デジタル
2018/7/31 17:00

利用規約、ちゃんと読んでる? 「泣き寝入り」を避ける最低限のポイント

インターネット社会になり、日々様々な場面で触れる機会が多くなった「利用規約」。多くのウェブサービスやアプリ、ソーシャルメディア(SNS)は利用規約に同意してからでないと使うことができません。が、この利用規約は長文であるうえ、難解な法律用語が並んでいるため、読むのが面倒くさくなり、読まぬまま同意している人が多いように思います。

しかし、読まなかった利用規約には意外な罠があり、ユーザーとサービス提供者側との間でトラブルが生じた際、前者が不利益を被るということが近年起きています。今回は弁護士の渡邉祐介さんに利用規約の概念と現状、向き合い方をお聞きしました。

↑弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所代表の渡邉祐介さん。個人でのインターネットでのトラブル、企業の事業に伴う契約など、幅広い分野の弁護や法律相談を行っている

 

サービス提供者側が用意した利用規約に何の疑いもなく同意するユーザーたち

−−そもそも「利用規約」とは何でしょうか?

 

渡邉祐介さん(以下、渡邉):利用規約とは、あるサービスを使う際、その提供者とユーザーの間を拘束する契約をいいます。一般的に契約というものは、提供側と利用者側の双方で持ち寄って作るケースもあれば、どちらかの当事者が作って「これでいいですか? サインしてください」といった形で結ばれることもあります。ですが、インターネット上の世界では当事者双方で「こうしましょうか?」と持ち寄ることはほとんどなく、サービスを提供する事業者が用意した利用規約をユーザーが確認して同意するというやり取りが一般的です。

 

−−しかし、あの長い利用規約をきちんと確認して「同意」としている人は少ないように思います。

 

渡邉:そうですね。細かく確認する人は少ないでしょう。2012年に行われたある調査会社の国内調査では、サービスを利用する前に利用規約を読む人は、回答者1000人のうちわずか15%しかいないことが分かったそうです。17年にはイギリスで2万人以上の人たちが、無料Wi-Fiの利用規約に公衆トイレの掃除といった社会奉仕活動を行うことが含まれていることを知らずに同意していたなどという話もあります。サービスを利用しようとする人たちは、サービス提供者が用意した利用規約を見もせずに同意しているのが大半でしょう。

 

しかし、利用規約の内容を読んでみると、中身がとても一方的であり、後に何かトラブルが起こった際、利用者にとって不利益になるようなことが書かれていることもあります。例えば、近年だと「ポケモンGO」をインストールする際の利用規約などが話題になりました。ユーザーは何気なく利用規約に同意していたわけですが、実はそこには「当事者同士で紛争が起きた際は、カリフォルニア州法に準拠する」といった文言が入っていたのです。

 

こうなると、万一トラブルになり、裁判を行うとなった場合は日本法による裁判ができないのではないかということになってくるのです。利用規約通りカリフォルニア州法で争うこととなるわけですから、そうなると、日本人にとっては裁判を起こすにしてもハードルが高くなります。

 

つまり、利用者はサービス提供者側の土俵に引き寄せられているわけですね。

 

−−利用者側に引き寄せることはできないのでしょうか?

 

渡邉:個別の契約の場合とは違って、利用規約のように一律に公表・提示されるケースの場合、利用者側からは利用規約の内容を修正提案するなどは現実的ではありませんから、利用者側に引き寄せるというのは難しいところです。リスクをとらない、ということを一番に考えるのであれば、アプリを利用しないということになってしまいます。しかし、そもそもユーザーはポケモンGOのアプリを使いたくて利用規約に同意するわけですから、どうしても事業者が用意した利用規約に従わざるを得ないのが現状です。

 

あなたの作品は誰のもの?

−−他のアプリなどで注意すべき利用規約にはどんなものがありますか?

 

渡邉:トラブルになりやすいのが知的財産の帰属です。特に、クリエイターがSNSを使って作品を公開する際には注意が必要です。例えば、自分が撮った写真をInstagramに投稿する場合、その著作権がどこに帰属されるのかは注意深く確認しておいたほうがよいでしょう。Instagramは英語の利用規約で「We do not claim ownership of your content, but you grant us a license to use it(意訳:ユーザーのコンテンツは私たちのものではありませんが、ユーザーは私たちにそれを使わせてくれます)」と述べています。

 

しかし、他のサービスで「アプリ上の写真や文章はすべてサービス提供側に帰属する」と利用規約に書いてあった場合は、せっかく自分で撮ったり、書いたりしたものであっても、すべてサービス提供者のものになってしまうことがあり得ます。

 

また、利用規約のなかには個人情報保護を盛り込んでいるものがあります。GoogleやFacebook、Amazon、Appleなど多くの大手サービス事業者は、ユーザーのメールアドレスやID(指紋)、位置情報、デバイス情報、個人情報やデータを収集しています。そしてこれらの情報を第3者と“共有”する可能性があるのです。このようなことを「気持ち悪い」と感じたり、個人情報の悪用を心配されたりする方は、プライバシーポリシーもチェックしておきましょう。

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