行政面の課題が残っている部分も
埼玉県立熊谷特別支援学校では、多くの職員が興味を持ったため、iPadをスムーズに導入できたそうだ。校内では研修会が開催され、iPadを使った授業の「実践集」作りが行われたりした。この授業では・どんな目的で・どんなことをやりました、といった形式で、50の事例が集まったという。
現在、同校では校内の貸し出し用として20台以上のiPadを用意する。また、高等部の生徒は、就学奨励費の補助を活用して、自身のiPadを購入するケースもあるようだ。個人で所有するiPadも申請することで、持ち込める仕組みになっている。ICT機器を活用するための環境は、着実に整ってきている印象を受けた。
一方、行政面での課題は残っているとも、内田先生は指摘する。同校の高等部では、iPadをインターネットに無線接続するために、Wi-Fiルーターを設置しているが、生徒が校内に持ち込む端末は接続できないようになっている。これは、“情報セキュリティに関する埼玉県の条例で定まっている”(内田先生)とのことで、同校ではどうしようもない。
そのため、生徒や職員としては、iPadを自費購入する際にモバイル通信が可能なWi-Fi+Cellularモデルを選択する、またはWi-Fiモデルでは自身のスマホからテザリングを行うなどの工夫が必要になる。セキュリティが関わる問題ゆえに繊細ではあるが、利便性の面で改善を求める声も多いようだ。
“教員がiPadを使うことで、環境は変えられる――”、内田先生はこう断言する。iPadを実際に使う現場から、私たちが学べるものは多い。