「ソラチエース」は個性派ながら汎用性がハンパない
後半の2部は、各社のこだわりホップビールと、ベストマッチなペアリングの紹介。前述した中水さんと金さんが加わり、解説してくれました。まずは中水さんが「Hop Fest 2020」をプレゼン。
「ポイントは『IBUKI』という柑橘やフラワリーな香りのホップ。遠野でとれたばかりのフレッシュホップならではの鮮やかなフレーバーと、エールタイプの芳醇な味わいが楽しめる、この時期だけのビールです。アルコールが6.5%でボディ感もあり、心地よい苦味や戻り香も楽しめますよ」(中水さん)
次の金さんが紹介したのは、上記「ソラチエース」を使ってアメリカで生み出されたビール「ブルックリン ソラチエース」です。このホップはサッポロビールが1984年に生み出したものの、その豊かな個性は当時の日本では需要が見込めなかったため、商品化には至りませんでした。その後アメリカへ渡り、2008年にブルックリンブルワリーのブリューマスターであるギャレット・オリバーさんが魅力に気付いて2009年に商品化。それが「ブルックリン ソラチエース」なのです。
「柑橘やレモングラス、ディルなどを思わせる爽やかな香りで、アメリカでは熟したバナナのような甘みと表現しています。スパイシーな料理や魚介類と非常に相性がよく、和食とも好相性。私のイメージでは日本酒や白ワインにも近く、個人的にここまで幅広くペアリングできるビールは初めてです」(金さん)
最後は新井さんが「SORACHI1984」を紹介。実は新井さんが初めて「ソラチエース」のことを知ったのは、サッポロビールに入社して7~8年経ったあとのドイツ留学時。海外の醸造家に「あの面白いソラチエースを作ったサッポロ!」と言われたものの、自社でも聞いたことがなかったため、間違いではないか?と聞き返したほどだったとか。その体験が、新井さんの“ソラチエース熱”を高めるきっかけとなったのです。
「凛として香り立つ、一般のビールではなかなか味わえないうまさが特徴です。レモングラスやヒノキなどハーバルでウッディな香りが立ち、アフターフレーバーにはココナッツやはちみつのような甘やかさも。またホップは効かせているものの、IPAほど鮮烈ではないので、もう一杯飲みたくなるようなバランスのよさもポイントです」(新井さん)
やはりホップは奥が深くて面白い。今回のビールと一般的なビールを飲み比べてみれば、その違いもよくわかるでしょう。ぜひ本稿を参考に試してみてください。
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