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2024/10/25 22:30

創業90周年のニッカウヰスキーから発売された高コスパすぎる贅沢ウイスキー「ニッカ フロンティア」。その魅力とは?

 「マッサン」の名で知られ、愛好家からは「日本のウイスキーの父」として愛される竹鶴政孝。彼が「日本人に本物のウイスキーを飲んでもらいたい」と情熱を捧げ創業したニッカウヰスキーが、今年90周年を迎えた。 

 

そして期せずして今年は、マッサン放送から10周年の年。そんなニッカウヰスキーフィーバーに湧く今年、4年ぶりの新商品「ニッカ フロンティア」が発売された。本記事ではその魅力をお届けする。 

 

↑商品名には、飲む人をいままでのウイスキー体験とは違う新たな境地(フロンティア)に誘いたいという思いが込められている 

 

ニッカウヰスキー
ニッカ フロンティア
500ml 2200円(税込)

 

ニッカウヰスキー創業の地、余市蒸溜所の個性を凝縮 

「ニッカ フロンティア」は、余市蒸溜所のヘビーピートモルト原酒をキーモルトに使ったプレミアムウイスキー(2000円以上のウイスキー)。キーモルトが作られている余市蒸溜所は、大正時代にウイスキーの本場・スコットランドで本格的なウイスキーづくりを学んできた竹鶴が、最初に建てた蒸溜所で、ニッカウヰスキー創業の地でもある。 

  

↑竹鶴がスコットランド留学中に記した通称「竹鶴ノート」のレプリカ。ノートは2冊あり、どちらもウイスキーづくりの工程がびっしりと細かな文字でまとめられている。かつてイギリスの首相が、ユーモアと親愛の情を込めて「頭の良い日本の青年が、1本の万年筆とノートでウイスキーづくりの秘密を盗んでいった」とスピーチしたという逸話が残っている

 

↑余市蒸溜所のシンボルでもあるキルン塔。現在は使われていないが、もともとはここで発芽した大麦をピート(泥炭・草炭)で燻しながら乾燥させ、麦芽を作っていた

 

↑蒸溜所内に建つ洋館「リタハウス(リタとは、竹鶴がスコットランド留学時に出会い、後に妻となった女性の名前)」は、創業前の1931年に建てられ、1984年までの約50年間、ニッカウヰスキーの研究所として使われていた。写真は2020年冬に筆者が撮影したもの。リタハウスや前述のキルン塔など、蒸溜所内の7つの施設が国の重要文化財に指定されてる

 

蒸溜所が建つ余市町は、北海道積丹半島の付け根にあり、スコットランドに似た寒冷な気候で、良質な水と豊かな自然を有する場所。 

 

さらに、ウイスキーにピーティーな風味(スコッチウイスキー特有の薫香)を付与するのに欠かせないピートの産地でもあり、これが、「余市のウイスキーといえばピーティー」と言われる所以である。そして「ニッカ フロンティア」では、このピートが重厚に効いたモルト原酒がキーモルトに据えられている。 

↑余市蒸溜所の見学コースに展示されているピート。ヨシやカヤといった植物が堆積してできたもので、これを使って麦芽にスモーキーな香りをつける

 

グレーンよりモルトを多く配合したブレンデッド

また、ブレンデッドウイスキーでありながら、モルト原酒が51%以上を占めているのも特徴だ。 

 

ちなみにウイスキーは、大麦のみで作られたモルトウイスキーと、とうもろこしやライ麦、小麦など、モルト(大麦)以外の穀物を主原料としたグレーンウイスキーに分けられ、このふたつの原酒を混ぜたウイスキーをブレンデッドウイスキーという。 

 

そして大半のブレンデッドウイスキーは、モルトウイスキーよりもグレーンウイスキーの配合比率のほうが高い。しかし「ニッカ フロンティア」は、その逆。モルトウイスキーの比率のほうが高いため、ブレンデッドウイスキーらしいすっきりとした飲みやすさがありながらも、モルトウイスキーの魅力であるコクもしっかりと感じられるのだ。  

 

加えて、前述した通りブレンドのキーとして使われているのが、余市蒸溜所のヘビーピート原酒のため、ピートに由来する香り高くスモーキーな味わいも楽しめる。 

↑余市蒸溜所の象徴ともいえるのが、石炭で蒸溜器を加熱し蒸溜する「石炭直火蒸溜」。昔ながらの伝統的な蒸溜法だが、温度管理が難しく熟練した職人技が必要なため、いまもこの手法を続けている蒸溜所は世界を見渡しても希少。1000℃を超える高温のポットスチルを操ることで生まれる適度な「焦げ」が、独特の香ばしさと力強さを生む

 

さらに、アルコール度数が48%と、これまでニッカウヰスキーが発売してきた商品のなかで高アルコールなのもポイントだ。アルコール度数を高めるメリットは、度数が低いと溶けきれずに失われてしまう旨味もそのまま残ること。また、ハイボールにしたときに、炭酸水に割り負けしないといった魅力もある。 

 

加えて、あえて冷却をしないノンチルフィルタードも採用。一般的にウイスキーは、瓶詰め前に冷却して濁り成分をろ過する工程を経るが、冷却せずに常温でろ過を行うことで、原酒の香味成分をたっぷりと残している。 

 

↑蒸溜所内にある「ニッカミュージアム」では、ニッカのウイスキーづくりを様々な角度から学べる。ミュージアムの奥には豊富なラインナップから好きな商品を有料で試飲できる「テイスティングバー」

 

ニッカウヰスキーでは、このノンチルフィルタード、モルトベースのブレンデッドウイスキーという特徴は、最高ランクに値するプレステージカテゴリー(5000円以上のウイスキー)の通年商品、もしくは数量限定商品でしか採用されてこなかった。しかし「ニッカ フロンティア」は、2200円(税込)と手に取りやすい通年商品にもかかわらず、これらの特徴が取り入れられている。 

 

↑「ニッカ フロンティア」のメディア向け発表会の資料より。「余市」や「竹鶴」などの5000円以上の商品はプレステージカテゴリー。今回発売された「ニッカ フロンティア」はプレミアムカテゴリーで、「スーパーニッカ」や「ニッカ セッション」などがそれにあたる。そして1000円以上の商品がスタンダードカテゴリー、1000円未満はエコノミーカテゴリーと呼ばれ、「ブラックニッカ」シリーズが、スタンダードおよびエコノミーに含まれる

 

こだわり抜かれたその味わいは? 

肝心の味わいだが、口を近づけるとまずは深く甘い香りが鼻腔をくすぐる。マーマレードを思わせるフルーティーさを主軸に、しっかりとしたモルトの香りと心地良いスモーキーさが重なり、なんともふくよかな香りだ。 

 

そして口に含むと、アルコール度数の高さからは考えられないほどにスムース。ピート由来のビターさのおかげで、果実のような甘さがぼけずに引き締まり、バランスの良さが感じられる。それでいて喉を通ったあとには、余韻が長く続く。これをこの価格で味わえるのは贅沢すぎるといえよう。 

 

↑ボトルの背面にはしめ縄のモチーフを彫刻。これは創業者の竹鶴が造り酒屋の生まれであることに由来する。ちなみに同様の理由から、ニッカウヰスキー蒸溜所の蒸溜器はすべて、しめ縄が結ばれている。ちなみに写真中央は余市蒸溜所、右はニッカウヰスキーが宮城県に持つもうひとつの蒸溜所・宮城峡蒸溜所の蒸溜器だ

 

「ニッカ フロンティア」のおいしさを余すことなく楽しめるフロートハイボール 

最後に、メーカーが推奨する「ニッカ フロンティア」の飲み方として「フロートハイボール」を紹介しよう。フロートハイボールとは、炭酸水のうえにウイスキーを浮かべるスタイルで、口を近づけたときにその香りを余すことなく堪能できるのが特徴。 

 

また一口目は、ロックで飲むときのようにウイスキー本来の味が楽しめ、飲み進めるうちにグラスの中で炭酸とウイスキーが混ざり合い、さらに口の中でもブレンドされるという、味わいの変化を楽しめる、何度飲んでもおいしいスタイルだ。 

 

もちろん途中で混ぜてハイボールにしてもOKだ。フロートハイボールなら飲むたびに味わいが変わり、飲み進める過程で自分の好みを探ることもできる。そして何より見た目が美しい。 

 

作り方は簡単で、グラスに氷を入れ、8分目ぐらいを目安に炭酸水を入れる。マドラーを炭酸水の液面にあて、そこに沿わせるようにして「ニッカ フロンティア」を注ぐ。そうするとウイスキーが炭酸水の上にフロートする。 

 

↑筆者が試したところ、マドラーを液面に対し垂直にするのではなく、できるだけ寝かせるようにして入れるとうまくいきやすいと感じた

 

文章で読むと難しそうに感じるかもしれないが、やってみると意外と簡単。勢いよく注ぐとウイスキーがこぼれ落ち炭酸水に混ざってしまうため、ゆっくり丁寧に注ぐようにすれば、ほとんどの人はできるだろう。 

 

お酒が弱い方だと、最初のロックを飲んでいるような味わいに驚いてはしまうかもしれないが、ある程度お酒が飲めて、それでいてウイスキーはハイボールしか飲んだことがないという方には、ぜひ一度この飲み方を試していただきたい。「ニッカ フロンティア」のおいしさを余すことなく堪能できると同時に、この一杯を通して、ウイスキーの多彩な楽しみ方を発見できるはずだ。 

 

ちなみに一般的なウイスキーは1本750ml容量なのに対し、「ニッカ フロンティア」は500mlと量が少ないのも特徴。これを少ないと感じる方もいるかも知れないが、購入してみてたとえ味の好みが合わなかったとしても困らない量ともいえる。 

 

では、リピ買いの人にとってはどうなのか?と疑問を持たれるかもしれないが、すでにこの味の虜になっている人ならば、500mlであってもこのおいしさが2200円で手に入るのは十分にお得だとわかるはず。 

 

ニッカミュージアムの様子