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2022/3/9 18:15

複雑すぎて「もうひと口…」が止まらない! 日本酒好きが認める蔵の「2万円のスパークリング」試飲レポート

山梨県の白州といえば、サントリーの蒸留所があることから、ウイスキーを連想する方が多いはず。そんな白州には、1750年に創業され272年の歴史を持つ「山梨銘醸」という日本酒の蔵元があります。山梨銘醸の銘柄は「七賢(しちけん)」で、その看板商品は高価格帯のスパークリング日本酒です。

 

七賢はスパークリング日本酒の分野において、常に新たな挑戦をしているブランドとして、日本酒好きの間では広くその名を知られています。そのラインナップのなかでも注目なのが、3月1日から発売されている「七賢 EXPRESSION 2006」という商品。そのお値段は、税込なんと2万2000円! 今回、その超プレミアムなお酒を幸運にもいただくことができたので、ぜひその味わいをご紹介したいと思います!

↑「七賢 EXPRESSION 2006」の内容量は720mlでアルコール分は12%

 

山梨県立美術館とコラボし、ミレーの「種をまく人」をラベルにデザイン

ワインボトルに付けられたラベルは「エチケット」と呼ばれますが、エチケットにもワインの個性が現れます。一見するとワインボトルに見える「七賢 EXPRESSION 2006」でも、最初に注目したいのはそのラベル。ラベルにプリントされているのは、かの有名な「種をまく人」。19世紀のフランスの画家でありバルビゾン派の一人でもある、ジャン=フランソワ・ミレーの作品です。

↑「種をまく人」のラベル。山梨県立美術館が撮影したミレー作品の超高精細画像をもとに、グラフィックデザイナーの葛西 薫・中山智裕の両氏がパッケージデザインを手がけた

 

ノルマンディー地方のグリュシーで生まれたミレーは、34歳でバルビゾン村に移住し、以降は農民たちの姿や自然の風景を力強く描きました。そんなミレーの絵からインスピレーションを受け、七賢の醸造家・北原亮庫(りょうご)氏が「エネルギッシュ」「ダイナミック」「躍動感」といったキーワードのもと、「七賢 EXPRESSION 2006」を生み出しました。

 

七賢はこれまでにも、1980年代にニューヨークで活躍したアーティストのキース・ヘリングとコラボしたスパークリング日本酒を3か年に渡って発売するなど、アートとの関わりは密接。2022年からの3か年は、ミレー作品を数多く所蔵する山梨県立美術館とコラボし、ミレーの絵からインスピレーションを受けたスパークリング日本酒を発売していくそうです。

↑醸造家・北原亮庫氏(左)と代表取締役社長・北原対馬氏(右)

 

きめ細やかな泡はまるでシャンパン!

ラベルをしっかり眺めたら、さっそく「七賢 EXPRESSION 2006」を試飲してみましょう! あ、キャップはコルク栓なんですね。それだけでも高級感が感じられます。

↑金属のワイヤーがかかったコルク栓

 

せっかくなのでワイングラスに注いでみると、きめ細やかな泡がシュワシュワと現れては消えていきます。おお、見た目はほとんどシャンパンですね! シャンパンは瓶内二次発酵させることで炭酸が発生させるのですが、「七賢 EXPRESSION 2006」でも同様の瓶内二次発酵を行っているそう。瓶内二次発酵とは、最初に造った(一次発酵させた)お酒を詰めた瓶のなかに酵母や糖を追加し、密閉した瓶内で再度アルコール発酵を行うこと。炭酸ガスが閉じ込められるため、開栓時に発泡します。炭酸ガスを注入する方法と違って手間がかかりますが、きめ細かく、持続性がある泡が楽しめるという特徴があります。

↑細かい泡が立ち昇る!

 

仕込み水に古酒を使い、二種類の酵母を使った個性的な1本

グラス越しに見ると、お酒にはうっすら色がついています。これは2006年のコンテストに出品するために作られた大吟醸の古酒を使っているから。七賢ではしっかりと熟成・管理した古酒を「七賢 EXPRESSION 2006」の仕込み水の一部に使用しており、それだけでもオリジナリティ溢れる1本となっているんです。

↑うっすらと色づいているのは古酒を使用しているから。水の全量に古酒を使うのではなく、バランスを考えて一部に使用しているとのこと

 

グラスを近づけ、立ち昇る香りはフワッと華やかな印象。さっそく口に含んでみると、穏やかな炭酸がシュワシュワと口に広がります。ほどよい炭酸が食欲を刺激してくれそう。「古酒」と聞くと、少し個性が強いお酒をイメージしていたのですが、本品は米のうまみや甘みとともに、洋ナシや青リンゴのような果実味が感じられ、ほのかな香ばしさもあるように思えます。かといって口に残るわけではなく余韻がスッと消えるので、もうひと口、もうひと口……と進みたくなる不思議なおいしさがあります。

 

この複雑な味わいは、古酒を使ったことに加え、2種類を使ったという酵母の働きでもあるでしょう。なんでも協会7号酵母で穏やかさを、協会1801号酵母で華やかさを表現したそうです。さらに、先述の北原亮庫氏によると、「熟成による味わいで干し草のようなニュアンスがあります。桃のコンポートや完熟メロンのような甘み、さらに山椒のような香りも。余韻は丸く穏やかです」とのこと。口に含んでからの味わいの変化が楽しめる、深みのあるスパークリング日本酒といえるでしょう。

 

アルコール分は12%となっており、通常の日本酒(15~16%前後)よりも低めとなっています。これなら乾杯酒としても楽しめるので、和食はもちろん、フレンチなど洋食との相性も良さそう。ハレの日に楽しむお酒として、日本酒が好きな人だけでなく、ワインが好きな人にもぜひ一度飲んでいただきたい1本です!

↑桐の箱に入った高級感漂う1本。贈り物にもぴったりですね