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2020/11/29 19:00

岐阜の老舗蔵元が北海道へ――稀有な挑戦の背景にあった2つの課題とは?

アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」。注力しているカテゴリーのひとつが日本酒ですが、また斬新かつユニークなプロジェクトがスタートしました。それが、明治10(西暦1877)年創業の蔵元が岐阜から北海道へ移転するというものです。

 

リターンとして用意されたアイテムのなかには、新しい酒蔵で「一番最初に仕込んだ」ファーストタンクの日本酒も(※ファーストタンクは好評につき記事執筆時点ですでに受付終了)。プロジェクトの内容とともに紹介していきます。

↑好評のうちに即終了となった「東川初仕込み【1st・2nd・3rdタンク】北海道米三千櫻3本独り占めセット+蔵にお名前掲示権」1万円

 

蔵の老朽化と地球温暖化が課題だった

老舗蔵元の名は、岐阜県中津川市で創業した「三千櫻酒造」。様々な想いを胸に抱き、2020年10月に北海道上川郡東川町へ移転しました。距離にしておよそ1550Km以上にもなります。

 

しかも引っ越したのは設備だけではありません。三千櫻酒造社長の山田夫妻はじめ、従業員とその家族も一緒に、つまり「三千櫻酒造まるごと全部」が北海道の東川町を新天地と決めたのです。

↑大きなタンクが空を舞い、6トンにも及ぶ絞り機を運搬するなど、蔵の設備が引っ越すだけでも一大事業

 

その背景には、蔵の老朽化と地球温暖化により、今まで通りのやり方で日本酒を造ることが年々難しくなってきたことがありました。140年以上の歴史の重みは壁や屋根にのしかかり、増改築しながら大切に使い続けてきたものの、蔵の維持は常に作り手を悩ませてきました。

↑酒造りは設備と自然のバランスが重要。ある一工程だけ最新の設備を入れても、良い酒ができるとは限りません

 

また、それ以上に悩みの種だったのは、地球の温暖化の影響などによる「温度上昇」。ここ数年の暖冬続きで想像以上に冷却作業が難しくなり、時間と手間がかかっていたのです。加えて、質の良い酒米はどんどん北上している――そんな状況をいち早く察知し、数年前から北海道産の酒米の可能性を模索。以前から北海道産の米を使った酒造りも始めており、北海道への移転も視野に入れていた矢先、北海道東川町が公設民営型酒蔵を公募しているという話が舞い込んできたそうです。

↑新天地にて。「北へ行こう」と皆が決断を下すのに、そう時間はかからなかったそう

 

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