「週刊GetNavi」Vol.44-2
レンズやセンサーを1つの面に複数搭載したスマホは過去にも存在した。2014年、アメリカでAmazonが販売した「Fire Phone」は、フロントになんと5つのカメラを搭載していた。1つは、現在のスマホと同じく、いわゆる「自撮り」用のカメラ。残り4つはなんに使うのかというと、実は「顔認識」に使う。といっても表情を読み取るわけではない。それらのカメラはスマホ本体の四隅に1つずつあって、それぞれが顔を少しずつ違う方向から撮影している。そのデータを照合することでスマホと顔の相対位置を認識する。するとどうなるのか? 簡単に言えば、自分の見ている位置とディスプレイの角度がわかるので、中に表情されている映像を「立体的」に見せられるようになるのだ。
これと同じことは、いまのiOSでも一部できる。持つ方向で壁紙がちょっと傾いて立体的に見える「視差効果」という機能があるが、これは、Fire Phoneがやっていたことに近い。ただしiOSの場合はカメラを使わずモーションセンサーを使うので、効果はごく弱いものになっている。また、任天堂の「Newニンテンドー3DS」では、カメラで顔の位置を把握することで、「裸眼立体視」表示のズレを補正する機能が搭載されている。
カメラを「撮影」でなくセンサーに使うということは、映像を認識し、それを操作に生かす、ということである。Fire Phoneが3D表示のためにカメラを搭載した理由は、当時は3Dテレビなどの影響で3Dコンテンツが増えると考えられていたこと、そして、通販商品のサンプルを見るには3Dが有効、と思われていたからだ。しかし結論からいえば、人々は「そこまでしてスマホに3Dの機能はいらない」「その3D機能に興味はない」と思ったため、売れなかったわけだ。
しかし、「多数のカメラを搭載してセンサーとして使う」というアイデアは間違っていない。前出のNewニンテンドー3DSの例もあるし、PCも近い機能を備える。Windows 10には「Windows Hello」という機能があるが、ビデオチャット用のカメラに加え赤外線カメラを搭載していると、顔の立体構造を把握し、メガネなどに左右されず、非常に高精度かつ高速な「顔認識」を行い、それでパスワードロックの代わりができる。マイクロソフトのSurface Pro 4はその機能を備えているが、あまりに顔認識が正確かつ便利なので、一度使い慣れると元に戻れない。
カメラを複数搭載することは、それらを組み合わせてセンサーにできる、ということに他ならない。顔認識は用途のひとつだが、空間を把握して、自動的に周囲の風景を「3Dデータ」として取り込むことも可能になる。
センサーを活用するということは、ソフトウエア処理が重くなる、ということでもある。スマホの性能が低いと快適にはならないが、それも解決しつつある。というよりも、ハイエンドスマホの差別化が難しくなってきているので「そうならざるを得ない」のだ。
では、これからのスマホにどのくらいの数のカメラが搭載されることになるのだろうか? その辺の予測は次回のVol.44-3にて。
●Vol.44-3は7月8日(金)配信予定です。
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