「週刊GetNavi」Vol.28-3
前回説明した通り、Bluetoothヘッドホンやスピーカーにおいては複数の「コーデック」が使われていて、その種類によって音質が異なってくる。といっても、標準で定められているSBCも、単純にスペックだけを言えばひどく悪いわけではないのだ。サンプリング周波数では48KHz・ビットレートは最大約328kbpsであり、MP3でCDをリッピングする時の値だと思えば、そう悪くない。
だが、それでも音質が落ちる理由は2つある。一つは、伝送に使う帯域が製品によって異なること。Bluetoothはどの製品も常に同じ速度で通信するわけではなく、「Bit Pool」というデータ転送量を調整する仕組みがあるが、これはデバイスによって幅がある。前出の「最大約328kbps」というのは最大の場合で、古い機器や安価な機器ではより低いビットレートになり、音がこもったり高音域が消えてしまったりする。こうした仕組みは、機器の機能が悪かった時代は重要だったが、いまはもう問題は少ない。帯域を活かせるコーデックが必要になっているのだ。
二つ目は、伝送する際、本体内で一度展開・圧縮を行うためだ。しかも、その際の質は、コーデックの出来によって変わってくる。そしてもちろん、いま普及しはじめている「ロスレス」「ハイレゾ」の音楽を伝えるには、SBCではまったく能力が足りない。
そこで注目されるのが、AACにaptX、そしてLDACだ。SBCはBluetoothの規格に含まれるのでライセンス料が不要だが、これら3点を使う場合、別途メーカーにライセンス料の支払いが必要になる。コストはかかるが、その分メリットは増える。
AACは、音楽ファイルの圧縮にも使われているから、よく知っている人も多いのではないだろうか。実際、中身は同じものだ。理論上、AACを使った場合には再圧縮を行わず、スマホ内で再生に使っているAACファイルがそのまま伝送されるため、音質劣化が起きない……と言われる。だが実際には、まったく再圧縮をしないというわけではなく、iPhoneを含むほとんどの機器で再圧縮が行われているようだ。それでも、元々の圧縮技術がSBCよりも優れており、高音部の劣化が少ない。
aptXは、CSR社がBluetooth向けの高音質コーデックとしてライセンスしている技術だ。こちらもAACと同様に、圧縮技術が優れているため、SBCに近い帯域で伝送しても、より高い音質になる。
そしてLDACは、さらに高音質になる。SBCと異なり、330kbks/660kbps/990kbpsの3段階のビットレートが設定されており、最高の990kbpsになると、SBCだけでなく、これはAACやaptXの3倍の帯域となる。Bluetoothでは約1Mbpsまでの通信が可能なのだが、そのギリギリまでを音質に使うことで高音質化するわけだ。ハイレゾ音楽を「そのまま伝送」するには力が足りないが、聴感をひどく落とすことなく伝えられる。
一方で、Bluetoothでも音声伝送には、他にも色々問題が存在する。それがなにかは、次回Vol.28-4で解説しよう。
「Vol.28-4」は3/17(火)ごろ更新予定です。
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