「週刊GetNavi」Vol.37-1
マイクロソフトは11月12日より、日本でも12.3型タブレット「Surface Pro 4」の販売を開始した。アメリカではすでに、Pro 4だけでなく、さらにワンランク上のフラッグシップモデルと言える13.5型の「Surface Book」(写真)も発売になっている。こちらは、日本市場への投入はまだ先で、2016年早期の販売が予定されている。
マイクロソフトが自社製ハードウェアのSurfaceシリーズを発売したのは、2012年のことだ。ちょうど、スマホの影響による「マイクロソフト限界論」が最も声高に主張されていた頃で、Windows 8の登場も同じ時期だ。ビジネスモデルを刷新し、タブレットなどの波に対抗する目的があったのは明白だ。
Surfaceの登場は、PCメーカーに衝撃を与えた。これまでマイクロソフトは、PCメーカーにOSを供給する企業であり、PCというハードウェアを売る存在ではなかったからだ。最大のパートナーが最大の敵になる可能性があったわけで、当初は風当たりも強かったようだ。
だが結果的に、SurfaceがPCメーカーのシェアを大きく奪い、「昨日の友が今日の敵」になるパターンは生まれなかった。理由は単純だ。世界的に見れば、売れているPCは「シンプルで低価格なもの」である。Surfaceに代表される「高付加価値型製品」は、注目されるもののそこまで出荷数量が多いわけではない。結局、大多数のPCメーカーが低価格製品で数を売るビジネスを行う一方、高付加価値製品を求める人々の間に「Surface」というブランドが浸透していった……というのが結果である。
Surfaceは、初期に販売されたARM系CPUを使った「Surface RT」を除き、すべて「PCとしてもフル機能が使える」製品である。タブレットとしての形状も好評の一因ではあるが、ペンやタッチを備えた製品でありつつ、PCとして「普通に使える」ことが評価のポイントだった。現在は、Atomベースで低価格な「Surface 3」、主力機種である「Surface Pro 4」、そして、よりハイエンドな「Surface Book」の3ラインになった。
今後、新たにビジネスモデルの変化として注目されるのが「Surface Book」の存在だ。Surfaceといえば、カバーを併用する別売のキーボードを装着し、キックスタンドで本体を立たせる、というスタイルが思い浮かぶのだが、Surface BookではよりノートPCライクなデザインになり、「一般的なPCメーカーの製品との競合が進むのでは」との危惧も大きい。
ただし、マイクロソフトはそう考えていない。
「仮想敵はMacBook Pro。なぜなら、クリエイター向けのハイエンドノートPCは、MacBook Proの市場だからだ」と、米マイクロソフトでSurfaceのマーケティングを統括するブライアン・ホール氏は話す。PCの市場が低価格製品中心で回った結果、ハイエンド・ハイクオリティラインでAppleのシェアが上昇。そこを食ってWindowsのシェアを上げるのが狙いだ。
では、もともとSurfaceはどうやって生まれたのか? ハイエンドPCを得意としてきた日本メーカーはどう対応していくべきなのかは、VOl.37-2以降にて解説することとしよう。
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