VRゲームはそのうちPCレスに
MRが夢を感じさせる一方で、実際に消費者が楽しめるゲームコンテンツとしては、VRの方が一歩先を進んでいる。中でもHTCが展開する「VIVE」シリーズのプラットフォームには注目しておきたい。
筆者は、こちらについてもMWC19の会場で、現場作業員を訓練するためのコンテンツを体験した。結果は電極に感電して死亡するという散々なものだったのだが(苦笑)、仮想空間でクレーン車を動かし、高所にある破損箇所を修理するという流れは、VRでなければ体験できなかったものだろう。
先述のMRが素晴らしいのは言うまでもない。しかし、世界観の演出が必要になってくるコンテンツでは、VRの方が相性はよい。
さてHTCが出した製品の話に戻ろう。同社は、エンタープライズ向け(大企業向け)として、「VIVE FOCUS PLUS」というソリューションを発表した。その特徴は、無線通信で遊べること、そして壁に装着する基地局が要らないことだ(内蔵のカメラから取得した映像の変化でユーザーの動きを反映する仕組みになっている)。これにより、従来のケーブルという制限に縛られることがなくなり、物理的な条件が緩和される。
また、超音波を利用したコントローラが2点付属することも特徴だ。超音波を利用することで、ヘッドセットがコンテンツそのものを通信する電波との干渉が防げるという。
そして、将来的にはPC無しでVRゲームが遊べるようになっていくというから驚きだ。ケーブルレスだけでなく、PCレスになる。従来高性能なコンピューターに接続して行なっていたグラフィック処理などをクラウド側で実行することで、これを可能にしていくという。
これは「クラウドゲーミング」という概念だが、VR市場での実現化は興味深い。既にグーグルやマイクロソフト、アマゾンなども同様の概念を提唱していることもあり、VRゲーム市場でのクラウド化は、確実に今後数年でホットなトレンドになっていくと思う。
もちろん、そのためには大容量かつ高速な通信が必要となる。5Gによる通信や、Wi-Fi6による接続が前提条件となってくるのは間違いない。MWC19の会期に合わせて、「HTC 5G HUB」という商品が発表されているが、これはこうしたユースケースを実現するための必要な要素であるわけだ。
また、HTC NIPPONの児島社長は、こうした構想の実現に関して「VR酔いの原因である映像の遅延を解消するために、エッジコンピューティングが重要になる」とも述べている。要はクラウドの末端にサーバーを設置することで、素早い処理を可能にする必要があるのだ。5Gの恩恵を受ける分かりやすいユースケースとしても注目しておきたい。
いまはまだ本格的なVRゲームはアーケード施設で楽しむもの。家庭で楽しむ場合も、処理性能の高いPCとの有線接続が基本だ。その場合も高価なハードウェアを一式導入しなくてはならないため、消費者としてはまだまだハードルが高いと言える。しかし、5G時代に入り、PCレスでの環境が整えば、HMDが一式あれば気軽に家庭でVRゲームを楽しめる時代がやってくるだろう。
ちなみに、HTCが提供する「Viveport」というコンテンツストアでは、「Viveport Infinity」というサブスクリプションモデルが19年4月から導入される。Amazonプライムのように一部有料コンテンツこそ残っているそうだが、大部分のコンテンツが月額制で遊び放題になる。これも、将来的なVRコンテンツ市場を見据えた準備と言える。
新しい体験にはワクワクするもの
まだまだ過渡期には違いないが、だからこそMR、AR、VRに関する技術の進化は、とても興味深い。もちろん、BtoB向けの話が中心に違いないのだが、今季はHoloLens 2やVIVE FOCUS PLUSなど、優れたハードウェアが続々と登場してきており、ビジネスソリューションに関わりのない消費者の立場としても利用価値がイメージしやすくなったのではないかと思う。
筆者の主観としても、2年前に体験したVRといまのそれとでは全くの別物になったと言い切れる。HoloLensとHoloLens 2の違いも同様だ。5Gの登場が間際になり、対応スマートフォンの登場が話題になっているが、こうしたxR市場での発展にもぜひ注目してほしい。