食欲の秋。新米も待ち遠しくなるこの時期に食べたいのは、ごはんをよりおいしく、食卓を盛り上げてくれるおかずです。今回は、夏に溜まった疲れも癒してくれる、栄養価の高いネバネバ食材を使って、パッと作れる“ごはんのおとも”を紹介します。お米料理研究家であり、フードユニット「ごはん同盟」のしらいのりこさんに解説していただきました。
夏バテの回復にもぴったりの「ネバネバ食材」とは?
“ネバネバ食材”と呼ばれるものには、さまざまあります。発酵して粘りの出る納豆をはじめ、めかぶなどの海藻類や、モロヘイヤやつるむらさき、オクラ、長芋などの野菜と、多くの食材が愛されています。この中から今回取り上げるのは、「モロヘイヤ」「めかぶ」「オクラ」の3種。
めかぶのねばねばには、アルギン酸やフコイダンと呼ばれる食物繊維が含まれています。また、モロヘイヤやオクラにも水溶性食物繊維が豊富で、お通じの改善や糖の吸収を穏やかにしてくれます。腸内環境を整え、暑い時期に溜め込んでしまった疲れをデトックスするのに役立つでしょう。
ではまずモロヘイヤから、レシピを紹介していただきます。
レシピ1.素材そのものの味を楽しめる「モロヘイヤのチヂミ」
まず作っていただいたのは、モロヘイヤのチヂミです。ごく少ない粉でつなぎ、刻んだ青唐辛子がピリッとアクセントに。ザク切りにした玉ねぎのタレが、チヂミとよくマッチします。
「モロヘイヤは、刻んだり茹でたりして粘りを楽しむ料理もありますが、今回はあえて粘り気を前面に出さないレシピにしてみました。それでもほうれん草などで作るのとは異なり、しっとりとしたぬめりのある食感で食べやすいですよ。豚肉を片面に貼りつけて焼いてもおいしいですし、胡麻を入れたり、千切りにしたじゃがいもを足してカサ増してもいいですね。
モロヘイヤの粘り気を出さない調理法では、かき揚げもおすすめ。また、スープにすると自然ととろみがつくので片栗粉でまとめる必要がなく、とろっと感が楽しめます」(料理研究家・しらいのりこさん、以下同)
【材料(卵焼き器一台分)】
・モロヘイヤ…30g
・韓国海苔…適量
・青唐辛子(ししとうでも可)…1本
・小麦粉…大さじ3
・片栗粉…大さじ1
・水…大さじ3~4
・塩…ひとつまみ
・米油…大さじ1
<玉ねぎのタレ>
・玉ねぎ…1/8個
・酢…大さじ1
・しょうゆ…大さじ1
・砂糖…小さじ1
【作り方】
1.玉ねぎのタレを作る。玉ねぎを5mm角に切り、調味料と合わせてラップをせず電子レンジ(600W)で30秒加熱し、冷ます。
2.モロヘイヤの葉をはずしてザク切りにする。
「茎の硬い部分はどうやっても食べられないので、葉と茎の柔らかいところだけを選びます。切り方は適当に、ザクザクと切っていけばOK」
3.ボウルに小麦粉、片栗粉、水、塩を入れてさっと混ぜる。半割にして斜め細切りにした青唐辛子と、モロヘイヤもあえる。
「粉をモロヘイヤにざっとあえていきます。ちょっと粉が少ないかな? と感じるくらいが適量でおいしいですよ。手軽な片栗粉を使いましたが、上新粉を使うとよりカリッとした食感になります」
4.卵焼き器に油をひき、中火で熱してから生地を薄く広げる。韓国海苔をのせる。
「韓国海苔をちらして2分ほど焼いたら、裏返しにして、押し付けるように焼きます。卵焼き器で作ると、できあがった後に切りやすくて便利ですよ。もちろんフライパンでもかまいません」
5.裏面も2分焼く。
「両面がカリッと焼けたらできあがりです。シャキシャキした玉ねぎのたれと合わせると、ごはんもお酒もすすみます。いろんなアレンジをして楽しんでみてください」
次のページでは、めかぶ、オクラをそれぞれ使ったレシピを解説していただきます。
レシピ2.ごはんにかけてさっぱり食べられる「めかぶのだし」
めかぶは、つるんと喉越しのいい海藻の代表的存在。今回は、だしにしていただきます。「だし」とは、山形県に伝わる郷土料理で、そもそもはきゅうりやなすなど、水分を多く含む夏野菜と香味野菜を刻んであえ、味つけしたもの。さっぱりとしただしは、食欲がないときにも食べやすく、ほかほかのごはんにかけてもおいしくいただけます。
「だしにはアレンジの方法がたくさんあるので、作り方をひとつ覚えておくと便利です。今回は、みょうがと生姜でさっぱりした味つけにしましたが、唐辛子やごま油を使ってパンチのある味わいに仕上げたり、まぐろを角切りにして入れて豪華にしたり。ごはんだけでなく、そうめんや豆腐にのせるのもおすすめです」
【材料】
・めかぶ(茹でて細切りしてあるもの)…150g
・きゅうり…1/2本
・みょうが…1本
・生姜(すりろし)…1かけ分
・塩昆布…大さじ2
・黒酢…小さじ1
・白ごま…小さじ1
【作り方】
1.きゅうりは縦に4等分し、タネをそいで取り5mm幅に切る。みょうがも同様の大きさに切る。
「きゅうりはタネのところに水分が多いので、水っぽくなってしまうんです。ここを切っておくだけで、シャキシャキして食感がよくなりますよ。今回のようなお料理やピクルスなど、生で使うときはぜひここを切ってみてください」
2.ボウルにすべての材料を入れてよく混ぜ、完成。
「ぱっと和えてできあがる簡単なお料理なので、忙しいときにも便利。栄養満点なのもいいですね」
レシピ3.たっぷり野菜と香りのごちそう「オクラのサブジ」
オクラを蒸し焼きにしたカレー味のおかず。「サブジ」とは野菜を蒸し煮にしたインド料理で、ベジタリアンからも愛されているメニューです。
「オクラを蒸し焼きにすると歯触りがよく、野菜たっぷりで食べごたえもあります。スパイシーな香りですが辛味は強くないので、誰にも食べやすいと思います。牛肉をプラスしてちょっとリッチに仕上げてもおいしいですよ。
オクラは輪切りにして冷凍しておくと、凍ったままお味噌汁にさっと入れられてとても便利なので、たくさん買ったら冷凍してみてください。我が家では、オクラを薄切り肉で巻いて肉巻きにしたり、カレーに入れたりしています」
【材料】
・オクラ…10本(100g)
・玉ねぎ…1/8個
・トマト…1/2個(100g)
・にんにく(すりおろし)…小さじ1
・生姜(すりおろし)…小さじ1
・カレー粉…小さじ2
・塩…小さじ1/2
・水…大さじ2
・オリーブオイル…大さじ1
【作り方】
1.オクラはガクを取り、塩で板ずりしてから縦半分に切る。玉ねぎはみじん切り、トマトはザク切りに。
「オクラは皮を剥くようにぐるりとガクを取ってから、板ずりします。最近のオクラはケバケバしたものが少ないので、気にならなければしなくてもかまいません」
2.フライパンにオリーブオイルと玉ねぎを入れ、中火で炒める。玉ねぎが透き通ってきたら、弱火にしてカレー粉、塩、にんにく、しょうがを入れて、ひと混ぜする。
「玉ねぎに火が通れば、あとはざっと混ぜる程度でOKです」
3.オクラとトマト、水を入れてざっとあえる。
「味が全体に行きわたるように軽く混ぜたら、蒸し焼きにします」
4.蓋をして5分蒸し焼きにする。
「オクラがややしんなりとして、水気がなくなったらできあがりです。華やかな香りが食欲をそそりますよ」
どれもほかほかのごはんにぴったりのおかずばかり。涼しくなるにつれて食欲も戻ってきて、食べたい気持ちや料理したい気持ちが湧いてくるかもしれません。どれも短時間でできるものばかりなので、ぜひチャレンジしてみてください。
Profile
料理研究家 / しらいのりこ
お米料理研究家。米農家出身の夫・シライジュンイチとともに、ごはん好きの炊飯系フードユニット「ごはん同盟」として活動中。「美味しくお米をいただくこと」を常に研究し、レシピ開発や炊飯教室、メディアなどで活動中。『NHKきょうの料理』番組講師としてもおなじみ。著書に、「ごはん同盟のほぼごはん弁当」(家の光協会)やパラパラじゃなくていい!最高のチャーハン50』(家の光協会)「しらいのりこの絶品!ご飯のおとも101」(NHK出版)などがある。
HP=https://linktr.ee/shirainoriko