味覚の秋と言われるように、秋といえば旬の味覚を味わいたい季節。なかでも栗は、少々の手間がかかってもシーズン中に一度は食べたいですよね。まずは、栗の定番メニュー「栗ごはん」と「栗きんとん」の作り方をマスターしましょう。皮向きなど下処理のコツを押さえながら、間違いなくおいしくできる栗レシピを、料理家・成澤文子さんに教えていただきました。おまけとして、鬼皮を剥いて揚げるだけ! という手がかからない食べ方も。
栗の下処理方法……ポイントは2種類の皮の扱い方
栗の実は、いちばん外側の分厚い「鬼皮(おにかわ)」と、その内側にある「渋皮(しぶかわ)」に覆われています。鬼皮は、そのままの状態から剥くのは硬くて大変なので、浸水させて皮を柔らかくしてから剥くのが一般的です。また、渋皮には名前の通り渋みがあり、渋皮を残す料理ではいかにしっかりアクを抜くかが、おいしさの決め手になってきます。栗ごはんと栗きんとんでは、はじめにこの鬼皮と渋皮を剥くことが必要。下処理の方法を見ていきましょう。
まず、おいしい栗の選び方とは?
栗は表面にハリとツヤがあり、丸みのあるずっしりと重たいものがおいしい証拠。また、指で押したときにしっかりと硬く、ふかふかしていないものを選んでください。
「小さな穴が空いているものは虫が入っているので、最初に選り分けておきましょう。栗をたっぷりの水に浸けたとき、浮かんでくるものは虫食いや傷んでいる場合が多いので、取り除きます。収穫後は新聞紙に包んでビニールに入れ、冷蔵庫のチルド室で3日くらい寝かせると、甘みが増しますよ」(料理家・成澤文子さん、以下同)
「鬼皮」と「渋皮」を剥く手順
1. 栗を水に浸す。
「鬼皮を柔らかくするため、栗を買ってきたら水かぬるま湯に1時間ほど浸けます。本格的な下処理は明日、というときは、浸水させたまま冷蔵庫に入れておき、一晩置いても問題ありません。逆に時間がないときには、40℃くらいのお湯に15分くらい浸けておけば、柔らかくなりますよ」
2. 栗の底を切る。
「栗の底に包丁を入れて、鬼皮と渋皮を切ります。丸い栗は座りが悪いので、手を怪我しないよう気をつけて切りましょう」
3. 鬼皮を剥く。
「切っ掛けができたら、そこから鬼皮を剥がしていきます」
4. 渋皮を剥く。
「渋皮だけになったら、包丁で渋皮を剥いていきます」
5. 水に浸ける。
「渋皮を剥いたら、栗を水に浸しましょう。空気に触れたままにすると乾燥し、変色しやすいので、剥いた順に水に入れていきます」
これで下処理は完了です。栗の形を生かしたい甘露煮にするときは、きれいに剥いて形を整えることも意識してみましょう。
ほっくり口の中でほどける「栗ごはん」の炊き方
大きく切った栗と甘いもち米が秋の到来を知らせてくれる、この季節に欠かせない栗ごはん。新米が届いたら、真っ先に炊きたいごはんです。
「栗の下処理さえ終われば、あとは炊飯器で炊くだけなので、実はとても簡単にできあがります。下処理できたら、あまり時間を置かずに炊きはじめるのがおいしく作るポイント。剥き終えた栗は傷みやすいうえ、時間がたつと表面が硬くなってしまうので、ほくほくに仕上がりにくくなります」
【材料(2合分)】
・栗……200g
・米……1合
・もち米……1合
・昆布……3㎝角1枚
・酒……大さじ2
・塩……小さじ3/4
・水……炊飯器の目盛りに合わせる
【作り方】
1. 栗の鬼皮と渋皮を剥き、栗を半分に切って水にさらす。
「栗は1/3~半分程度の大きさに切ると、ごはんと一緒に口に運びやすく、大口を開けず美しく食べられるので、おもてなしのときにおすすめです。普段なら、切らずにひとつをまるまる入れて炊き、ごろっと感を楽しんでもいいですね」
2. 炊飯器にすべての材料を入れる。
「お米を洗って炊飯器の内釜に入れたら、塩と酒を加えて2合の目盛りまで水を加えて、軽く混ぜましょう。ざるにあげて水気を切った栗と昆布は、お米を平らにならした上にのせて炊くのがポイント。米に混ぜ込んでしまうと水の対流がうまくいかず、炊きムラの原因になってしまいます。炊き込みご飯モードがあれば、そちらを使いましょう。炊き上がったら昆布だけ取り除いて、完成です」
次のページでは、ブランデーで煮た栗の甘露煮を使った「栗きんとん」のレシピを教えていただきます。
甘さ控えめ! 栗の甘露煮(ブランデー煮)を使った「栗きんとん」
栗の甘露煮とは、栗きんとんに入っている甘い栗のこと。甘露煮があれば、栗きんとんが簡単に作れる上、他にもロールケーキやマフィンに入れたり、栗羊羹を作ったりと、お菓子作りにも活用できます。もちろんそのままでもおいしいおやつに。
「ポイントは、栗が割れてしまわないよう、ぐらぐらと煮立てないこと。くちなしの実は、一緒に煮ると鮮やかな黄色に仕上げることができるので、ぜひ使ってみてください。煮沸消毒した瓶に入れて冷蔵庫に入れておけば10日くらい保存できますが、甘さを控えめに作っているので、そのままでは日持ちしません。もし、おせち料理の時期まで保存しておきたい場合は、煮沸消毒した瓶に入れてしっかり脱気しておきます。今回は甘露煮を作り、栗きんとんまで仕上げてみましょう」
【材料(作りやすい分量)】
〈甘露煮(ブランデー煮)〉
・栗……300g(正味180g)
・くちなしの実……1/2個
・砂糖……100g
・ブランデー……大さじ1~2
〈栗きんとん〉
・さつまいも(大)……1/2本(正味200g)
・栗の甘露煮(ブランデー煮)の煮汁……80~100ml
・栗の甘露煮……適量
・バター……5g
・ブランデー……お好みで大さじ1/2
【作り方】
1. くちなしの実を茶袋に入れて叩く。
「くちなしの実は、茶袋に入れてから綿棒で割りました。そのまま一緒に煮てしまうと、砕いたくちなしの実が栗にくっついて取るのが大変なので、お茶や鰹節などを入れる袋に入れて煮ると便利です」
2. 栗は、下処理を参考に鬼皮と渋皮を剥いて水にさらし、煮る。
「栗を鍋に入れ、かぶるくらいの水を注いだら、弱めの中火にかけます。沸騰してきたら蓋をして15分程度弱火で栗に火が通るまで煮ましょう。ひとつだけ竹串を刺してみて、竹串が中心まで刺さるようなら大丈夫。その後、砂糖とブランデーを加えて、袋に入れたくちなしの実を落し蓋代わりにのせて、20~30分弱火で静かに煮ます。最初から砂糖を入れて煮てしまうと栗が柔らかくなりにくいので、栗に火が通ってから加えるのがポイントです」
3. くちなしの実を取り除き、粗熱を取る。
「粗熱が取れたら煮沸消毒した瓶などに移して、冷蔵庫で一晩味を含ませます。甘露煮ができたら、栗きんとんを作ってみましょう」
4. さつまいもの皮を剥き、さいの目切りにして水にさらす。
「ポイントは、皮を厚めに剥くこと。筋っぽい食感になるのを防ぎ、時間が経っても黒ずみません。1cm程度の輪切りにしてから皮を剥くと、厚めに剥きやすいです。残ったさつまいもの皮は食物繊維も多くて栄養も豊富なので、きんぴらなど別の料理に使って無駄をなくしたいですね。」
5. 鍋にさつまいもと栗の甘露煮(ブランデー煮)の煮汁を入れ、さつまいもを煮る。
「さつまいもがかぶるくらいに水を足して中火にかけ、沸騰してきたらクッキングシートを落し蓋にして弱火で煮て、柔らかくなったら潰しながら練り、さつまいも生地を作ります。さつまいも生地がかたい場合は水を加えてもう一度加熱し、柔らかくなりすぎた場合は、火にかけて水分を飛ばします。甘みが足りない場合は甘露煮の煮汁を加えて調整してください」
6. バターとブランデーを加えてさっと混ぜて火からおろし、器に盛って栗の甘露煮を添える。
「なめらかに仕上げたい場合は、バターを入れる前にさつまいもを漉してもいいでしょう」
最後に、次のページでは鬼皮を剥いて揚げるだけでおいしく仕上がる「栗の渋皮揚げ」を教えていただきます。
鬼皮を剥いて揚げるだけの「栗の渋皮揚げ」
アクをとらないと食べられない渋皮も、揚げるとパリッとおいしくなるから不思議。渋皮ごとまるっと揚げた、ほくほくの栗は、おつまみにもおやつにも最高です。
「塩をぱらっとするだけでおいしい、いちばん簡単な栗料理です。このまま食べてももちろんおいしいのですが、野菜やフルーツと合わせてサラダにするのもおすすめ。少量でも満足できるので、おつまみや料理のアクセントなどにちょっと盛るだけで、豪華になりますよ」
【材料(6個分)】
・栗……6個
・揚げ油(サラダ油)……適量
・塩……少々
【作り方】
1. 栗は渋皮をあまり傷つけないように鬼皮だけを剥く。
「きれいに仕上げたいので、できるだけ渋皮を傷つけないように薄めに鬼皮にナイフを入れて剥きます。でも、多少は実が見えてしまっていても大丈夫です」
2. 150度の油で7〜8分揚げる。
「栗が半分くらいかぶる程度の油で揚げていきます。低温でじっくり揚げると、中までしっかり火が通ります」
3. 竹串で刺してすっと通ればできあがり。
中まですっと竹串が刺されば、火が通っている証拠です。油をしっかり切り、盛り付けましょう」
栗料理は、どうしても面倒で難しいという気持ちが先になってしまいますが、一度作って手順を覚えておくと、次の季節からは手を伸ばしやすくなります。都内の農園でも栗拾いが楽しめるので、この季節ならではのイベントもチェックしてみてくださいね。
【プロフィール】
管理栄養士・料理家 / 成澤文子
大学で食物学を学び、卒業後はゼネコン、法律事務所に勤務しながら多くの料理学校・料理教室に通う。「日本一家庭料理がうまい女性決定戦」(日本テレビ系)にて有名シェフ審査員10名満場一致で「初代レシピの女王」となる。その他料理コンテスト多数受賞。雑誌・企業へのレシピ提供などレシピ開発のほか、食育、高齢者向け講演・特定保健指導など健康支援にも携わる。ELLE gourmet公認料理家。石川県金沢市食育推進実践本部専門推進員。日本抗加齢医学会会員。
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