グルメ
2021/1/7 18:15

選び方や保存方法、かゆくならないコツも!「長芋・山芋」の下処理と絶品レシピ

貯蔵技術の発達とともに、年間を通して食べられる野菜が多い今、旬を感じることが少なくなっています。通年で見かける長芋や山芋も、実は秋に旬を迎えて収穫されるため、この時期だけは“新物”が並んでいることを知っていましたか?

 

今回は、管理栄養士で簡単レシピが得意な柴田真希さんに、長芋と山芋、2種の使い分けの仕方と、手軽に作れておいしいレシピを教えていただきました。定番の「とろろごはん」以外のおいしい食べ方をマスターして、いつもの献立のレパートリーに加えてみてください。

 

長芋と山芋は何が違う?

“とろろ”のように、すり下ろすと粘りがある芋には、山芋(やまいも・写真上)と長芋(ながいも・写真下)があります。ところが実は、“山芋”という種類の芋は存在しないのです。

 

山芋として知られているものは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属ヤマイモに分類される、「自然薯(じねんじょ)」「大和芋(やまといも)」「いちょう芋」などの総称にすぎません。長芋も、このヤマノイモ科ヤマノイモ属の作物ですが、ナガイモという個別の品種名。スーパーでも、「長芋」の名称で販売されています。この記事では、この分類にしたがって長芋と区別し、自然薯や大和芋などを「山芋」と呼ぶことにします。

 

「自然薯や大和芋の間で違いはそれほど大きくありませんが、山芋と長芋の違いはすり下ろしてみると、すぐにわかります。山芋は、もったりとしていて粘りが強く、だしで溶いて麦ごはんにかけていただくのがおすすめ。一方、長芋は水分が多くてみずみずしく、サラサラとした粘り気です。もちろんこちらでとろろごはんにしてもいいのですが、シャキシャキした食感を活かし、サラダにするのもおいしいですよ」(管理栄養士・柴田真希さん、以下同)

 

旬の時期は? 長芋の旬は2度ある!?

自然薯は日本原産、そのほかの山芋や長芋は、中国原産の作物。現在市場に出回っているものは国産がほとんどで、いずれも11月下旬〜12月に“新物”として収穫されます。長芋はこれを“秋掘り”と呼び、掘り出さずに低温で越冬させ、粘りや甘みが強くなった4月〜5月に行う収穫を“春掘り”として呼び分けています。つまり長芋の旬は、年間に2度あるのです。

 

ちなみに長芋は、栄養価が高く消化もいいため、古来“滋養強壮”の食物として親しまれてきました。炭水化物のほか、カリウム、ビタミンB1、食物繊維などが豊富な上、デンプンを分解するアミラーゼなどの消化酵素も多く含まれています。

 

おいしい個体の選び方は?

長芋・山芋は、さまざまな形や太さのものが売られていますが、太くてずっしりとしていて、まっすぐに伸びたものがとくにおいしいのだそうです。

 

ヒゲが残っていて、表面に黒っぽいシミや傷がないものを選びましょう。カットされて売っていることも多いので、その場合は切り口を見てみてください。切り口が変色しておらず、白くてみずみずしい色のものが、鮮度がいい証拠。細いものや首の部分に近いものは、アクが強いものも多いので気をつけて選んでみてください」

 

食べきれないときはどうする?

「すぐに使わない場合は、1本丸ごとのときは新聞紙に包んで冷暗所か野菜室へカットしてあるものはラップで空気が入らないよう包んで野菜室へ入れて保存しますが、こちらは早めに使い切りましょう。また、皮を剥いて保存バッグに入れ、上から叩いて潰せばとろろ状に。これを冷凍しておくと、いつでも使えて便利ですよ」

 

冷凍したものは、冷蔵庫に入れてゆっくり解凍し使いましょう。

 

触るとかゆくなる場合の対処法は?

カリウムや食物繊維が豊富で消化にもいい長芋・山芋ですが、触るとかゆくなってしまう、という人には扱いづらい食材ですよね。

 

「かゆくなってしまうのは、長芋・山芋に含まれるシュウ酸カルシウムという成分が原因です。この成分は針状に尖った形をしているので、そのトゲが肌への刺激になってしまうんですね。シュウ酸カルシウムはアルカリ性なので、手に酸性であるお酢を塗布してから長芋・山芋に触ると、緩和されるかもしれませんが、個人差がありますシュウ酸カルシウムは熱に弱いので、お湯で洗うのも効果的です。口元がかゆくなる方は、生食ではなく加熱調理していただくのがいいでしょう。

 

あくまで個人的な見解ですが、かゆくなるのは手のひらではなく甲の方なので、なるべく手の甲に付着しないように作業するのも効果的だと思います。また、見た目や食感が気にならないのであれば、皮は剥かなくてもかまいません。タワシでこすり洗いすればヒゲも取れますし、味にも影響しませんよ」

 

「すり下ろすときは、このようにフォークに刺すと、手につきにくくなります。フードプロセッサーやポリ袋に入れて潰すなど、なるべく手につかないように調理してみましょう」

 

この長芋・山芋をどうやって楽しんだらいいでしょう。最初に思い浮かぶのはもちろん“とろろごはん”ですが、次のページでは、アイデアいっぱいのおすすめレシピを紹介します。

この長芋・山芋をどうやって楽しんだらいいでしょうか。最初に思い浮かぶのはもちろん“とろろごはん”ですが、ここでは、アイデアいっぱいのおすすめレシピを紹介します。長芋・山芋のどちらでも作れますが、それぞれ食感が異なるので、まずはおすすめしている芋の方で作ってみてください。

 

1. ふわとろ食感で食べ応えがあるのにヘルシー!「海老とブロッコリーの山芋味噌グラタン」

もったりとした山芋をたっぷり入れたグラタンは、それだけで満足。とろろ状にした山芋を焼くと、スフレのようなふわふわの軽い食感になります。さらに味噌を隠し味に入れることで、コクと深みのある香りを感じられるグラタンに仕上がります。

 

【材料(2人分)】

・味噌…大さじ1
・卵…1個
・山芋(すりおろし)…200g
・牛乳…大さじ2~3
・バター…10g
・むきえび…150g
・ブロッコリー…120g
・ピザ用チーズ…40g

 

【作り方】

1. 味噌とたまごを混ぜ合わせる

ボウルに味噌、卵を入れてよく混ぜます。「味噌がダマにならないよう、すり混ぜるようにヘラで合わせていきましょう」

 

2. すり下ろした山芋を2~3回に分けて加える

卵液にしっかり山芋が馴染むよう、少しずつ山芋を入れていきます。「山芋に弾力があるので、卵と絡むようにその都度泡立て器でよく混ぜます」

 

3. 牛乳を加える

卵と山芋がよく混ざったら、牛乳を加えます。「牛乳を加えたあともしっかり混ぜ、ふわふわのとろろ状にしていきましょう。ここでよく混ぜておくと、ふっくらしたグラタンになりますよ」

 

4. フライパンにバターをひき、海老とブロッコリーを蒸し焼きにする

温めたフライパンにバターを入れたら、海老とブロッコリーを加えましょう。ブロッコリーの芯に火が通ったら次に進みます。「茹でてから炒めてもいいのですが、茹でるとブロッコリーに火が通り過ぎてしまったり、面倒だったりするので、蓋をして蒸し焼きにするのがオススメです。時間も短縮でき、ブロッコリーがちょうどよい硬さに仕上がります」

 

5. 耐熱皿に海老とブロッコリー、(3)を交互に入れてピザ用チーズをかける

耐熱皿にはサラダ油(分量外)を薄く塗り、具材が偏らないよう、山芋を流し入れながら海老とブロッコリーを置いていきましょう。「上からかけるチーズはお好みの量で構いません。海老とブロッコリーが隠れてしまうと、なんのお料理かわからなくなってしまうので、姿が見えるようにチーズをかけてあげると、仕上がりがきれいになりますよ」

 

6. オーブントースターで10~15分ほど焼く

オーブントースターに耐熱皿を入れて加熱します。「トースターの他に、オーブンや魚焼きグリルでも同じように焼けます」

 

完成

チーズが溶けて、焼き色がおいしそうにつけば完成です。熱々のグラタンと一緒にバゲットを用意してランチにするほか、小腹が空いた夜はワインとともに夜食にしても、山芋なら罪悪感が少なくてすみそうですね。

 

2. モチモチとシャキシャキを同時に味わう「お餅と長芋のバター醤油おやき」

お餅のもちもち感と長芋のシャキっとした食感が交互に楽しめるおやきは、お餅が余りがちな季節にぴったりです。ホットプレートで焼いて家族でいただくのもいいですね。冷凍した長芋でもおいしく作れます。

 

【材料(2人分・4枚分)】

・長芋…200g
・切り餅…2個
・しらす…40g
・片栗粉…大さじ2
・塩・こしょう…少々
・サラダ油…大さじ1/2
・砂糖…大さじ1/2
・醤油…大さじ1
・かつお節・青のり…適量

 

【作り方】

1. 長芋を保存袋の上から叩いて潰す

長芋を保存袋に入れたら、上からすりこぎなどでまんべんなく叩きます。「形が残る部分がある方が、食べたときのアクセントになるので、8割くらいを潰すようにしてみてください。このままの状態で保存袋ごと冷凍しておけるので便利ですよ。冷凍したものを使う場合は、自然解凍してから(2)に進んでください」

 

2. 餅をサイコロ型に切る

硬い餅を切るときは、包丁の刃を上から両手で押すようにして切ります。「大きさは好みで構いませんが、早く火が通るように小さめにカットしましょう」

 

3. 保存袋やポリ袋に(1)、(2)としらす、片栗粉、塩こしょうを入れてよく揉み込む

しらすや長芋が塊にならないよう、よく揉んで混ぜ合わせておきましょう。「ボウルなどで和えてもかまいませんが、ポリ袋の中で混ぜてしまえば、手が汚れず、洗い物が少なくてすみます」

 

4. フライパンにサラダ油をひき、四等分して生地を丸く流し込む

それぞれの生地がくっつかないよう、離して丸く整えていきます。「火加減は中火にして、片面ずつ焼いていきましょう」

 

5. 片面3分ずつ焼く

生地がくっつかなくなり、焼き色がついてきたらひっくり返します。「蓋をしないで焼くことで、山芋のシャキシャキとした歯応えを残して焼き上げることができます。蓋をするともちもちになるので、そちらがお好きな方は蓋をして焼きましょう」

 

6. 砂糖と醤油を入れる

おやきが焼けたら、生地につかないように砂糖と醤油を入れます。「生地に調味料を直接かけてしまうと、その部分だけが濃い味つけになってしまいます。フライパンに流し込んでから、砂糖を溶かして絡めるようにしていきます」

 

完成

調味料がしっかり絡んだら完成です。あまじょっぱい味が、ごはんにもよく合いますよ。

 

3. 生食のシャキシャキをサラダ仕立てに。「味噌マスタードドレッシングの長芋サラダ」

新鮮な長芋を買ったその日に作りたい、さっぱりとした味のサラダです。醤油やワサビなどをかけていただくことが多い長芋ですが、マスタードや酢と合わせることで、洋風の味に仕上がります。

 

【材料(2人分)】

・長芋…200g
・かいわれ大根…適量

<A>
・はちみつ…小さじ1
・粒マスタード…小さじ1
・味噌…小さじ2
・酢…小さじ2
・オリーブオイル…小さじ1

 

【作り方】

1. 長芋を角切りにする

ぬめりがあるので、しっかりと手で押さえて切りましょう。「形はお好みでかまいませんが、千切りにするよりもシャキシャキとした歯応えが楽しめますよ」

 

2. (A)を混ぜ合わせる

調味料をひとつずつ混ぜ合わせていきます。「このとき、テクスチャーが硬いものの方から混ぜていくと、ダマにならずに混ざります。また、最後に入れるものはオリーブオイルにし、オイルを入れる前に一度味見をしてみましょう。酸味や甘味のバランスが好みの状態になってから、オイルを入れます」

 

3.(1)とかいわれ大根を皿に盛り、(2)をかける

かいわれ大根が入ると、彩りがよく華やかな印象になりますよね。「サラダに入れるものは何でも構いません。レタスやハムなども入れてたっぷり作り、大皿で出すのもオススメです」

 

完成

はちみつの甘味とマスタードの酸味が、長芋を華やかな味にしてくれる一品。家にある調味料で思い立ったらすぐ作れるのもうれしいところです。

 

長芋も山芋も、身近な食材なのにいつも同じ使い方しかしていなかった! という人は、ぜひ新しいレシピで長芋・山芋のおいしさを味わってみてください。

 

【プロフィール】

管理栄養士 / 柴田真希

女子栄養大学短期大学部卒業後、給食管理、栄養カウンセリング、食品の企画・開発・営業などの業務に携わり、独立。27年間悩み続けた便秘を3日で治した「雑穀」や「米食の素晴らしさ」を広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メーカーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。手掛けたレシピ本も多数あり、近著に『切るだけ&漬けるだけ! おうちで簡単ミールキット』(学研プラス)がある。
https://www.e-mish.com/

 


『切るだけ&漬けるだけ! おうちで簡単ミールキット』(学研プラス)



提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」