタつけSOBA」(920円)がそれ。猿渡店長が独自に開発し、蔦の祐貴店主も太鼓判を押したメニューだ。これらの限定麺は今後もより進化させていくというが、こうした変化が楽しめるのも「麺バルHACHIKIN」の魅力なのだ。

↑由美子女将との2ショット

 

「つまみもラーメンも圧倒的ですが、お店のあたたかい雰囲気に欠かせないのがやっぱり女将さんの明るさ。この日も地元の常連さんがひっきりなしに訪れていましたが、女将さんの気さくな人柄に惹かれている人も多いでしょう」(田中さん)

 

女将さんは「私はラーメンは作れないんです。でも、息子と優秀なスタッフのおかげで」と謙遜するが、とんでもない。世界一のラーメン職人を食育したのは、まぎれもなくこの母の手料理と広大無辺の愛なのだ。料理も酒も居心地も抜群で、駅からも近い「麺バルHACHIKIN」。ラ飲みの桃源郷として覚えておこう。

 

撮影/中田 悟

 

【SHOP DATA】

麺バルHACHIKIN

住所:神奈川県藤沢市鵠沼桜が岡3-5-7

アクセス:小田急江ノ島線「本鵠沼駅」東口徒歩1分

営業時間:11:30~14:00(L.O.)、18:00〜22:00(L.O.)
定休日:水、毎月第2木

 

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