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2015/12/31 8:05

【西田宗千佳連載】「長期低迷」だが「数が力」のPC事業

「週刊GetNavi」Vol.38-2

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PCは最近売れなくなっているという。確かにそれは事実だ。調査会社IDCの調べでは、2015年第2四半期における世界のPC出荷台数は、前年同期比で11.8%マイナス。PCメーカーで成長しているのはAppleだけで、ほかは軒並み726.9%(!)ものマイナスとなっている。Windows 10の登場で上向くのでは、との予想もあったが、結果的にはあまり大きな影響が出ていない。

 

一方で、この苦しさの背景にあるのは、PCの低価格化である。日本国内だけを見ても、2000年に平均17万7000円だったPCの平均価格は、2014年には79000円にまで下がっている(一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)調べ)。しかも、国内の状況はまだ生ぬるい。筆者が海外を取材しているときの肌感覚でいえば、比較的市場が豊かなアメリカ、ヨーロッパであっても1000ドルを超えるPCはほとんど売れず、売れるのは500800ドルの製品が中心だ。特別な製品を除けば、「PCは壊れたときに買い替えるもので、500ドルも出せば十分」という意識が広がっている。

 

もちろん、すべてが低価格PCというわけではない。日本にはあまり市場がないが、欧米の場合、ゲームを軸にしたハイエンドPCが一定数売れる。それらの場合、1500ドル、2000ドルといった価格であることも珍しくない。また、マイクロソフトの「Surface」のような、高付加価値モバイルPCも堅調に売れており、こちらも1000ドル以上する。

 

だが、その数は非常に限られている。特にアメリカ市場においては、1000ドルを超えるPCとして、Appleの「マッキントッシュ」が売れる比率が高い。対価格性能比もデザインもよく、他社の1000ドルオーバーPCよりも魅力的に映るからだ。IDCの調査でも、唯一Appleだけが前年比16.1%の成長を実現している。これは、Apple製品が支持されているということだけでなく、単価が他社より高く、価格競争に巻き込まれずにいる、という点が大きく作用している。

 

PCは決して不要ではない。スマートフォンやタブレットですべてが代替できているわけではなく、仕事にも家庭生活にも必須のものだ。だが、そこに多くを期待する人はおらず、価格重視での競争が中心となっているのが、PC市場の不幸なところである。

 

PCは、多数の企業からパーツを集めて生産する。安くていい製品を作るには、いいパーツをいかに安く調達するかがカギになるが、そのためには、パーツメーカーに大量の調達を発注し、よりよい条件を得ることが重要となる。そしてそのためには、大量消費地で大きなシェアを持つことが重要だ。

 

現状、世界におけるトップシェアはレノボ。2位にHP3位デルと続く。レノボがトップであるのは、中国で大きなシェアを確保しており、それが他国での状況をカバーしているからだ。事実、アメリカに限ると、シェアトップのHPにデルが続き、レノボは4位になる。

 

売れ行きも単価も落ちているが、ある意味で必須の商品だけに需要も大きく、そこに食らいついていける企業だけが生き残っている、というのが、PCビジネスの現状だ。

 

では、苦境が伝えられる日本メーカーはどうなのか? その辺は次回以降で解説していく。

「Vol.38-3」は1/7(木)ごろ更新予定です。

 

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