長引く巣ごもり生活とともに、家飲み需要の高まりも続きそう。そのなかで、飲み方にマンネリ化を感じている人は少なくないでしょう。そこで、日夜おつまみのおいしさや楽しさを研究している「なとり」を取材。この記事では、ターニングポイントとなった1980年以降のおつまみの歴史を聞いてみました。おつまみの「つまみ」にぴったりの記事です。
トレンドを読んで新提案を重ねてきた
なとりといえば、言わずと知れたおつまみのリーディングカンパニーであり、1937年創業と長い歴史ももっています。まずは各時代背景などに触れながら、商品トレンドなどを聞いてみました。大きなターニングポイントは、80年代初頭にあったと言います。
「ファミリーレストランやファストフードなどに代表される欧米型の食文化は、70年代から日本に入り広まっていきました。その流れが家庭にも浸透して身近になり、消費者ニーズの多様化、味の国際化、飽食化などとして顕著に表れ始めたのが80年代。そこで当社が開発したのが、1982年発売の『チーズ鱈』をはじめとしたチーズ製品や畜肉製品(ビーフジャーキー、サラミなど)です。それまでは、イカなどの水産物を使ったおつまみが主流でした」(武井さん)
お酒のトレンドとしても、70年代後半から80年代初頭にかけては1000円ワインや一升瓶ワインのブームがあり、その後1984年には日本初の缶チューハイが登場。ウイスキー消費のピークも1983年であり、80年代はお酒の多様化が進んだ時代だといえるでしょう。チーズや肉系つまみの需要が増えたことも容易にイメージできます。
「その後バブルを経て90年代に入り、インターネットや携帯電話がどんどん普及していった1998年に発売したのが食べ切りサイズで100円の『JUSTPACKシリーズ』です。核家族化や単身世帯の増加に伴い、個食化ニーズに着目しました。当時、おつまみの多くは数人で食べる想定だったので、ひとり飲みだと余ってしまいがちな量だったのです」(武井さん)
確かに、昔は「お好きなおつまみ、どれを選んでも3パックで980円!」的な乾きものが多く、その1袋もボリューミーだったイメージです。そこで時代のトレンドを読み、食べ切りサイズを新提案するとは、やはり名実ともにリーディングカンパニー。
「個食化はその後も進みましたよね。いまでは『おひとり様』という言葉も浸透しましたし、その流れで2015年に開発したのが『おひとり様で楽しめるおつまみセット』です。こちらは少量で様々な種類を食べたいというニーズに応えた商品で、4種のアソートとなっています」(武井さん)
おつまみの少量アソートも、それまではあまり世になかったということで、おひとり様やちょい飲み需要にウケているとか。2000年代以降はよりグローバル化や多様化が進んでいますが、食のトレンドに対する商品展開にはどんなものが?
「ナチュラルチーズの普及とともに、『チーズ鱈』はチーズの味にこだわった製品をより多く開発しています。また2000年代後半からハイボールブーム、やがてウイスキートレンドも強くなってきていますが、そこで増やした商品が燻製系です。2013年には『一度は食べていただきたい燻製チーズ』を新発売しました」(武井さん)
聞けば、チーズや畜肉製品のニーズはどんどん高まっているとか。自社商品において2009年度のチーズ・畜肉製品はそれぞれ約14%だった売り上げの割合が、いずれも2019年度には約18%に増えているそうです。では、ここ最近のトレンドに対してはどう展開しているのでしょう?
「たとえばアウトドアの人気に伴い、この3月にリニューアル発売する『酒肴逸品』シリーズのパッケージ裏面には、『自宅でも!アウトドアでも!』と幅広い活用方法を表記しています。常温保存でき、調理が不要でそのまま食べられる当社の商品はキャンパーの方々にも支持いただいておりますので、すそ野をいっそう広げていけたらと。また、炭火で炙ると香ばしくなるという点で、あたりめ、するめ、鮭とばなどはアウトドアシーンで人気が出ていますね」(武井さん)
欧米型食生活、バブル、個食、アウトドアと、おつまみは世相が強く反映されるジャンルというのが改めてわかりました。なお、なとりは3月からプレゼントキャンペーンを実施。内容は「一度は食べていただきたい」シリーズの数品や、「不思議な新食感 濃厚チーズ」のバーコードをハガキに貼って応募すると、オススメの商品が当たるというもの。キャンペーンサイトも2月26日から公開されているので、ぜひこちらをチェックしてみましょう。
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