ハウス栽培がさかんで、今では年中手に入る「ニラ」ですが、実は春から初夏が旬の時期。生命力が強くて栽培しやすく、栄養バランスが良好なことが特徴で、とくに旬の時期は、葉がやわらかく香りも強くなります。そんなニラ、おいしいから好きなのに、餃子のたねに入れたりニラ玉にしたりするくらいしか思いつかない……、臭いが強いからその後の予定に気をつかう……などと悩んでいるなら、今回紹介するレシピをぜひ試してみては? 料理家の松島由恵さんに、ニラを主役としたレシピを教えていただきました。
“臭い”にはワケがある! ニラの健康効果とは?
強い香りがあり、料理のアクセントにぴったりのニラ。レバニラ炒めや韓国料理など、その匂いを引き立たせる料理やほかの食材の匂い消しとして使われます。この香りの強さから、精進料理では「五葷(ごくん)」と呼ばれ使用を禁じられる存在でもあり、「ニラが好き」と公言する人はあまりいない日陰の存在ですが、実は万能野菜なのです。
日本では昔から薬効があると言われており、古事記や万葉集にも登場。香りの元は、アリシンという物質です。このアリシンによって、滋養強壮や疲労回復の効果が期待できるほか、血行促進や身体を温めることでも知られます。緑黄色野菜の中でもトップクラスのβ-カロテンを含み、抗酸化作用や免疫力の活性も期待大。積極的にとりたい食材です。
ニラは生でも食べられる、実は使い勝手のいい野菜!
下処理いらずで、生でも食べられるのもニラのいいところ。野菜炒めやスープに入れるのはもちろん、そのままざく切りして、ごま油やにんにく、塩で味つけしてナムルのようにしたり、細かく刻んで醤油漬けにしたり、サラダに混ぜたりとさまざまに楽しめます。
今回はまず、生のまま食べられるレシピから紹介していただきましょう。
1.「ニラとくるみのスパイスだれ」
2.「ニラとハーブの春雨スープ」
3.「ニラとキノコの春巻き」
お刺身にも焼き野菜にも!「ニラとくるみのスパイスだれ」
生のままハンドブレンダーで攪拌して作る、万能だれ。ニラのピリッと辛い風味が生きたたれは、唐辛子をベースにした辛口調味料ハリッサからヒントを得たと、松島さん。
「わさびのようにツンとした辛さがあるので、お刺身につけるのがおすすめです。焼いた野菜やステーキなどのお肉にも合いますよ」(料理家・松島由恵さん、以下同)
【材料(作りやすい分量)】
・ニラ……1/2束(60g)
・くるみ……20g
・コリアンダーシード・クミンシード……各小さじ1
・パプリカパウダー……小さじ1/2
・唐辛子(種を抜く)……1本
・にんにく……1かけ
・オリーブオイル……大さじ4
・塩……小さじ1/4
【作り方】
1.くるみは炒り、ニラは攪拌しやすい大きさにざく切りする。
「芯の部分は少し硬いので、細かく刻みます。くるみもローストのものを買っても、炒り直すと香りがいいので、ぜひ炒ってみてください」
2.すべての材料を入れてハンドブレンダーで攪拌する。
「はじめは硬いので攪拌しにくいのですが、少しずつ混ざってくるので、ブレンダーを上下に動かしながらペースト状になるまで攪拌しましょう」
3.お刺身などにかける。
真鯛をカルパッチョのようにして、スパイスだれをかけてみました。「冷蔵庫に入れて保存しておけば、2週間くらいは持ちます。白身の魚によく合い、いつもとはちょっと目先の変わった味が楽しめます。最後にドラスフルーツを混ぜたり、ヨーグルトを加えたりするのもおいしいですよ」
次のページでは、2つめのレシピ「ニラとハーブの春雨スープ」を教えていただきます。
体に染みるやさしい味と香りの「ニラとハーブの春雨スープ」
2品目は、ニラの香りが気にならないよう加熱したレシピ。ニラのシャキシャキした歯ごたえを味わえるスープは食べ応えがあり、満足感が高い一品です。「スープ自体はやさしい味つけにし、ミントやバジルも合わせて入れて、それぞれの葉っぱの香りと味を楽しめるようなバランスにしました。ニラをくたくたに煮すぎず、さっと火を通すのがポイントです」
【材料(2人前)】
・ニラ……1束(120g)
・春雨……30g
・合い挽き肉……100g
・にんにく……1片
・生姜……1片
・唐辛子(半分に割り種を出す)……1本
・ごま油……大さじ1
・水……3カップ
・昆布……10cm
・砂糖……小さじ1/2
・塩……小さじ1/2
[トッピング]
・レモン汁……小さじ2
・ナンプラー……小さじ2
・ミント……20枚くらい
・パクチーの根と茎の部分……1/2株
・バジル……5枚
【作り方】
[下準備]
・ニラは食べやすい大きさに切り、にんにくと生姜は潰しておく。
・春雨は熱湯で2分ほど戻してから冷水に浸し、水気を切っておく。
1.鍋にごま油をひき、にんにくと生姜、唐辛子を入れて香りを出し、ひき肉を炒める。
「にんにくと生姜は包丁の平たい部分で押して潰します。香りづけなので、食べるときに外します」
2.肉に火が通ったら、昆布と水を入れて中火にかける。
「ふつふつと沸いてくるとアクが出てくるので、すくいながら加熱します」
3.沸騰したら昆布を取り出し、砂糖と塩で味をととのえ、春雨とニラを加えて2分ほど煮込む。トッピングを飾る。
「ニラは少し長めにカットすると、春雨と一緒につるつる食べやすくなります。さっと火が通れば十分なので、ニラが柔らかくなってきたら火を止めます。それからレモン汁とナンプラーを混ぜて、ハーブを飾りましょう」
最後に、3つめの「ニラとキノコの春巻き」のレシピを教えていただきましょう。
体が重いときにも野菜だけで食べやすい「ニラとキノコの春巻き
最後に紹介するのは、ニラをたっぷり入れたヴィーガンな春巻き。焼いて水分をしっかり飛ばし、スパイスを和えたキノコがボリュームアップにも。
「餃子のように手がかからず、でもごはんがおいしく食べられるおかずとして優秀なレシピにしました。スパイスの香りとニラの味を楽しんでほしいので、味つけはやさしめに。お弁当に入れたり、おつまみにするのもおすすめです」
【材料】
・ニラ……1/2束
・好みのキノコ(エリンギ・しめじなど)……200g
・春巻きの皮……4枚
・にんにく……1/2片
・クミン……小さじ1/4
・ターメリック……小さじ1/4
・塩……小さじ1/4
・米油またはサラダ油……適量
・水溶き片栗粉……適量
【作り方】
[下準備]
・ニラは1~2cmのざく切りにする。にんにくはみじん切りにする。
・キノコは石づきを取り、スライスしたり小房に分けたりする。
1. フライパンにオリーブオイル(分量外)とにんにくを入れて弱火にかけ、香りが立ってきたら中火にし、キノコを炒める。水分が飛んできたらクミン、ターメリック、塩を加え、ニラをさっと和えて火を止める。
「ニラは最初から加えず、キノコの水分が飛んできたら加えて、歯ごたえを残しましょう」
2 粗熱が取れた(1)を春巻きの皮に包む。
「春巻きの皮にたねを1/4ずつ入れて、封筒のように折っていきます。皮には水溶き片栗粉をつけて接着していきましょう」
「ぴっちり包まなくても、少しふんわりとゆとりがある感じで大丈夫」
3. 170度の油で色づくまで揚げる。
「全体が茶色く色づかなくても、端の部分がこんがりしてきたら完成。油をよく切って、盛り付けましょう」
これから暑くなる季節にかけて、疲れたりバテたりすることがないよう、ニラのパワーで体を整えておきたいところです。いつもは炒めるだけだったニラも、この3種のレシピがあれば、レパートリーも広がりそう。みずみずしく伸びやかに育つニラの旬の時期、ぜひ楽しんでみてください。
【プロフィール】
料理家 / 松島由恵
dorathefood主宰。建築業界で長く働いたのち、フレンチレストランでアルバイトしながら料理家の道へ。雑誌の撮影クルーやアパレル企業へのケータリングやお弁当宅配をはじめたところ人気が集まり、現在ではレシピ開発・スタイリングをメインに活動、時折ケータリングも行っている。初のレシピ本『「いつものお弁当」がスパイスで大変身!スパイス弁当』(パルコ出版)が好評発売中。