デジタル
2018/1/26 19:30

CES 2018でみてきたスゴすぎ“AI”で確信! AI抜きの生活があり得なくなるワケ

1月9日〜12日に米ラスベガスで開催されたCES 2018。出展する多くの企業が「AI」というキーワードを掲げていました。AI(Artificial Intelligence=人工知能)は、クルマ、ロボットのみならずスマートデバイスや家電にも欠かせない技術に。しかし、形としては見えにくいものなので、何がどう便利になるのかがわかりにくいですよね。それを、わかりやすい形で展示し、来場者の注目を集めていたのがオムロンです。

 

進化した卓球コーチロボットは、反射神経抜群

初めてCESに出展したオムロンが、目玉として展示したのが「フォルフェウス(FORPHEUS)」。AIを搭載する卓球コーチロボットで、プレイヤー(人間)のレベルに合わせて、卓球のラリーが続くように、自動でラケットを操作するというもの。

 

↑来場者の注目を集めたAI搭載卓球ロボット「フォルフェウス」
↑来場者の注目を集めたAI搭載卓球ロボット「フォルフェウス」

 

このフォルフェウスは、2013年10月に中国・北京で開催されたイベントで初公開され、その後、日本、インド、ドイツなどで公開。北米では今回が初公開で、性能を向上させた4号機が披露されました。

 

フォルフェウスはピン球の動きを検知する2つのカメラと、人の動きを検知するカメラを搭載し、対戦相手のレベルや球速、軌道などを予測。そして、ロボットアームに固定されたラケットで打ち返し、ラリーが続くように導くというものです。

 

↑卓球台の上にあるロボット本体の左右に搭載されたカメラで球の動きを3Dで捉えて、中央のカメラで人の動きを捉えて分析する
↑卓球台の上にあるロボット本体の左右に搭載されたカメラで球の動きを3Dで捉えて、中央のカメラで人の動きを捉えて分析する

 

ポイントは、人に勝つことを目的とするロボットではないこと。対戦相手のレベルに合わせて反応するため、卓球初心者が相手の場合は、速度が遅い球を、相手が打ち返しやすい位置にレシーブ。実は、卓球がうまい人よりも苦手な人が相手の場合のほうが、予期せぬ方向に返球されるので、難しいアルゴリズムが用いられるそうです。

 

CESのオムロンブースでは、同社の開発メンバーがプレイヤーとなってデモンストレーションを披露したほか、来場者もフォルフェウスに対戦でき、その反応の速さに歓声が沸いていました。

 

↑ゲームが終わると、ゲームの分析がモニターに表示されていた
↑ゲームが終わると、ゲームの分析がモニターに表示されていた

 

↑フォルフェイスは若い世代が中心となって開発している。開発チームの1人である小泉昌之氏
↑フォルフェイスは若い世代が中心となって開発している。開発チームの1人である小泉昌之氏

 

なお、フォルフェウスは、オムロンが工業用ロボットの技術をアピールするために展示するもので、これ自体の販売は予定していないそうですが、「卓球コーチとして売ってほしい!」といった反響もあったようです。

 

↑2015年にアメリカの産業用ロボットメーカー・アデプト テクノロジー社を買収したオムロン。これは、ベルトコンベヤーにランダムに流れたきた製品をアームで反対側のベルトに運ぶロボット。こうした工業用ロボットも関心を集めていた
↑2015年にアメリカの産業用ロボットメーカー・アデプト テクノロジー社を買収したオムロン。これは、ベルトコンベアにランダムに流れてきた製品をアームで反対側のベルトに運ぶロボット。こうした工業用ロボットも関心を集めていた

 

自動運転時代に向けた安全システムに業界が注目

オムロンは、さらに“眠気の予知システム”を発表し、注目を集めていました。ドライバーの眠気を感知する技術はすでに開発済みですが、今回の発表では、眠気を自覚する数分前に、その予兆を検知できることがポイント。運転中のクルマが微振動を続けており、それによってドライバーの頭が動くと、それとは反対方向に瞳孔が向き、バランスが保持されます。これを「前庭動眼反射」と言いますが、この反射がなくなる現象を見つける技術が開発されました。

 

↑眠気の予兆を検出するシステムを搭載してシミュレーター
↑眠気の予兆を検出するシステムを搭載してシミュレーター

 

↑1台のカメラでドライバーの目の部分をマッピングし、居眠り運転を未然に防ぐように導く
↑1台のカメラでドライバーの目の部分をマッピングし、居眠り運転を未然に防ぐように導く

 

今回のCESでは、自動車メーカーを中心に自動運転に関する展示も目立ちましたが、オムロンが開発したこの技術には、自動車メーカーや車載メーカーからのひっきりなしの問い合わせがあり、対応に追われたとのこと。眠気の予兆を感知した場合の対策として、冷気をあてる、シートを動かすなど、複数の方法が考えられるようですが、自動運転時代に向けて、大いに役立つ機能になりそうです。

 

オムロンの展示を見て感じたのは、どちらの技術も「AI」と呼べるが、そのベースとして「ディープ・ラーニング(充分なデータ量に基づく機械学習)」があるということ。最近、あちこちで「AI」という言葉を耳にしますが、“AIは一日にして成らず”ですね。

 

LGエレクトロニクスは新しいAIプラットフォームを導入

総合家電メーカー・LGエレクトロニクスも「AI」で注目を集めていました。同社は、CES 2018の開幕に合わせて「ThinQ(シンキュー)」という新しいAIプラットフォームを発表しました。

 

↑CES 2018に合わせて開催したプレスカンファレンスで「ThinQ」を発表
↑CES 2018に合わせて開催したプレスカンファレンスで「ThinQ」を発表

 

LGエレクトロニクスは従来から独自のディープ・ラーニング技術を取り入れたスマート家電を手がけていますが、今回発表した「ThinQ」は、それをより発展させて、テレビを含め、あらゆる製品を音声操作に対応させていこうというもの。ThinQに対応する製品は、現段階ではLG製品だけですが、プラットフォームをオープンにすることで、他社製品と連携させていく計画があることも発表されました。

 

↑ThinQをコントロールできるスマートロボット「CLOi(クロイ)」
↑ThinQをコントロールできるスマートロボット「CLOi(クロイ)」

 

↑二層式の洗濯機・乾燥機もAI対応
↑二層式の洗濯機・乾燥機もAI対応

 

↑おなじみのディスプレイ付き冷蔵庫は、ディプスプレイから料理の情報を得られたり、家族との連絡にも使える
↑おなじみのディスプレイ付き冷蔵庫は、ディプスプレイから料理の情報を得られたり、家族との連絡にも使えたりする

 

↑有機ELテレビの最新モデルも発表された。これは77インチの壁掛けタイプ
↑有機ELテレビの最新モデルも発表された。これは77インチの壁掛けタイプ

 

↑液晶テレビの画質を向上させるための新しいプロセッサ「α9」も発表
↑液晶テレビの画質を向上させるための新しいプロセッサ「α9」も発表

 

↑「α9」により、斜めから見ても色の歪みがなくなり、鮮明な画質が得られるという
↑「α9」により、斜めから見ても色の歪みがなくなり、鮮明な画質が得られるという

 

ThinQだけでは世界的な広がりを見込みにくいためか、GoogleアシスタントやAmazon Alexaと連携することもアピールされました。LGブースで展示されていた製品には、Googleアシスタントを搭載する製品も多く、日本のユーザーにとっては、そちらのほうが、わかりやすく導入できそうです。

 

↑Googleアシスタントを内蔵するスマートスピーカー「LG ThinQ Speaker」も発売予定
↑Googleアシスタントを内蔵するスマートスピーカー「LG ThinQ Speaker」も発売予定

 

↑ディスプレイ付きのスマートスピーカー「LG ThinQ View」も出店
↑ディスプレイ付きのスマートスピーカー「LG ThinQ View」も出展

 

高額にもかかわらずヒットしたホームクリーニング機「LG Styler」など、日本でも注目度が高まっているLG製品。ThinQによる、さらなる使い勝手の向上に注目しましょう。

 

↑説明員が質問攻めにあっていた「LG styler」
↑説明員が質問攻めにあっていた「LG Styler」

 

↑空港などでの導入が見込まれる業務用の運搬ロボットも出展されていた
↑空港などでの導入が見込まれる業務用の運搬ロボットも出展されていた

 

↑ひときわ注目を集めていた、有機ELの曲面ディスプレイを用いた展示
↑ひときわ注目を集めていた、有機ELの曲面ディスプレイを用いた展示

 

AI同士の連携も含めて、生活にさらなる広がりを予見させられたCES 2018。AIは日本国内でも、昨年に引き続き必ず注目されるキーワードになると思われます。これだけの発展を見せているAIは、もう生活に欠かせない存在になるのかもしれませんね。