「週刊GetNavi」Vol.70-2
Surface Goに代表される「2-in-1」と呼ばれるスタイルのPCが本格的に増え始めたのは、2012年のことである。この年に登場した「Windows 8」がOSにタッチとペンの機能を本格的に取り込み、それに伴ってマイクロソフトを含めた各社が、タブレットに対抗できるPCを作ろうと考えたところから一連の流れは始まっている。
ただし、ペンが使えて「板状になるPC」への取り組みは、2012年にスタートしたというわけではない。タブレットの元祖(と一般には思われている)iPadが発売された2010年よりもさらに8年前、2002年に、マイクロソフトは「Windows XP Tablet Edition」を発売し、俗に「タブレットPC」と呼ばれるものを提案していた。
だが、タブレットPCは成功せず、iPadは成功した。理由は、タブレットPCが「PCであった」からだ。ノートPCとして十分な性能を備えており、さらにペンで手書きできることがポイントだったのだが、それゆえに、当時の技術では重く(ほとんどが1.5kg以上)、バッテリーが長持ちせず(3時間動作すれば上等)、高価(20万円前後が中心)だったので、わざわざそれらを選ぶ人が少なかったのである。
iPadはこうした製品のオルタナティブとして生まれた。軽く(最も重かった初代モデルですら680g)、バッテリーが長持ちして(10時間近く持つ)、安価(5万円以下)と、タブレットPCの欠点をことごとく解消した製品として生まれたことが画期的だった。
一方で「PCでない」ことがiPadやAndroidタブレットの弱点だ。軽いのでPCの代わりに持ち運んで使おうと思うと、「PCと同じアプリが使えるわけではない」「ファイル整理が苦手」といった違いがあるため、そのままではうまくいかない。
話はここでようやく2012年に戻ってくる。
タブレットに対抗するなら、PCとしてそのまま使えるものにすればいい。そのうえで、タブレットと同じように「タッチで使ってサクサク動き、アプリストアからすぐダウンロードできる」という要素を付け加えればいいのではないか……。これこそが、Windows 8と2-in-1の思想だった。
しかし、これはうまくいかなかった。まず、タブレットと同じような価格で買えるPCは性能が低く、「PCとしての満足度」が低かった。また、Windows 8用のアプリストア「Windows Store」にはアプリが増えず、使い勝手も上がらなかった。タブレット対抗としての2-in-1は、iPadには対抗できなかったのだ。
一方で、iPadやAndroidタブレットの売れ行きも、一定のラインからはなかなか増えなくなっていた。むしろ「PCは仕事に必要」であることが見直されていたので、PCの市場は堅調だった。そのため、以前に比べると2-in-1の市場は元気がなく、むしろ「普通のノートPC」こそが元気な時代になっている。
では、なぜSurface Goが世に出ることになったのか? iPadの市場はどうなっているのか? それらの解説は次回のVol.70-3にて。
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