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2017/9/29 6:00

【西田宗千佳連載】「操作の都合」から「付加価値」へ進むヘッドホン用アプリ

「週刊GetNavi」Vol.59-2

↑ソニー「WF-1000X」
↑ソニー「WF-1000X」

 

現在、Bluetoothヘッドホンのうち比較的高価なもの、例えば1万円代後半を超えるようなものの多くが、本体とは別に「スマホ用専用アプリ」を用意している場合がほとんどになった。この傾向は2、3年前から始まっており、Bluetoothヘッドホンの大手のJabraやボーズなどが取り組み始めた頃から目立ってきた、と認識している。Vol.59-1でも書いたが、ソニーは大手としては「頑なにアプリを採用しない」企業のひとつだった。なお、同様にアプリを採用しない企業としてApple=Beatsがあるのだが、こちらはiOSに最適化を進め、OS側に特別な機能を入れるようにしているので、少々事情が異なる。

 

そもそも、Bluetoothヘッドホンに専用アプリが出始めたのは、ヘッドホンは多機能化しても操作が難しくなるだけ……という事情があった。ボタンを増やせば機能も増やせるものの、音楽を聴いている最中に操作できるのは「曲を止める」「音量を調節する」くらいのもの。Bluetoothのペアリング操作ですら、「操作が難しくてできない、面倒くさい」という人が多数派だ。

 

だが、ヘッドホンの主流がBluetoothになるにつれ、シンプルな操作だけでは差別化が難しくなってくる。デザインや音質が差別化点だとはいえ、それだけ、という訳にも行かない。

 

そこで、音質の設定変更などの複雑化しやすい部分をスマホアプリに持っていき、よりわかりやすくすることを付加価値としたわけである。Bluetoothで行われる通信のなかに「設定変更」に関わるものを混ぜれば、アプリから操作をするのは難しいことではない。いわゆるイコライザーやノイズキャンセル機能の設定は、ボタンで切り替えるより、ビジュアルでわかりやすく見せたほうがいい。また、アプリと連携させることで、機器が正しくペアリングされているかわかるため、設定の簡便化にもつながる。現在は、ユーザー登録機能まで組み込んで、ユーザーとヘッドホンメーカーの接点になりつつある。過去には、同じメーカー製ヘッドホンであるにもかかわらず、ヘッドホンの種類ごとにアプリが違う……という例もあったし、特別な音楽プレーヤー機能を持ったアプリを提供するところもあった。しかし、そうしたアプローチはわかりにくかったからは、いまは「メーカー側が自社製ヘッドホン向けの統合アプリを1つ用意する」のがトレンドとなっている。例えばボーズなら「Bose Connect」、ソニーなら「Sony | Headphones Connect」というアプリが、ヘッドホンのポータルアプリになっていて、購入後にはまずこれをダウンロードすることになる。ヘッドホンの新製品が出るとアプリのアップデートが行われ、機能が追加されるようになっている。

 

ヘッドホンと連携するスマホアプリは、これからさらに重要になっていく。それはなぜか? そのあたりは次回のVol.59-3にて解説する。

 

●Vol.59-3は10月6日(金)公開予定です。

 

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