ボルドー 〜石造りの美しい街並み、サンテミリオン〜
ブルゴーニュが、神秘的で宗教的な側面を持ったワインだとすると、ボルドーワインはとても人知的、人が造り上げたワインのように感じます。日本に輸入されるフランスワインの多くはボルドー産のもので、高級ワインのイメージとともに、量の面でも日本人にとって長く親しまれてきたワインであり、その広大な産地それぞれの地域ごとの格付けやセパージュ(ラベルにブドウの品種名を記載したワインのこと)の比率などは、ワイン愛好家の知的好奇心を満たすことに向き、ワインガイドによる100点満点の採点も、ブルゴーニュの官能性を測るよりも適性があるように思えるのです。
メドックの格付けを覚えるのは、長くワインを学ぶ行為としての入り口だったように思うのですが、現在では残念ながら、メドック1級シャトーは10万円を超えるような価格でワインショップに並んでいるので、おいそれとは巡り会うことができなくなってしまいました。これはブルゴーニュに関しても同じことが言えるかもしれません。
ただ、最近のボルドーは、低価格帯から品質の向上が見られることが特徴だと感じています。2000円前後のワインを(仮に)ブルゴーニュと比較したとすると、好みを別にすれば、おおむねボルドーに軍配があがるのではないでしょうか。そしてトピックとしては、中堅どころの生産者のビオディナミ(自然派ワインを造る際の農法のひとつ)導入が着々と増えてきていることです。これは、メドック5級格付けシャトーであるポンテ・カネの成功の影響が大きいと考えられますが、長くなるのでここでは割愛させていただきます。
写真のクロ・フルテも、2011年よりビオディナミを導入、それ以前からサンテミリオンの有名シャトーのひとつであり、格付けも上から2つ目のプルミエ・グランクリュ・クラッセBながら、ヴィンテージによっては値ごろ感のあるワインのひとつです。
サンテミリオンのワインは、メドックほどタンニンが強くなく、素直で芳醇な果実味を楽しめるワインが多く、〇〇サンテミリオンといった周囲に広がる衛星産地のワインなら、2000円前後から探すことができます。もしもサンテミリオンのワインが気に入ったなら、ボルドー観光の際には街を訪れてみてください。石を切り出した教会、美しい街並みを一望できる“Tour du Roy”、小さな街ですがちょっと中世にタイムスリップしたような感覚になれる、素敵なところです。
Clos Fourtet(クロ・フルテ)
「Clos Fourtet 2011(クロ・フルテ2011)」
1万5800円
輸入元=ベリー・ブラザーズ&ラッド
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