グルメ
2021/5/26 17:00

レンチン解禁にミートローフの商品化…日本ハム「シャウエッセン」が目指すのは“攻めてよし、守ってよしの二刀流”だ

いたるところで”多様化”が話題となる昨今。食品ブランドの中で筆者が注目しているのが日本ハムの「シャウエッセン」です。『手のひらを返します』の宣言とともに、禁止していたレンジ調理を解禁したり、同じ素材を使って「シャウエッセン あらびきミートローフ」を商品化したりと、特にここ1~2年の展開には目を見張るものがあります。

↑「シャウエッセン」ブランドの一部商品。ここ数年でバリエーションがかなり増えています

 

そこで、ブランド担当者に改革の狙いをインタビュー。国民的ソーセージ「シャウエッセン」の誕生秘話や、ソーセージに関する個人的な疑問などもぶつけてみました。

 

「シャウエッセン」登場以前は本格ソーセージが珍しかった

対応してくれたのは、日本ハムの比恵島裕美さん。まずは素朴な疑問として、世界中には様々な形やサイズのソーセージ(ドイツのフランクフルト、イタリアのサルシッチャなど)がある中で、なぜ日本はオーストリア(ウィーン)風のウインナーソーセージが主流なのかを聞きました。

↑日本ハム、加工事業本部マーケティング推進部の比恵島裕美さん。オンライン取材で対応してくれました

 

「諸説があるのですが、1985年に発売した『シャウエッセン』の開発以前の日本におけるソーセージは、お子様向けや、お弁当用の需要が高かったようです。食べやすく調理もしやすいサイズでお弁当にも入れやすいウインナーのほうが、フランクフルトのような大きなソーセージよりも、日本の食文化には合っていたということだと思います」(比恵島さん)

 

海外で「Bento」として注目されるほど、日本は弁当大国。「タコさんウインナー」も弁当の定番惣菜であり、あの形はウインナーのサイズだからこそともいえるでしょう。

 

具体的には皮なしタイプ、赤色のソーセージ、魚肉ソーセージが多かったと言います。

↑パッケージ裏面にはポークウインナーと明記。なおサイズの違いは使用する腸で異なり、一般的に羊腸はウインナーソーセージ、豚腸はフランクフルトソーセージ、牛腸はボロニアソーセージとなります

 

また、比恵島さんは「欧州は動物のお肉を腸や血液まで一頭丸ごと使う文化が古来より根付いており、その多様な食肉文化の中から様々なソーセージが生み出され、いまにいたると考えられます」とのこと。

 

では、次の質問。ソーセージは2袋に分け、パンパンになって売られているタイプが多いのはなぜでしょうか? 一方、空気を完全に抜いた真空包装のソーセージとの違いは?

↑左が2袋でパンパンになった王道のスタイル。お店によっては、右のようなファミリーサイズでも販売されています

 

「膨らんでいるのは、窒素ガスを充填させて酸化を防いでいるためです。小分けになっているのも、大袋を2回に分けて使うよりも1袋ずつのほうがよりフレッシュなおいしさを楽しんでいただけるからですね。一方で真空包装にする狙いは、細長いソーセージが折れないようにするためというのが一番の理由です。『シャウエッセン』の場合はパリッとしたおいしさを重視するため、基本は圧縮させないパッケージを採用しております」(比恵島さん)

 

時短礼賛時代に向けて禁断のレンチン調理をOKに

比恵島さんが言うパリッとしたおいしさ。これは「シャウエッセン」の有名なCM『美味なる物には音がある!』でも有名です。

↑ハリのある皮の秘密は、選別された柔らかい羊腸に限定しているから。そのうえで、科学的な数値データを用いた管理基準を定め、パリッとした食感を追求しています

 

とはいえ、「シャウエッセン」の開発が始まった1970年代後半は、成田空港が完成するなど日本の国際化が加速し始めた時期。そこで、食文化をはじめソーセージにも本格的な味を求める時代になるという確信をもとに開発プロジェクトが発足したのです。

↑「シャウエッセン」は食べ方提案でも本格派を目指しました。その一つが専用マスタードの開発です(参考価格:ともに税込108円)

 

「いまでこそあらびきソーセージは当たり前ですが、その日本初は『シャウエッセン』だと自負しております。また、パリッと感を体験していただくため、スーパーなどでの試食でも『シャウエッセン』はソーセージを切らずに丸ごと提供しておりましたし、ホットドッグとともに商品訴求するCMなど、さまざまな食シーンを提案してきました。そういったお客様とのコミュニケーションの中で、大きな転換点となったのが2019年の電子レンジ解禁宣言です」(比恵島さん)

 

2019年は「シャウエッセン」誕生35周年のアニバーサリーイヤー。同時に、社内で既成概念からの脱却やチャレンジが叫ばれていた時期でもあったとか。一方で世の中は、時短とともに簡単調理が求められる時代へ。そんな中、消費者に寄り添う姿勢としてレンチン解禁となったのです。

↑2019年2月の電子レンジ解禁宣言直後にデビューし、“シャウエッセンの中身だけを食べられる悪魔的な食べ物”としてバズッた「シャウエッセン あらびきミートローフ」(税込356円)。その後、2020年2月にはベーコンタイプの「シャウ ベーコロン」(税込359円)も発売されました

 

「発売当時は、ボイル調理が正解ということで焼くことを推奨していませんでした。ただ35年が経過して食文化も多様化する中、守ることだけでなく攻めていくことも大切だと考えるようになったのです。そして、商品としても新提案をしたいという思いから2018年8月に『シャウエッセン ピザ』(税込451円)を発売しました。こちらはソーセージを切って焼いているという意欲的な商品です。不安もありましたがそれを超える高評価をいただき、その後の様々なエクステンションを開発する自信へつながりました」(比恵島さん)

↑こちらは2017年8月から発売されている「シャウエッセンにピッタリ!!チーズフォンデュ」(税込138円)。かつてはフォークなどで刺す食べ方も推奨していなかったそうです

 

 

チーズ味は1か月で100万束の大ヒット

そんな「シャウエッセン」の最新商品が、「シャウエッセン とろける4種チーズ」「クイックパックシャウスライス」「シャウエッセン ホットチリ」です。なかでも「シャウエッセン とろける4種チーズ」は発売から約1か月で100万束(束=1袋×2)の販売を想定している大ヒットとか。

↑左から、2021年3月発売の「シャウエッセン とろける4種チーズ」(税込590円)と「クイックパックシャウスライス」(税込590円)、4月に発売されたばかりの「シャウエッセン ホットチリ」(税込600円)

 

比恵島さんからそれぞれのオススメレシピを聞き、作って食べてみました。最初は「シャウエッセン とろける4種チーズ」から。こちらは「まずは手軽にレンジ調理で」とのことですが、ナポリタンなどのパスタの具材にするのもおいしいそうです。

↑「シャウエッセン とろける4種チーズ」のレンチン時間は、600Wで6本の場合40秒。ラップをかけましょう

 

「シャウエッセン とろける4種チーズ」は、2019年8月に発売して大ヒットした「シャウエッセン チェダー&カマンベール」のリニューアル版。チーズをチェダー、カマンベール、ゴーダ、パルメザンの組み合わせで進化させています。

↑あっという間に完成! ほどよくとろけるチーズのうまみがソーセージとマッチして激ウマです

 

次は「クイックパックシャウスライス」。こちらはシャウエッセンの肉をハムのように仕立てたエクステンション商品です。レシピは、YouTube「料理研究家リュウジのバズレシピ」のコラボ動画を参考に「シャウスライスミルフィーユサンド」を作ってみました。

↑レシピは簡単。「クイックパックシャウスライス」に、クリームチーズをベースとしたソースを5回重ねてレタスとともに挟むだけ。詳しくは「料理研究家リュウジのバズレシピ」

 

「クイックパックシャウスライス」の味は、薫製の香りがほのかにあり、肉の甘味や脂の口どけが印象的。また、何度も開封しやすいパッケージングで、使いやすい点も特徴です。

↑いい感じの“萌え断”サンドができ上がり。ハムとチーズソースとがまろやかに溶け、そこに合わさるシャキシャキレタスとのメリハリがたまりません

 

最後は「シャウエッセン ホットチリ」。こちらは、2020年4月発売の「シャウエッセン 焙煎ホットチリ」のリニューアル版で、うまみをアップさせているのが特徴です。調理はクックパッドに掲載されている「シャウホットチリとピーマンの簡単レンジ煮」を参考にアレンジしました。

↑ピーマン、ミニトマトを切らずに丸ごと使い、ラップはふんわりと。調味料などともにレンジで2段階調理するだけで完成です

 

クタッとしたピーマンやトマトにも「シャウエッセン ホットチリ」のうま辛い味わいが回り込み、インパクトのあるおいしさに。簡単に野菜もとれるナイスなつまみです。

↑ピクニックやランチのお供にサンドイッチを、ビールのつまみにソーセージを。ぜひ新作もお試しあれ

 

比恵島さん曰く、もともと「シャウエッセン」のコアユーザーは50~60代だったそうですが、レンチン解禁やエクステンション商品の積極開発によって、30~40代の購買も高まっているとか。往年のファンを大切にしつつ新たなニーズもつかんでいく、そんな“攻めてよし、守ってよし”の姿勢に、ファイターズ魂を見ました。国産本格ソーセージのパイオニアとしても、これからの動向に目が離せません。