「週刊GetNavi」Vol.37-3
Windows 8以降、マイクロソフトはPCに「タッチ」の要素を取り込んできた。当時タッチにこだわったのは、スマホやタブレットの機能をPCに取り込む狙いがあったからだ。
結論から言えば、それは成功したとは言えない。タッチを生かすアプリは、スマホでは花開いたものの、PCの上ではまだ少数派だ。
そもそも、タブレットという市場が、当初の予想よりいびつな成長しかできなかったことが、PC+タッチというソリューションの限界を生み出した。
タブレット市場を開拓したのは、いうまでもなく、2010年に登場したiPadだ。その後、AndroidやWindowsを使ったタブレットも登場し、市場を構成したものの、現状、その伸びは鈍化している。
「タブレットという機器に限界があった」「やはりPCでなくては」という声も聞かれるが、筆者はそうは思わない。問題は、タブレットという製品が、初期から「低価格なもの」ばかり出てきたことだ。
2011年、タブレットの価格はすでに「200ドルになる」と言われていた。Amazonの「Kindle Fire」が199ドルでヒットしたためだ。また、HPやBlackberryが当時は独自OSによるタブレットを作っていたのだが、これらが価格を200ドルに改定したと同時に売れ始めた。Android採用タブレットも低価格を売りにし始め、200ドルから300ドルがターゲットプライスになっていった。2012年には、インドや中国で100ドル以下のタブレットが数多く作られるようになっている。
背景にあるのは、「タブレットは閲覧の道具だから、高くては売れない」という発想だ。スマホでもPCでもなく、必須のものではないから安く、ということだったのだろう。だが、そもそも、大画面で快適にコンテンツを見る道具は、安く作れない。パーツがスマホより安くなる理由は本来どこにもなく、ハイエンドスマホ並のコストになって不思議はないのだ。そして低価格でクオリティの低いハードウェアでは、人々は満足しない。だから、安価なタブレットを買った人は、「タブレットを積極的に活用する」アプリになど目を向けることはなく、市場は活性化しなかった。
高付加価値ハードを貫いたAppleも、マイナスのスパイラルのなかにいる。ハードの満足度が高く、「ハードの買い替えを求めない」人が多いと、その市場は停滞しやすいからだ。他社との競争が買い替えを促進するが、それが起きづらい以上、市場は広がらない。
こうした要素をリフレッシュするのが「ペン」という要素だ。タブレットの「書く道具」としての方向性を強化すれば、PCとは違う価値が生まれる。PCにもペン搭載が当たり前になれば、タイプ以上の価値が生まれる。タッチパネルではうまくいかなかった「次なるPCへの脱皮」ができるわけだ。
このように、タブレットの進化とPCの進化の交差点として、ペンを活用する機器の世界が広がってきており、SurfaceやiPad Proはその最前線にいる。
では、ここでなぜクオリティの高いペンを搭載した機器が急に増えてきたのだろうか? その辺は次回Vol.37-4にて。
●「Vol.37-4」は12/15(火)ごろ更新予定です。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!