グルメ
2021/5/27 18:00

鉄分やDHA、タウリンなどたっぷり!「カツオ」の栄養を余すところなく取るレシピ

5月になると、「初鰹」(はつがつお)のシーズンが始まります。江戸時代には一尾が下級武士の年棒に相当したという貴重な初鰹は、栄養価の高い魚のひとつでもあります。今回は家庭料理研究家で管理栄養士でもある前田量子さんに、カツオの栄養について解説いただくとともに、カツオのおいしさを堪能できるレシピを教えていただきました。

 

カツオの旬は二度やってくる

カツオの特徴といえば、高速で泳ぎ続けるという習性から、体の一部にしか鱗(うろこ)がないことが挙げられます。砲弾型の体にはブレーキの役割をする背ビレがついており、速く泳ぐときには体の中に畳めるような形をしています。世界的にもよく食べられている魚で、「ツナ」と呼ばれマグロの代用としても知られています。

 

そんなカツオには、初夏にやってくる“はしり”の時期の「初鰹」と、回遊した鰹がふたたび獲れる秋の「戻り鰹」の、二度の旬があります。初鰹はさっぱりとした脂のりで、戻り鰹はコクのある味わいと、それぞれにおいしさが異なります。日本では昔から“初物”には高い値段がつき、その時期に食べることが貴重であるとされてきたので、5~6月の初鰹をぜひ味わってみましょう。

 

「日本でもっとも有名なのは土佐(高知県)のカツオ。当地ではタタキにするときに藁焼きといって、火をつけた藁でカツオの表面を炙って食べます。燻製のような藁の香りがあり、おいしいですよ」(家庭料理研究家・前田量子さん、以下同)

 

鉄分、タウリン、EPA・DHA……カツオは栄養の宝庫!

カツオは魚介類の中でも栄養価が高く、低脂肪低カロリーなのに高タンパク質という、ダイエット中にもうれしい魚です。

 

「なんと25%がたんぱく質で、動脈硬化の予防に役立つEPAとDHAが含まれています。鉄分もトップクラスの含有量で、ナイアシンやビタミンB群も豊富に含まれており、エネルギーの代謝を促してくれます。貧血予防には、鉄分とビタミンCを合わせて摂ると、鉄の吸収力がよくなりますから、カツオと一緒にレモンや小松菜、モロヘイヤ、ピーマンなどと食べるといいでしょう。

他に、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らしたり、肝臓の解毒能力を強くするタウリンも豊富です。タウリンは体内でも作り出せますが、量が足りないので、食品から取り入れるのがおすすめです。また、トリプトファンという物質も豊富に含まれています。トリプトファンは脳内でセロトニンという物質に変わるのですが、これは“しあわせホルモン”と呼ばれていて、自律神経を整えたり安眠をもたらしたりします」

 

ただし鮮度には要注意!

ただし、注意点も。

「とても酸化しやすい魚なので、栄養価が下がらないよう、切り身ではなくサクで買い、できるだけ食べる直前に切りましょう。また、カツオには寄生虫がいるので取り扱いには注意が必要です。食べると食中毒になり、腹痛の原因になるアニサキスは内臓にいることが多いのですが、鮮度が落ちたものは身の部分にいることもあります。他にも、テンタクラリアという小さなお米粒のような虫がいることがあります。こちらは食べても害はありませんが、切ったときに白い粒があったら取り除きましょう。寄生虫は加熱するか48時間冷凍することで死滅しますから、心配な場合はお刺身も冷凍してからいただきます」

 

カツオの保存方法と切り方

レシピを紹介する前に、カツオの保存の仕方と、上手な刺身の切り方を教えていただきましょう。

 

・保存方法

カツオは足の早い(傷むのが早い)魚なので、刺身を買ってきたら、そのまま冷蔵庫に入れないでください。「ドリップしてしまわないよう、カツオをキッチンペーパーに包み、その上からラップを巻いて冷蔵庫に入れましょう」

 

・刺身の切り方

刺身を切るときは、柳刃包丁という魚専用の包丁があると便利です。刃が長いので何度も刺身に刃を入れる必要がなく、魚の繊維を壊さずカットできます。「洋包丁しかない場合でも、包丁の柄の方から刃を入れて、なるべく一気に切っていくと、きれいな断面で切ることができます」

 

次のページから、カツオがもつ栄養を余すことなく取れる、おすすめレシピを3つ紹介します。

栄養価を余すことなく食べられる!カツオのおすすめレシピ3

それでは、カツオを使ったレシピを3種類紹介していただきます。

 

1. 黄身とアボカドのまろやかさがカツオに合う
「カツオとアボカドのわさび醤油丼」

カツオのもつDHAとEPAに、アボカドの良質な不飽和脂肪酸とビタミンEをプラスし、動脈硬化を防ぐ効果を期待できる丼です。「ご飯はそのままでもいいですし、余裕があれば酢飯にしてもおいしくいただけます。カツオを漬け(づけ)にすることで、甘くてねっとりした感じが引き出されます」

 

【材料(2人分)】

カツオのたたき(または刺身)……300g

<A>
醤油……大さじ1
味醂……大さじ1

アボカド……1個
卵黄……1個

<B>
醤油……小さじ2
わさび……少々

胡麻……適量
刻みのり……適量
青ねぎ……適量

 

【作り方】

1.カツオの刺身をスライスし、調味料<A>に10分漬ける。

「バットにカツオを並べたら調味料をまわしかけ、ぴったりとラップをしておきます。こうすることで味なじみがよくなります」

 

「このまま冷蔵庫に10分入れておきます。短時間でも漬けられるよう調味料を多くしているので、漬け込み時間が一時間ほど取れる場合には、調味料を2/3くらいにしましょう」

 

2. ごはんに刻みのりをのせてから、アボカドと水気を切ったカツオをのせる。

「漬けにしたカツオとアボカドを交互にのせていきます。アボカドは、カツオの幅に合わせて縦にスライスするか横にスライスするか考えて切ると、盛り付けのときにうまくいきますよ」

 

「カツオを漬けた調味料には臭みも入っていますから、一度キッチンペーパーで軽く押さえてからのせます。味は中にしっかり染み込んでいますから、表面を拭っても問題ありません」

 

3. 真ん中に青ねぎの小口切と卵黄をのせる。仕上げに胡麻をふり、合わせたBをかける。

「青ねぎを枕のようにふかふかにのせたら、そこに窪みをつくり、卵黄を落とします。こうすると卵黄が流れず、きちんとのせることができます」

 

カツオのたたきならではの独特の風味と香ばしさに、卵黄とアボカドの甘みがプラスされた丼は、陽気のいい日にもさっぱりいただける味。お酒のあとの締めにもおすすめです。

 

2. 梅の香りのモロヘイヤソースがとろり
「カツオの刺身 梅肉風味のモロヘイヤ添え」

カツオに含まれる造血成分である鉄やたんぱく質を有効に取り入れるため、葉酸たっぷりのモロヘイヤを一緒に合わせました。「葉酸はDNAを作る水溶性ビタミンB群のひとつで、赤血球の生産を助けてくれます。葉酸が不足すると疲れやすくなり、貧血になる可能性もありますから積極的に取り入れましょう」

 

【材料(2人分)】

カツオのたたき……200g
モロヘイヤ……1/2袋
醤油……大さじ1
梅肉……適量
生姜(すりおろし)……適量
大葉……1~2枚

 

【作り方】

1. カツオは1cm幅に切る。モロヘイヤは葉をつみ、たっぷりのお湯で20~30秒茹で、ざるにあげる。

「モロヘイヤは熱が入りやすく、すぐにとろとろになってしまいます。ぐらぐらと沸かしたお湯でさっと茹でたら、すぐにざるにあげ、流水を流して冷やします」

 

2. モロヘイヤを細かくたたく。

「茹で上げたモロヘイヤは冷水でしっかりと冷やしましょう。冷えたら水気をぎゅっと絞り、水に栄養が流れでないようにします。モロヘイヤの緑色であるクロロフィルは、60℃くらいの温度が続いたり、調味料のような酸性のものと合わせると色が悪くなるんです。なるべくきれいな緑色に仕上げるため、茹でたら急いで冷やし、調味料を和えるのは食べる直前にします。絞れたら、包丁で細かく刻んでいきましょう」

 

3.カツオのたたきに、醤油と梅肉を混ぜあわせた①を添える。好みで生姜も添える。

「モロヘイヤの他に、ピーマンや小松菜でも食べ合わせはいいのですが、気を付けなくてはならないのは、ほうれん草。ほうれん草にはシュウ酸という成分が含まれていて、これが鉄分の吸収を妨げてしまうので、貧血にはよくないのです。モロヘイヤは茎から葉を外さないとならないので手間ですが、ぜひモロヘイヤと一緒に食べてみてください」

 

梅の酸味と香りがふわっとするモロヘイヤのソースを、カツオにのせていただきます。いつものお刺身も、ポン酢や醤油で食べるのと一味違った味わいです。

 

以上のように、カツオというとたたきや刺身の漬けでいただくイメージがありますが、生食に飽きたらこんな食べ方も!

 

3. 生食に飽きたらサクサクに揚げて
「カツオの半生カツ」

カツオをさっと揚げて半生にしたカツを、すりごまをたっぷり入れたソースでいただきます。「付け合わせには、たっぷりのキャベツの千切りを添えましょう。キャベツに含まれるビタミンCは鉄の吸収力を上げてくれるだけでなく、カツオと食べ合わせると美肌効果が期待できます。ソースにした胡麻にはセサミンという成分が含まれ、肝臓の機能を高めたり、保護する働きがあります。また、ごまの抗酸化力は活性酸素を除去したり生活習慣病を予防する働きもあり、アルコール代謝促進による肝機能保護に役立ちます。肝機能を助けるタウリンの働きをサポートしてくれますよ」

 

【材料(2人分)】

カツオの刺身……300g
バッター液(卵……1/2個・水……大さじ1・小麦粉……大さじ2・塩……少々)
パン粉……適量
揚げ油……適量
すりごま……大さじ2
ソース……適量

 

【作り方】

1. バッター液の材料をすべてビニール袋に加えて、よく揉む。

「ビニール袋の中で作ると、洗い物も少なくて済みますし、使い終わったらこのまま捨てればいいだけで楽ですよ」

 

2. カツオを1に入れて、バッター液を馴染ませる。

「カツオがぬるくなってしまうと、揚げたときに中まで火が通ってしまうので、冷蔵庫から出したてのカツオで行い、手早くバッター液をつけましょう」

 

3. パン粉をつけ、190℃で1分揚げる。

「レアな状態でいただきたいので、衣が色づいたらすぐに引き上げます。油がしっかりと190℃になってから、さっと揚げます。低い温度で入れてしまうと、いつまでも揚げ色がつかず、待っているうちに火が通ってしまいます」

 

4. カツオを1cmの厚さに切り、すりごま入りソースを添える。

「衣が剥がれないよう、包丁の柄の方から刃を入れて引き切りし、底の部分は包丁を上からトンと叩いて切り離します」

 

サクサクなのにお刺身を食べているようなジューシーさがある半生のカツ。ゴマのソースをカツオと千切りキャベツにかけていただきます。

 

 

カツオはおいしいだけでなく、栄養を摂るためにもぜひ食べてほしい魚です。この旬の時期に試してみてください。

 

【プロフィール】

家庭料理研究家 / 前田量子

一般社団法人日本ロジカル調理協会代表理事。管理栄養士、調理科学を得意とした家庭料理研究家。東京理科大学卒業後、織田栄養士専門学校にて栄養学を、東京會舘、辻留料理塾、柳原料理教室、ル・コルドンブルーにて料理を学ぶ。保育園や病院での勤務、カフェ経営を経て、調理科学に基づいた料理を教える教室を開催。都内栄養士専門学校(栄養士養成施設)にて調理学実習講師もしている。著書に『誰でも1回で味が決まるロジカル調理』(主婦の友社)のほか、『いいことずくめ 考えないお弁当』『苦手な揚げ物も煮物も魚料理も得意料理に変わる ロジカル和食』(ともに主婦の友社)などがある。

 

『おうちで一流レストランの味になる ロジカル洋食』(主婦の友社)
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