日本でモエ・エ・シャンドンが広まったのは1990年代以降だった
ーーモエ・エ・シャンドンは世界中で親しまれているということですが、日本に入ってきたのはいつ頃のことですか?
吉田 これまでは「1903年」と言われていたのですが、近年フランスの本社で確認してもらったところ、「1874年に横浜に輸出した」という記録が残っていることが分かりました。日本のどのような会社が輸入し、誰が買ったというところまでは読み解けないんですけどね。ただ、実際の売れ行きで言うと、モエ・エ・シャンドンが日本の市場に広まったのは1990年代以降なんです。
ーーそうなんですか?
吉田 はい。弊社は、ヘネシーというコニャックも取り扱っています。1990年代まではヘネシーが主力ブランドでしたが、その後、ドン ペリニヨンやモエ・エ・シャンドンなどシャンパンの市場が拡大し始めました。
バブル以降、定期的に起こるワインブームの影響もあったと思います。シャンパンもワインの1種ですから、ワインブームが訪れ身近に親しまれるようになると、モエ・エ・シャンドンを含むシャンパンというお酒が、より身近に感じられるようになったのかもしれません。
定番以外にも複数ある個性派シャンパン!
ーー先ほどうかがったモエ・エ・シャンドンを代表する、モエ アンペリアル以外にも複数のラインナップがありますね。
吉田 はい。まず、スタンダードのモエ アンペリアルの兄弟のようなシャンパンで、「モエ・エ・シャンドン ロゼ アンペリアル」というシャンパンがあります。辛口のシャンパンなのですが、赤身のお肉、ローストビーフのように火が入りすぎていない低温で調理されたものや、サーモンや海老などのカルパッチョなどと相性が抜群です。色もかわいくて、近年特に人気が高まっているシャンパンです。
吉田 さらに氷を入れて楽しむタイプのシャンパンがありまして、それが「モエ・エ・シャンドン アイス アンペリアル」というものです。
吉田 開発経緯としては、前述の醸造最高責任者のブノワ・ゴエズがバカンスで南フランスに行った際、現地でワインやシャンパンに氷を飲んでいる人たちを多く見かけたことがきっかけだったようです。「だったら、氷を入れて飲むための専用のシャンパンを作ったほうが良いな」と考え、「アイス アンペリアル」が誕生しました。氷が溶けてシャンパンの風味とよく調和するように作られています。氷を入れないまま飲んでも、美味しいのですが、ちょっと個性が強く出てしまうシャンパンですね。なので、やはり氷を入れることで初めて完成する商品です。
ーーワインには年代物のヴィンテージがありますけど、シャンパンにもあるのでしょうか。
吉田 モエ・エ・シャンドンでは、特別に作柄が良かった年だけに、その年のブドウのみを使って造るヴィンテージ シャンパンを用意しています。最近のもので言うと、「モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ ロゼ 2012」というシャンパンになります。
吉田 最初に言ったブランドを代表するシャンパン、モエ アンペリアルは世界中いつどこで飲んでも同じスタイルとクオリティで、親しみやすい味わいですが、「グランヴィンテージ ロゼ 2012」はその年のブドウの強い個性を引き出した味わいです。毎年作られるというわけではなく、醸造最高責任者の自由な発想と芸術性で判断され、とりわけブドウの出来が良かった年にのみ造られるものですので、より貴重なシャンパンであると言って良いと思います。
また、少しユニークなラインナップとしては、「モエ・エ・シャンドン ネクター アンペリアル ロゼ ドライ」というシャンパンもあります。
吉田 ナイトシーンなどで楽しんでいただけるように作られたもので、ボトルが光る仕様になっており、味わいは個性的です。夜を輝かせながら、力強い風合いなので芳醇でエレガントなシャンパンを求める方には最適な1本となると思います。
これらがモエ・エ・シャンドンのラインナップなのですが、他のシャンパンブランドと比べてみても多いほうだと思います。それだけモエ・エ・シャンドンは様々なシーンに対応できるシャンパンを生産しているという自負もあります。