2020年に生まれた新しい生活様式や価値観が定着し、21年は制限のある暮らしのなかで心地良く過ごす方法を追求する年だった。続く22年はどんな一年になるのか。時代を映す鏡でもあるトレンドを、各ジャンルのプロが断言!
「フード」ジャンルでは、コロナ禍を経て、非接触や健康に関連した分野がさらに伸長。外食では新たな上陸系グルメが注目されたり、ユニークなシステムの飲食店が増えたりと、“新体験”がキーワードだ。
※こちらは「GetNavi」2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。
その1【イロモノ自動販売】お店クオリティの料理を会計の手間なく買える!
私が紹介します!
冷凍技術の革新と決済手段の多様化が拡大のカギ
非接触ニーズの拡大を受け、自販機を中心に、ユニークな自動販売システムが増えている。
「冷凍技術の発達により、自販機で冷凍商品を扱えるようになったのがポイントです。これにより、飲料以外にも様々な食品を取り扱えるようになりました。冷蔵よりも賞味期限が長く、食品ロス削減につながる点でも注目が集まっています」(中山さん)
加えて、スマホ決済などの自動決済サービスが増えたことが、店舗形態に影響を与えている。
「決済サービスの拡充により、自販機以外でも自動販売、すなわち無人での販売を行いやすくなりました。2020年春の高輪ゲートウェイ駅開業時に、AI無人決済コンビニ『TOUCH TO GO』が話題になりましたが、同年にローソンも無人店舗を期間限定で試験営業したり、21年からはファミリーマートが郵便局とタッグを組み無人店舗の実験を開始したり、大手コンビニも注力。消費者が新しい決済に慣れることで、様々なジャンルに広がっていくでしょう」(中山さん)
自販機もコンビニも、キーワードは“無人”。2022年も、縦横無尽に展開されるであろう、新たな買い物体験から目が離せない。
【ヒットアナリティックス】外食自粛が発想の転換を生み異色自販機が増加
コロナ禍の外食自粛で意外なフードの自販機や、レジ会計なしで料理を買える自動販売ストアが増加。時短ニーズにも応えられるため、コロナ禍が過ぎても定着しそうだ。ラーメンやサラダのほか、スイーツや和食などもあり、今後も要注目。
01 食後のスマホ決済でレジ会計の時間をカット!
サラダ専門店
2021年11月オープン
CRISP SARADA WORKS
CRISP STATION
カスタムサラダ専門店が、東京都駅近くの「丸の内ビルティング」地下1階に設置。好きなサラダを選び、食べたあとにパッケージに印字されたQRコードから決済する。サラダは8種あり、すべて1295円。
02 定番の味を自宅で楽しめる冷凍食品が24時間購入できる!
冷凍自販機
2021年11月設置
松屋フーズ
冷凍自動販売機
ご飯にのせると牛めしが完成する「牛めしの具(プレミアム仕様)」(300円)や「オリジナルカレー」(200円)など6種類を販売。系列店である「松のや」が監修した「ロースかつ」も並ぶ。東京都・南砂町店に先行設置中。
03 人気ラーメン店の味を自宅で再現できる冷凍キット
冷凍自販機
2021年11月設置
FROZEN24
FROZEN24マート
有名店を中心に、数種のラーメンや餃子の冷凍商品を販売。ラーメンは茹で調理、餃子はフライパン調理に対応する。自宅まで距離がある人のために保冷キット(200円)も用意。東京メトロ南北線の飯田橋駅構内に設置中だ。
04 ブルーボトルコーヒーが渋谷に初のロッカー式カフェをオープン!
ブルーボトルコーヒーがロッカー式カフェを期間限定で営業中。店にある専用端末から注文・決済すると、ロッカーの背後でコーヒーが準備され、できたての状態でロッカーに届けられる。
その2【プラントベースフード2.0】卵や魚も植物性原料に置き換え商品化
大豆の知識と繊細な技術を多彩な商品作りに昇華
プラントベースフードは、日本が外国に勝てる産業のひとつであると、中山さんは期待を寄せる。
「欧米に比べると日本はベジタリアンやヴィーガンが少ないため、代替食はそれほど話題になっていません。ただ、代替食の主要原料となる大豆は、豆腐やしょうゆ、納豆など伝統食に多く使われ、すでに知識が蓄積されていますし、クオリティの高い食を生み出すのは日本のお家芸。知識と技術が開発力につながるはず」(中山さん)
【ヒットアナリティックス】植物由来食品だけで日々の食卓が完成する日も近い!?
2021年10月には、欧州ではネスレが植物由来のエビを開発したと発表。これまでプラントベースの主役であった肉やミルクに、卵や魚介が加わったことで、植物由来食材のみで日々の献立を組めるようになる日も近そうだ。
05 卵を一切使わずに本格的なふわとろ食感を再現!
植物性スクランブル
2020年6月発売
キユーピー
HOBOTAMA
豆乳加工品をベースに、スクランブルエッグのような見た目と食感を卵不使用で再現。ふわとろの半熟食感で、パンや野菜などに合う。現時点では業務用商品として、飲食店や給食などに導入されている。
06 大豆をベースに使った油や水切りが不要のツナ缶
植物性ツナ
2021年10月発売
ネクストミーツ
NEXTツナ
390円
国内プラントベースフードのパイオニア企業による、魚の代替食品。大豆がベースで、低脂質かつコレステロールゼロながらもタンパク質をしっかり摂取できる。油や水分を切る手間がないのも魅力だ。
その3【シン・完全栄養食】手軽だけど非ジャンクな栄養食が多忙な人を救う
私が紹介します!
健康意識と時短需要の高まりで参入企業が増え品質アップ!
完全栄養食とは、1食ぶんで1日に必要な栄養素の3分の1を摂取できる食品を指す。
「これまでは液体や粉末状の商品が大半でしたが、最近はパンやパスタなど種類が豊富で、味のクオリティも上がっています。ヘルスケア意識と時短ニーズの高まりにより、完全栄養食市場は2024年までに約145億円規模まで伸びると言われているので、参入メーカーも続々と増えるはず」(渥美さん)
【ヒットアナリティックス】支持者や販売店が増加してメーカーも注力する最新分野
コロナ禍により単身で食事をする機会が増え、“食事は手軽に済ませたいけれど栄養は取りたい”という人の間ですでに火がついているジャンル。食品大手の日清食品も約500メニューの展開を目指すと発表しており、注目が集まっている。
07 人気ブランドの限定品が好評を受けて再発売
ゼリー飲料
2021年8月発売
森永製菓
inゼリー 完全栄養
1944円(1箱6袋入)
1食ぶん(2袋)で、厚労省の栄養摂取基準値に基づく1/3日ぶんの栄養価を摂取できる。同社のECショップで8月に数量限定販売したところ、翌日には品切れになるほど人気に。11月から再販売中だ。ミックスフルーツ味。
08 栄養士が開発した月替わりの味噌汁サービス
味噌汁
2021年10月発売
MISOVATION
MISOVATION
885円(1個あたり)~ ●定期購入の個数により価格は変動する
完全食味噌汁の定期購入サービス。肉や野菜、味噌などを瞬間冷凍しており、調理は水を加え、レンチンするだけ。栄養士が監修し、1食に必要な31種類の栄養素を摂取できる。味噌の種類は毎月変わる。
その4【異業種レストラン】食以外のメーカーが飲食店を続々と開店
飲食事業を通じて自社製品やブランドを自然にアピール
ここ数年、他業種からのフードビジネスへの参入例が増えている。
「特に、衣食住にまつわるビジネスのボーダーレス化が目立っています。新しいビジネスモデルを構築するためだけでなく、ニトリやスノーピークが自社で販売している食器で料理を提供しているように、飲食事業を商品アピールのチャンスとして活用している点も見逃せません。結果、ブランドイメージの向上につながっています」(中山さん)
【ヒットアナリティックス】違和感なく本業につなげる動線がお見事!
買い物のついでにコーヒーで一服、キャンプ料理を味わうことでアウトドアに興味を持つなど、本業につながる動線作りが自然。サウナや銭湯でビールを販売する店も増加中だ。
09 銀座の旗艦店新装に合わせ国内初となるカフェを併設
コーヒースタンド
2021年9月オープン
UNIQLO
UNIQLO COFFEE
新装した東京都の「ユニクロ 銀座店」に併設。コーヒーは定番(200円)と、ゲイシャ種のハンドドリップコーヒー(450円)を数量限定で販売するほか、洋菓子店「銀座ウエスト」のクッキー(200円)も提供している。
10 あのニトリがいきなり出店 味はやっぱり“お、ねだん以上”
ファミリーレストラン
2021年3月オープン
ニトリダイニング
みんなのグリル
500円のチキンステーキを筆頭に、ハンバーグやビーフステーキなど“お、ねだん以上。”なグリル料理が並ぶ。2021年3月に東京都・足立区に第1号店がオープンし、この1年(2021年12月時点)で6店舗まで拡大している。
11 日本各地のこだわり食材を好みの調理法で味わえる
レストラン
2015年3月オープン
スノーピーク
スノーピークイート
“五感で味わう、野生の贅沢”がキャッチコピーのレストラン。同社が日本各地で見つけた滋味深い食材を、いま食べたいと感じる調理方法(焼く・蒸す・煮るから選ぶ)で調理してくれる。全国に4店舗展開。
その5【蛇口酒場】ひねればそこから酒が出る夢のような飲食店が急増
蛇口酒場をはじめレトロな雰囲気の酒場が人気
外食では、酒が出る蛇口を全席に設置した店が盛り上がっている。
「蛇口から酒を注ぐという見た目のインパクトだけでなく、店員を呼ばずにおかわりできるという利便性でも人気です。蛇口酒場もそうですが、外食では引き続きレトロ回帰がトレンド。なかでも最近は装飾にネオンを使った店が増えています。外食だけでなく、流行りの若手バンドのPVにもよく登場するので注目ですよ」(中山さん)
【ヒットアナリティックス】飲めば飲むほど安くなるうえ待たずに楽しめる
回転寿司の給湯装置のように、飲みたいときに注げるのが特徴で、高コスパな飲み放題制を導入する店がほとんど。多いメニューはレモンサワーとハイボールだが、焼酎を扱う店も増えている。
12 宝焼酎がなんとタダ! 卸直送ホルモンも美味
焼肉店
2021年11月新装オープン
リカー・イノベーション
食肉卸直送・大衆焼肉ばりとんっ
豚肉を一頭買いして卸から直送し、弱酸性電解水で処理し新鮮なまま提供。これを、全卓に設置された蛇口から出る宝焼酎とともに楽しめる。焼酎は、割り材を注文すれば何杯飲んでも定額。
13 熟成ラムのジンギスカンと飲み放題ハイボールで乾杯
ジンギスカン焼肉店
2019年7月オープン
一家ダイニングプロジェクト
大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん
全卓に、飲み放題(1時間550円)のハイボール蛇口を設置。メニューの名物であるジンギスカン(一人前セット968円)とともに、お得な晩酌を楽しめる。東京都、神奈川県、千葉県で計11店舗を展開中だ。
14 “ネオン”を設置した酒場も増加中!
飲食業界の一大ブームが、レトロな雰囲気を醸し出すネオンの照明だ。元祖と言われるのが、2016年に開業した大阪府の「大衆食堂スタンド そのだ」。2021年9月には東京都・五反田にも出店し、業界でも話題を集めている。
その6【ふなぐち50周年】濃醇旨口の“コンビニ最強酒”がアニバーサリーイヤー
生原酒ならではのウマさで人気の日本酒「ふなぐち菊水一番しぼり」。発売から50年経ってもなおファンを魅了する変わらないおいしさに注目が集まること間違いなし!
【ヒットアナリティックス】周年を祝う販促企画で新たなファンが増える
本品の魅力は、ひと口で酒好きを虜にする濃醇旨口な味わい。50周年で蔵元も様々な販促企画を繰り出す可能性があり、そこから新たなファンが増えると予想される。レトロなパッケージデザインも若者ウケしそうだ。
15 日本初の缶入り生原酒をラインナップし“生のウマさ”を全国流通させた
日本酒
1972年発売
菊水酒造
ふなぐち菊水一番しぼり
実売価格314円(200ml缶)、784円(500ml缶)、2369円(1500mlスマートパウチ)
酒蔵を訪れた人だけに振る舞われていた生原酒を、全国流通させることに成功した、日本初の缶入り酒。累計出荷数は3億本を超える。新潟県産の米と水を使い、コクの強いフレッシュな濃醇旨口だ。
その7【ハードセルツァー】炭酸水のような飲み口の米国発のトレンド酒
甘さ控えめで低カロリー、低糖質なフレーバー炭酸酒のこと。数年前にアメリカで人気に火が付き、日本にも徐々に浸透中。追随商品に注目が集まる。
【ヒットアナリティックス】フレーバーウォーターを感じさせる澄んだ味わいが新しい
果汁量や濃厚さにこだわったチューハイをジュースに例えるならば、ハードセルツァーはフレーバーウォーターのような立ち位置。甘くない軽口のRTDはまだ市場に少なく、求める人は多そうだ。
16 この秋日本に上陸した陽気で爽快なフレーバー酒
RTD
2021年9月発売
コカ・コーラシステム
トポチコ ハードセルツァー
実売価格165円
世界20か国以上で展開する同社初のアルコールのグローバルブランド。甘くないすっきりとした味わいで、カロリーや糖質を抑えている。アサイーグレープ、タンジーレモンライム、パイナップルツイストの3フレーバー展開。関西地方限定販売。
その8【ルーサーバーガー】マリトッツォに続く背徳フードはコレ!
バンズの代わりにドーナツを用いたアメリカ発祥のハンバーガーで、パンチのある味が特徴。高カロリーだが、その濃厚な味につい食指が動いてしまうと話題だ。
【ヒットアナリティックス】韓国で先行事があり日本でのヒットも確実!
若者の食トレンドの発信地・韓国ではすでに、大手ドーナツ店とケンタッキーフライドチキンが期間限定で商品化。日本ではヘルシー志向が進む一方で、マリトッツォなどギルティなフードの人気が続いているため、ヒットの可能性は高い。
17 甘じょっぱいバンズと具材が好バランスな絶品サンド
サンドイッチ
2021年7月発売
DEAN & DELUCA
ドーナツサンド
各605円
軽い食感に焼き、塩が隠し味のココナッツシュガーをまぶして甘じょっぱく仕上げたドーナツに具材をサンド。甘辛いハニーマスタードポーク(右)と、スパイスと甘さが決め手のケイジャンチキン(左)がある。