「週刊GetNavi」Vol.59-1
ユーザーの「振る舞い」をスマホを使って把握
ソニーが10月に発売する新ヘッドホン群「1000X」シリーズが面白い。オーバーヘッド型の「WH-1000XM2」、ネックバンド型の「WI-1000X」、完全ワイヤレス型の「WF-1000X」の3モデルがあるが、どれも各カテゴリーではソニーのBluetoothヘッドホンのフラッグシップである。
ヘッドホンというと音質、という話になりがちだが、筆者が指摘したいのはそこではない。 1000Xシリーズは、本体だけではすべての機能を使えない。スマホ上のアプリと連携することが前提だ。どのモデルもノイズキャンセル(NC)機能を搭載しているのだが、単にNCするのでなく「声は聞こえやすくする」「外界の音をある程度取り入れる」要素が存在する。例えば、屋外を歩いているときは自動車の走行音などを完全にシャットアウトするのは危険だ。電車の中では、ノイズは消したいがアナウンスは聞きたい。集中して仕事したいシーンなどでは、あらゆる外界音をシャットアウトしたくなるだろう。これまでは、そうしたことを「ユーザー自身がNCヘッドホンを細かく操作して」行う必要があった。だが、1000Xシリーズとアプリの組み合わせでは、スマホの振動センサーの情報やGPSによる移動距離などから「ユーザーの振る舞い」を把握し、自動で適切な状態に切り替えてくれるようになっている。
いままでもNC機能には、「声の周波数帯だけはキャンセルせずに強めて、聞きやすく」する機能があった。また、ボタンなどを操作すると外界音をそのままマイクで取り込み、ヘッドホン内に流す機能もあった。今回ソニーが取り組んだのは、それらの機能を「スマホアプリ側でうまく制御する」ことで、身体の動きに合わせて自動的に切り換えるようにする、ということだ。
今後「スマホ連携」はどのように進化するのか
ヘッドホン市場では、すっかりスマホと連携できるBluetoothヘッドホンが主流になった。特にアメリカ市場では、それなりの価格の製品ならば、もはやワイヤレスでなければ勝負にならない時代、といわれる。それらの場合、ヘッドホン本体だけで細かな設定をするのは面倒なので、本体のボタンよりも、スマホアプリを使う例も増えてはいた。ソニーは、ヘッドホン連携アプリの導入については最後発といっていい。
だが、今回導入したアプリは、他社よりもさらに高機能なものになっている。一般的なヘッドホン連携アプリは、あくまで初期設定や音質調整を行うものだったのだが、ソニーはあえて「スマホのセンサー」を生かし、「スマホアプリを連携させなければ、すべての機能を生かせない」くらいのものに仕上げてきた。
ヘッドホンには現状、高度なプロセッサーもバッテリーも搭載しづらい。しかし、スマホにはどちらもあり、さらに、モーションセンサーやGPSもある。人の動きを判定したり高度な判断をしたり、といった部分をスマホに任せれば、ヘッドホン機能はさらにインテリジェントなものにできる。それをソニーは「1000X」シリーズで示したわけである。
では、今後スマホ連携はどういう方向に進むのか? そのあたりは次回のVol.59-2以降で解説する。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!