コロナ禍の影響によって厳しい業界のひとつが外食だ。もともと後継者不足が深刻な街中華は言わずもがなである。事実、閉じることとなった名店も少なくない。しかし街の灯が消えることはなく、なかには新たな命を宿したケースもあるのだ。今回紹介するのはその一例、4月1日にオープンした「新御茶ノ水 萬龍」だ。
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ただのニューオープンというだけでなく、同店にはフレッシュな息吹あふれる意欲的なメニューが盛りだくさん。名物を中心にレポートしていこう。
破壊力抜群の肉メニューに舌鼓
いきなりだが、必食の逸品から紹介する。「チャーシューエッグ」だ。チャーシューエッグは街中華の腕の見せ所といえる料理のはずだが、その名店と称されるのはとんかつ店や食堂ばかりである。そこに対抗したかどうかは定かではないが、とにかくここの「チャーシューエッグ」はスゴい。
豚肉はバラと肩ロースの2種類を使用。塊のままねぎやしょうがなどとともに約2時間煮て、半日以上寝かせたあとにしょうゆと砂糖を効かせたスープでこんどは1時間ほど煮込む。そうして仕込んだものを注文ごとに分厚くカットして、あえて焦がすように焼き上げて提供するのだ。
破壊力といえば、あんがパンパンに詰め込まれた爆弾のような餃子も見逃せない。焼き、揚げ、茹での3種があり、一番人気は焼き餃子だ。一皿に3個と数こそ少ないが、一つひとつのボリュームは貫禄に満ちあふれている。
具材は豚肩ロースのミンチにキャベツ、にら、ねぎ。にんにくとしょうがの量は控えめにし、2/3を野菜にした甘味豊かな味わいだ。一般的な餃子は25g程度といわれているが、であれば同店はその2倍。食べごたえがあるのは当然で、肉汁も“口福”感も倍増する。
伝統をリスペクトしつつ現代的アレンジで味覚を刺激
同店の餃子は確かにウマいが、個人的には「茹でワンタン」も捨てがたい。こちらは味付けが秀逸。ラー油の効いたタレが食欲をそそるルックスとおいしさを演出しており、チュルッとした皮の食感もたまらないのだ。
そして、しめの人気メニューは「ワンタンもやしそば」。前記のワンタンと、もやしを中心にたっぷりの野菜が食べられる、いいとこどりの一品だ。
ベースは鶏ガラと豚骨による王道の中華スープ。ただ街中華としては珍しいのが、表面を覆う黒い液体である。この正体は、長ねぎの青い部分としょうが、にんにく、玉ねぎをラードとともに焦げるまで炒めた黒ねぎ油と呼ばれる特製オイルだ。この香味油が深いコクと魅惑のフレーバーを演出し、中毒性のあるおいしさに仕上げている。
ラーメン類やスープ系以外のメニューはテイクアウトでき、+200円でごはん、スープ、漬物を付けた定食に変更可能。また平日11:00~16:00はランチタイムとなり、「焼き餃子(2個)」(+220円)や「半チャーハン」(+300円)などをセットで付けられるお得な時間となっている。
「新御茶ノ水 萬龍」はニュージェネレーション的な要素を匂わせる新店だが、使い勝手のよさ、全体のメニュー構成、雰囲気など、古典的な街中華へのリスペクトも随所に感じる。何より、古き良き日本の食文化が希少になるなかで新規開店するのはうれしい限りだ。同店のような“ネオ街中華”は今後もっと増えていくのだろうか、注目していきたい。
撮影/我妻慶一
※文中の価格は税抜表記です
【SHOP DATA】
新御茶ノ水 萬龍
住所:東京都千代田区神田駿河台3-2-6 御茶ノ水ビル A.PLAZA 1F
アクセス:東京メトロ千代田線「新御茶ノ水駅」、丸ノ内線「淡路町駅」、都営地下鉄新宿線「小川町駅」B3出口徒歩1分
営業時間:11:00~23:00(L.O.22:00)※コロナ過のため営業時間変更となる場合があります
定休日:日曜
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