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2018/5/24 18:00

最新「自動翻訳デバイス」の語学力を現地出身の人はどう評価する? 安くて軽い「ili」編

海外旅行に行ったとき、やはり心配になるのが、現地でのコミュニケーションです。ツアーでガイドさんが付いているなら安心ですが、自由度が高い旅行だと、意思疎通は自力で行わなければいけません。

 

自身が学んだ経験のある言語なら、さほど問題ないでしょう。しかし、全く知らない言語を使う必要がある場合、事前の準備は必須となります。そんな時に活用したいのが、最近話題の翻訳ツール。伝えたい日本語を話したり、入力したりするだけで、現地の言語に変換してくれます。

 

用意したツールは「ili(イリー)」「POCKETALK(ポケトーク)」「Google翻訳(スマホのアプリ)」の3つ。

 

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↑海外旅行向け翻訳機「ili」

 

iliは2018年2月に一般向けの発売が開始された海外旅行向けの翻訳機。オフラインでの翻訳が行えるのが特徴で、iliに向かって話し掛けた日本語を英語、韓国語、中国語の3か国後に変換して発話します。価格は2万1384円。

 

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↑双方向で会話翻訳が可能なPOCKETALK

 

POCKETALKは50か国語を双方向に翻訳できる通訳デバイス。こちらも音声入力したテキストを翻訳して発話します。小さいディスプレイも備わっていて、テキスト表示も確認できるのが特徴です。ただし、使用時にはWi-Fi接続または専用SIMカードでの通信が必要となります。直販価格は2万4800円~。

 

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↑定番の翻訳アプリ、Google翻訳

 

Google翻訳は翻訳において定番中の定番とも言えるアプリ。オンラインなら、音声入力したテキストを翻訳し、音声で発話できます。カメラで文章を読み取れるのも同アプリならではのメリット。また、オフライン翻訳も限定的に可能です。指定の言語のファイルをあらかじめダウンロードしておけば、キーボードで入力したテキストのみ変換できます。スマホがあれば、無料で利用可能なのもポイント。

 

本記事では、まずiliをピックアップし、実際に英語・中国語・韓国語を母国語とする海外の人に試していただき、使用感について聞いてきました。

 

↑左から順に、検証に協力してくれた、リンさん(中国語圏)、コリンさん(英語圏)、イムさん(韓国語圏)の3名

 

iliは、棒状のデザインをしており、3つのボタンがあります。正面にある丸いボタンを長押しして、ピッと音がしたら、翻訳したい文章をなるべく簡潔に標準語で述べます。話し終わったあと一呼吸おいて指を離すと、認識したテキストを翻訳し、音声で発してくれます。

 

↑サイズはW33xH121.8xD13.0mm、重量は42g。内蔵型リチウムイオンバッテリーで通常使用時間は3日間となる

 

↑言語の切り替えは右サイドにある下側のボタンを長押しすればOK。切り替えには多少の時間がかかる

 

なお、一度翻訳した言語は、前面のメインボタンを押すと翻訳後の言語、サイド下ボタンを押すと翻訳前の言語で再生されます。相手が聴き取れなかった場合や、繰り返し使う場合に便利です。

 

ーー第一印象はどうでしょうか?
「とてもよいデザインをしてるね。ポケットにサッと入れられて持ち運ぶのに便利そうだ」(コリンさん)
「すごい軽い!」(リンさん)

 

デザインについては、皆さんとても良い印象でした。

 

多少カタコトになることがあっても、言いたいことは伝わった

さて、実際に日本語をそれぞれの言語で訳してみて、意思疎通が取れるか確認してもらいました。検証したテキストは[料金はいくらですか?][禁煙席はありますか?][試着してもよいですか?][日本語を話せるひとはいますか?]など。

 

↑ひとりずつ順番に翻訳を試してみた

 

ーーまず、中国語はどうでしょうか?
「完璧ですね。何を言っているのか充分伝わりました」(リンさん)

 

ーー続いて、韓国語は?
「ほぼ完璧です。でも[試着しても良いですか?]について、[試着]が直訳されると韓国語では、ちょっと不自然な感じになりました。口語だとあまり使わないので」(イムさん)

 

その後、[これを着てみても良いですか?]など、聴き方を工夫すると、より自然に翻訳された。

 

ーー最後に、英語は?
「うん、分かったよ。ただ[料金はいくらですか?]と尋ねると、英語の場合、それがfeeなのかpriceなのか場面で異なるから、気をつけた方が良いね」(コリンさん)

 

なるほど、[このチケットの料金はいくらですか?]のように、聴き方を工夫すると良さそうです。

 

このように、その言語でどういう表現がより自然なのかということ。そして同じ単語でも複数の表現に分かれることがあるということ。これらの影響で100点の翻訳ができないこともありました。しかし、「とりあえず伝わればOK」という観光旅行向けのツールなので、多少の誤差は気にせずに使って大丈夫そうです。

 

もし、翻訳した音声を聴いて、相手が変な顔をしていたら、日本語の言い回しを変えて、何度か試してみると良いでしょう。

ーーちなみに音声はどうでしたか?
「機械的ですねー。ロボットが喋っている感じ」(リンさん)
「僕もそう思います。でも、デパートの放送とかでよく耳にする音に似ているから、日本に来ている中国や韓国の人にとっては、不自然に感じないでしょうね」(イムさん)

 

筆者としては、機械的な音声だが、いわゆるボーカロイドの声まで機械的ではない、という印象を抱きました。小さな子ども向けのオモチャが声を出したら、きっとこんな音になるのかな。

 

オフラインのスピード感ある片方向翻訳が特徴

さて、数ある翻訳ツールのなかで、iliがユニークなのは、オフラインで音声翻訳ができること。機内や地下、都市部ではない地域など、通信環境が整っていない場所でも使用できます。SIMカードなどを契約して、通信費が発生することもありません。機種代金を支払って購入すれば、そのまま持ち運んで利用できます。こうした小回りが効くのは同機ならではのメリットですね。

 

また、自分が話した言語を、現地の言葉に翻訳するだけ、というのも同機の特徴。つまり「伝えるだけ」です。反対に現地の人の言葉を日本語に直すことはできません。これは、そもそも「海外旅行では、相手に翻訳機を渡すシーンが少ない」という前提で開発されているから。むしろスマホを取り出す手間や、見知らぬ相手に手渡すリスクを減らす意味があります。

 

↑コリンさんはiliに好印象を抱いたようだった

 

ーー片方向の翻訳について、どう思いましたか?
「Wi-FiやSIMカードが要らなくて、オフラインで使えるのは、とても便利だよね。片方向の翻訳しかできないなら、なるべくYes/Noで答えられる質問に活用すると良いのかも」(コリンさん)

 

一見不便に見える仕様ですが、海外旅行という限られたシーンでは、最低限の意思を伝えられれば充分乗り越えられることも多々。例えば、レストランに入って「おすすめはどれですか」と伝えられれば、それ以上のコミュニケーションは不要だったりするわけです。また、コリンさんが仰ったように、質問の仕方を工夫すれば、片方向翻訳のデメリットも克服できそうです。

 

↑iliの実売価格は2万1384円。販売店はこちら。なお、店舗では、海外向けモデル(英→日・中・西/中→日・英)も販売されている。

 

次回は、POCKETALKについて紹介します。特徴や使い勝手において、どんな違いがあるのでしょうか。

 

POCKETALK編はこちら