モバイルバッテリーや充電器、ワイヤレスイヤホンやBluetoothスピーカーなどで有名なAnker(アンカー)。みなさんも何かひとつくらい、Anker製品を持っているのではないでしょうか。
先日開催された「Anker Power Conference – ’19 Winter」において、モバイルプロジェクター「Nebula」シリーズの新製品「Nebula Cosmos」「Nebula Cosmos Max」が発表されました。
Ankerグループのコンセプトは「Sharing Happiness」。Nebulaは「時間の共有」を提供する
ここ最近のAnkerは、このモバイルプロジェクターにかなり力を入れているように見受けられます。なぜ、モバイルプロジェクターという分野に足を踏み入れたのか、そして今後どのように展開して行くのか。その辺りをNEBULAブランドの開発責任者である、フランク・ヂュー氏にお伺いしました。
ーーAnkerはさまざまな製品を開発していますが、Nebulaシリーズというのはどのような位置付けなのでしょうか。
フランク・ヂュー(以下、フランク) Ankerには、モバイルバッテリー・充電器がメインのAnker、オーディオ製品のSoundcore、掃除機のEufy、自動車関連グッズのRoav、そしてモバイルプロジェクターのNebulaという5つのブランドがあります。すべてに共通するのが「Sharing Happiness」、幸せを共有するというコンセプトです。
そのなかでNebulaの製品がどんな幸せを共有するかというと、「時間の共有」です。今、世界中のどの国でも、家族が一緒の時間を過ごすことが難しくなっています。しかもスマートフォンの普及で、さらに家族が分断されているという状況が進んでいます。
そのようななか、Nebulaシリーズのプロジェクターを使って、映画、ビデオ、写真などのコンテンツをひとつの空間で共有する。そこにNEBULAシリーズの価値を見出していけるようなブランドを目指しています。
家庭用プロジェクターに大事な要素は「使いやすさ」「高画質」「デザイン」
ーー現在、NebulaシリーズのAnker製品群のなかでどのくらいの売上比率なのでしょうか。
フランク 現時点ではまだ5%くらいです。けれども、始まったばかりのNebulaの歴史を考えると、急速に成長しています。これからますます大きな比率を占めていく可能性はあると思っています。
ーー家庭用のプロジェクターというのは、日本ではまだまだ未成熟なジャンルではないかと思っているのですが、そのジャンルを切り開いていくためのポイントは何でしょうか?
フランク 重要な要素は3つあります。ひとつめが使いやすさです。OSとのインテグレーションと言ってもいいと思います。いかにユーザービリティが高いかというのが非常に重要だと考えています。
ふたつめが、映像の質です。既存のプロジェクターに比べて動画などを視聴するのに適したクオリティであること。
そして最後がデザインです。リビングルームなど人が生活するスペースに置く製品ですので、デザインにはこだわる必要があると思っています。既存のプロジェクターはどうしても業務用のような、箱形のデザインが多くなるので、今回発表したCosmosのように、美しいデザインを目指しました。
実際Nebulaシリーズは、レッド・ドット・デザイン賞やIFデザイン賞などを受賞していますので、デザイン面で評価されていることの証明かなと思っています。
スマートフォンの部材や技術を活用してゼロから開発
ーーすでに発売されている「Nebula Capsule II」は、モバイルプロジェクターなのですが、かなり画質がいいという印象でした。モバイルタイプであれだけのパフォーマンスを出すというのは、開発が難しかったと思います。
フランク Nebula Capsuleシリーズは、従来のプロジェクターとは違うユースケースを想定しているため、充電のライフタイムとコンパクトさを両立させるのに苦労しました。そこで、スマートフォンの部材を流用してコストを抑えながら、高機能を実現するという工夫をしています。だからこそ、スマートフォンのアプリケーションやミドルウェアなど、スマートフォンと一緒に使うというシステム全体の設計がうまくいきました。
実際、Nebulaの開発チームには、スマートフォンのデザインの経験がある者がありまして。普通のビジネスユースのプロジェクターとはまったく違う哲学、むしろスマートフォンを作るのと同様の哲学で作っています。なので、コンパクトさの追求や軽量化、緻密さという部分は普通のプロジェクターとはまったく異なっています。
ーーもしかしたら、知識のある人が御社の製品を分解してみたら、驚くかもしれませんね。
フランク 私たちの競合メーカーが、私たちの製品を分解してみたら、オーバースペック、オーバーデザインと思うかもしれません。場合によっては、やり過ぎだと思われるかもしれませんね(笑)。
NEBULAシリーズは3ライン。Cosmosは要望の多かった据え置き型
ーーNebulaシリーズにおいて、Cosmos、Cosmos Maxというのはどういう特徴を持っている製品ですか?
フランク Nebulaシリーズには、3つのカテゴリーがあります。ひとつめがCapsuleライン。これはモバイルユースを想定して、いつでもどこでも使えるように軽量でコンパクトという特徴があります。その代わりパフォーマンスは限定されている部分があります。
ふたつめがMarsライン。これは裏庭やちょっとしたアウトドアのようなところで使えるよう、少し可搬性があってハイパワー。バッテリーもより大きなものを搭載し、非常に明るいルーメンスを実現しています。
3つめがCosmosラインです。お客様のご意見をいただいたところ、家の中でも使いたいという声が多くございました。そこでバッテリーを取り払ってAC電源で給電するというように割り切りました。その代わりパフォーマンス、パワーに関しては最高レベルのものを実現するという考え方で設計しています。Cosmos Maxに関しては4K画質のサポート、1500ANSIルーメンの輝度、そして4つのスピーカーにDolby 5.1ch/7.1chを搭載して外部スピーカーなしでも非常に迫力のあるサウンドを実現しています。高いレベルの映像とサウンドがワンパッケージになった製品となっています。
子どもの寝かしつけに適した子ども用プロジェクターの開発も
ーー今後はどのような製品を開発していきたいと思っていらっしゃいますか?
フランク 先ほどの3ラインに関しまして、それぞれ進化させいこうと思っています。Capsuleラインは、同じサイズを保ったままより軽くパワフルな機能のものを実現していくとともに、さらに小型の、お子さま向けのプロジェクターも企画しています。
ーー子ども向けのプロジェクターというのは珍しいですね。
フランク たとえば、お子さまを寝かしつけるときに、親御さんと一緒に映像を見るといった使い方をされる製品ですね。なので、色や形も子どもが喜ぶようなデザインにしようかと思っています。先ほどの「Sharing Happiness」という話と呼応しますが、親と子どもの時間を豊かにするためのプロジェクターです。
Marsラインに関しては、さらに価格競争力が高いものを現在企画中です。パワフルであり高輝度、もちろんバッテリーが長持ちして低価格というものを作っています。Cosmosラインは、もっと4Kをサポートした製品を作っていきたいと思っています。
「完成度20%くらい」というCosmos Maxの試作機の映像を体験しましたが、それでも十分すぎるくらいの高画質でした。これが製品化されたとき、いったいどのくらいのクオリティになるのか、非常に楽しみです。さまざまなジャンルの製品を意欲的に開発するAnker。まだまだ日本では未成熟な家庭用プロジェクターの分野を、どのように開拓していくのか、これからも注目していきたいと思います。
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