【ボディの秘密1】軽さを求めたマグネシウムリチウム合金素材と筐体設計
前述した通り、今回の軽量化で最も大きなポイントは筐体の見直しです。見直しというと細かいブラッシュアップを想定するかと思いますが、お話を聞く限りはほとんど全見直しですね…! まずはカバー素材ですが、前機種の一部天板に用いていた軽量性に優れるマグネシウムリチウム合金を全面的に採用。
ただマグネシウムリチウム合金は、前機種まで採用していたマグネシウム合金に比べると剛性で劣ります。その点をカバーしているのは冒頭に述べた天板側面の肉厚アップと内部を補強形状にした、成形によるキーボード側カバーの構造です。キーボード側カバーは鍛造成形で立ち壁を作り、底面カバーと組み合わせることで強固の作りとしています。写真で見てみましょう。
実はこの成形、組むのに工夫が必要なんですって…! 具体的には今までは端子類を底面カバーに載せるように配置するだけで済んでいたのが、今回はカバーに用意されたポートにハマるように設置しなければいけなくなっています。
現場で他のラインと工程を見比べましたが、明らかにこの設計により工程が増えている印象。数秒に一回針の穴に糸を通しているような…! しかし、作業工程の見直しとチームの教育徹底で、製品クオリティと効率には影響のないようにしているとのことでした。
軽量化と堅牢性を生み出しているのは、設計の飽くなきこだわりであることはもちろんですが、島根工場のモノづくりに対する対応力の高さも寄与しているのだと痛感。不器用な私には、あの作業は途方もない…!
軽量化の秘密はまだ続きますが、端子についてここで触れておきましょう。「端子が増えているのに軽くなったのはなぜ?」という疑問を私は持ちましたが、設計の考え方としては繰り返しになりますが「ユーザビリティ優先」となっているため、そもそも軽量化と平行して端子の増加は決めていたそうです。
最後まで設計で悩んだのが有線LANポートを残すか否か。有線LANポートの重さが約10g。710g前後まで削いでいったところで悩んだものの、ポートをなくすことはせずに先ほどのネジなど細かな部分の軽量化を選択しています。まさに執念によって生まれた約698g(※5)。
【ボディの秘密2】振動、圧迫に耐える強いボディを追求する試験体制
堅牢性を保ちつつギリギリまで肉を削いで仕上がった究極の軽量ボディ。その信用性を保つために島根工場では特別な耐圧、耐振動試験を行っています。
加圧試験は「満員電車でぎゅうぎゅうの状態」くらいの加圧を想定(※3)。たしかに現実的に起こる加圧ってそれくらいですよね。 耐震試験は自転車試験と呼ばれる試験で、自転車のカゴを模したカゴに同じシチュエーションをイメージした振動を加えるというものでした。これも現実的によくあることですよね。
これまで耐震、耐圧って耐えられる最大値で試すものというイメージを持っていたのですが、きちんとシチュエーションをイメージして検査することを初めて知りました。ユーザーの目線を忘れずモノづくりをする島根工場のスピリットを感じた瞬間です。
約50g軽量化の60%を占める筐体にかけられたリソースをこうして見ていくと、「軽くて丈夫の良さが実感しにくい」なんて言ってた記事冒頭の自分を引っ叩いてやりたくなりますね。軽くて当たり前なんて理想の裏には、これだけの技術と努力があったのです。残った秘密もあと少し。最後はUH-X/C3の「液晶」と「中身」に隠された秘密を暴いていきます。
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