グルメ
お酒
2020/12/15 16:45

2020年の「酒トレンド」をプロが解説。5つのキーワードと「17の銘柄」で振り返る

激動だった2020年。例年よりあっという間だったと感じた人は少なくないでしょう。トレンドを語る背景にはステイホームが強く関わってきますが、本稿ではお酒のトピックスを5つのキーワードと17の銘柄で振り返ります。

 

↑酒×コトの分野における今年の一大トレンドといえば、オンライン飲み会です。写真は「樽ハイ倶楽部」。右がレモンとウォッカがベースの「樽ハイ倶楽部レモンサワー」、左がほのかな柑橘の風味が感じられるプレーン味の「樽ハイ倶楽部大人のサワー」

 

【2020年を彩ったお酒たちを先見せ(画像をタップすると拡大画像が表示されます)】

 

【その1】上質系レモンサワー

昨今の缶チューハイブームをけん引するレモンサワーは、今年も安定の盛り上がりを見せました。そのなかで台頭してきたのが“上質系”といえるカテゴリー。これは、既存のレモンサワー商品以上に素材や製法にこだわってつくられた、高付加価値なおいしさが特徴です。

 

特に注目だったのが、春にセブン-イレブンから先行発売されて人気に火が付き、秋からは全コンビニへと販路が拡大した「アサヒ ザ・レモンクラフト」

↑【注目お酒その1】「アサヒ ザ・レモンクラフト」の「極上レモン」(左)と「グリーンレモン」(右)。ともに400mlでアルコールは7%。リキャップできる珍しい仕様となっています

 

最大の特徴は、レモン/グリーンレモンオイル、旬果レモンスピリッツ、凍結レモンピールエキス、瀬戸内産レモンエキス、シチリア産レモン果汁の5種類のレモン素材を使い、芳醇な香りを実現していること。そしてその魅力を最大限に楽しむためにボトルの形状にもこだわり、飲み方まで推奨(グラスに注がずボトルから飲むことを推奨)しているのもポイントです。

 

また、リニューアルによって商品価値が高まったものも。そのひとつが、2018年にデビューした「キリン・ザ・ストロング」の進化版「麒麟特製サワー」です。

↑【注目お酒その2】「麒麟特製レモンサワー」。複数の果実を12時間以上煮詰め、うまみを凝縮させた独自の「うまみエキス」により、アルコール9%の飲みごたえと飲みやすさを高いレベルで両立

 

そして2019年に誕生し、今年のリニューアルによって上質な味にさらなる磨きをかけたのが「サッポロ レモン・ザ・リッチ」です。今春にはブランド史上最も濃く贅沢な味に仕上げた「サッポロ レモン・ザ・リッチ 神レモン」を限定発売し、話題となりました。同商品は、レモンの果皮、オイル、パルプが入った混濁果汁による奥行きのある味が魅力。そのおいしさを最大限楽しむために、一度逆さまにしてから飲むというのも特徴です。

↑【注目お酒その3】こちらは定番の「サッポロ レモン・ザ・リッチ 濃い味レモン」。通年商品には「ドライレモン」と「ビターレモン」もラインナップされています

 

2020年の元日から発売され、1か月で約100万本を超える売り上げを記録したローソン限定品の「LEMON SOUR SQUAD from NAKAMEGURO」も上質系サワーの一大ブランドです。手がけているのは、缶チューハイのパイオニアである宝酒造。レモンの香り成分を含むハーブを原料に加えた焼酎と、深み豊かな樽貯蔵熟成焼酎のブレンド、濃厚レモンペーストと強炭酸の爽快な味が特徴です。

↑【注目お酒その4】「LEMON SOUR SQUAD from NAKAMEGURO」。自他ともに認めるレモンサワー好きのEXILEが監修していることも話題に

 

上質系レモンサワーを語るうえでは、初めてアルコール商品を手がけたことでも話題となった日本コカ・コーラの「檸檬堂」も外せません。九州でのテストを経て2019年10月に全国発売されましたが、今年1月にはあまりの人気に一時出荷停止となったヒット商品です。

↑【注目お酒その5】「檸檬堂 定番レモン」。まるごとすりおろしたレモンを、あらかじめお酒に漬け込む「前割り製法」を採用しているのが特徴で、フレーバーは「鬼レモン」「塩レモン」「はちみつレモン」を含む全4種

 

【その2】おうちスピリッツ

家で過ごす時間が増えたぶん、RTD以外のお酒をじっくり楽しみたいという需要が増えたのも今年の傾向です。そこで重宝されたのが、ジンやウイスキーをはじめとするスピリッツ(蒸溜酒)。新商品としてヒットしたアイテムの代表には、サントリーが手がけたジャパニーズジン「翠(SUI)」があります。

↑【注目お酒その6】「翠(SUI)」。ジュニパーベリーなどジンの定番ボタニカルに加え、柚子、緑茶、生姜といった和素材を使用。柚子の華やかな香り、緑茶のうまみ、生姜のすっきりとした辛味が華やぐ日本人好みの味わいに仕上がっています

 

ウイスキーの新作には、ニッカウヰスキーの6年ぶりの新ブランドとして話題をさらった「ニッカ セッション」があります。特徴は音楽をイメージしていること。スコットランドのモルトと日本のモルトをセッションのように組み合わせ、華やかな香り、なめらかな口当たり、オーク樽の甘さが調和した軽やかな味わいを実現しています。

↑【注目お酒その7】「ニッカ セッション」。新たな創造や潮流をイメージした、モダンアートを彷彿とさせる躍動感のあるラベルデザインもアイコニック

 

ほかにウイスキーの新作には、今春デビューした「キリンウイスキー 陸」が本格的な味と良心価格でおうちスピリッツの人気者に。一方で新作以外の定番スピリッツも人気を博し、特にコンビニでも買えるような超王道は例年以上に売り上げを伸ばしました。たとえば、世界No.1ラムとして有名な「バカルディ」、同じく世界No.1プレミアムジン「ボンベイ・サファイア」、そして“ハイボールの起源”とも言われるスコッチウイスキーの銘酒「デュワーズ」などがあります。

↑【注目お酒その8〜10】左から「デュワーズ 12年」、「ボンベイ・サファイア」、「バカルディ ゴールド」。スパイスがボタニカルのキーであるジンは、スパイスカレーとのペアリングでも人気が上昇中

 

【その3】カジュアル系スパークリング果実酒

炭酸の効いた爽快なお酒は、夏場に重宝されるほか、1杯目としても人気。そんなスパークリングカテゴリーにおける今年のトレンドといえば、果実酒を中心にカジュアルなラインが増えたことです。代表的なアイテムといえば、メルシャンが“カジュアルスパークリング”として新提案した「ビストロ スパークリング」と「メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ホップ」です。

↑【注目お酒その11】左の3つが「ビストロ スパークリング」で、最右が「メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ホップ」

 

これらの特徴はアルコールが低め(一般的に12%前後のところ7~9%)かつ量も少なめ(主流は750ml のところ500ml)で、価格も400~600円で安めということ。お酒が得意ではなくても飲みやすく、なおかつ気軽に買いやすい価格なので敷居の高さを感じにくくなっています。

 

もう一品、カジュアル系スパークリング果実酒として紹介したいのが「ニッカ JAPAN CIDRE」。こちらは、量や価格は一般的なシードルと相応ながらもアルコール度数が3%とフレンドリーな仕様に。また、果肉まで赤い希少なりんご「ジェネバ」を一部に使った赤い液色が鮮やかで、カジュアルなルックスも特徴です。

↑【注目お酒その12】今夏Amazonから先行発売された「ニッカ JAPAN CIDRE」。同サイトのシードルカテゴリーで屈指の人気を誇っています

 

これまで低アルコールのスパークリングとしては、14種もの豊富な通年商品がありそのすべてがアルコール度数3%のRTD、サントリー「ほろよい」が大きな存在感を示していました。このボリュームゾーンが、カジュアル系スパークリング果実酒の登場で拡大していくことでしょう。

 

【その4】やさしいアルコール

コロナ禍で健康への意識が例年以上に高まるなか、その需要に応えるかのように立て続けに登場したのが「キリン一番搾り 糖質ゼロ」「キリン ベジバル」「キリン 麹レモンサワー」のキリン3部作です。これらに共通しているのは、“やさしい”ということ。

↑【注目お酒その13】「一番搾り製法」に、「新・糖質カット製法」という新たな独自技術を投入しておいしさと糖質ゼロを両立。試験醸造は350回を超え、開発には5年もかかったそう。発売1か月で100万箱を突破するヒットを記録

 

「キリン一番搾り 糖質ゼロ」は、コロナ太りが気になっている人にやさしい設計。野菜を使ってスムージー感覚に仕上げた「キリン ベジバル」は、食生活の偏りが気になっている人にやさしい商品。そして「キリン 麹レモンサワー」は、日本の伝統的な健康フードとしてなじみの深い発酵食「麹(こうじ)」に着目した、やさしいおいしさが特徴です。

 

↑【注目お酒その14】左から「キリン ベジバル」(「グリーンmix」「レッドmix」「オレンジmix」)と、「キリン 麹レモンサワー」

 

【その5】専門店から生まれた対コロナのお酒

最後に紹介するのも、コロナ禍によって生まれたお酒のトレンドです。ステイホームにより飲食店にとっては苦しい状況が続いていますが、この逆境だからこそ生まれた革新的なお酒があります。ひとつは、バー業態による「ボトルカクテル」。グラスに注ぐだけで、プロのカクテルの味が楽しめるスペシャルボトルです。

↑【注目お酒その15】有名女性バーテンダーの小栗絵里加さんによる「Mother’s Blossom」。味はフローラルかつフルーティでクリーミーと、市販のお酒にはないプロの芸術が詰まっています

 

また、国が飲食店の救済策として打ち出した「料飲店等期限付酒類小売業免許」も話題に。これは、酒販免許がない飲食店でもお酒のテイクアウト販売を期限付きで許可したもので、バーによるカクテルキットや、クラフトビール専門店の樽生クラフト持ち帰りなどが注目を集めました。

↑【注目お酒その16】クラフトビールレストランの人気店「クラフトビアマーケット」グループの「クラフトロック ブリューパブ&ライブ」では、1リットル缶を1280円でテイクアウト販売。同店は醸造所併設型店舗のため、今回の期限関係なく購入できます

 

クラフトビールに関しては、米国の多くのビール好きが持っている「グロウラー」という持ち帰り専用ボトルを、日本でも買う人が増えるというトレンドも生まれています。

↑【注目お酒その17】グロウラーの人気ブランド「ドリンクタンクス」。専用アタッチメントを付けると、ビアサーバーになるのも特徴です

 

こうして2020年を振り返ってみると、ステイホームで外食がしづらくなったぶん、家飲みを贅沢にしようというマインドから「上質系レモンサワー」や「おうちスピリッツ」などに人気が集中。また、運動不足や免疫力への意識の高まりから「やさしいアルコール」が注目され、集客が厳しくなった飲食の専門店からは「VSコロナ酒」が生まれるなど、改めてコロナ禍の影響は大きいと実感しました。2021年はより楽しく乾杯できる日が早くくるよう、年始から祈願していきたいと思います。