デジタル
2015/7/1 12:05

「ダウンロード販売」が定着しなかった日本の悲劇

Vol.32-2

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海外との大きな環境の違いとして、日本はそもそも音楽の「ダウンロード購入」の売り上げが低い、ということがある。

 

日本レコード協会の調べによれば、2014年の音楽有料配信の売り上げは437億円。それに対し、音楽パッケージソフト(CDや音楽関連映像ソフト)の生産額は2542億円で、約5.8倍もの開きがある。アメリカの場合、2014年の音楽配信全体の売り上げは45億ドル(約5440億円)。ディスクメディアの売り上げは21億3000万ドル(約2580億円)と、ネットワーク経由の方がずっと多くなっている。

 

大きな違いの原因は、日本はダウンロード購入の仕組みが整っていないことだ。音楽のダウンロード購入というと、多くの人がAppleの「iTunes Store」のような場所での購入を思い浮かべる。アメリカの場合には、そうしたストアでの購入量が非常に多い。だが日本の場合には、そうしたストアの売り上げは伸びていない。音楽配信の最盛期は2009年であり、当時の売り上げは909億8200万円と、現在の倍以上あった。

 

理由は、フィーチャーフォン向けのいわゆる「着うた」市場が強かったからだ。2000年代の着うた市場は、携帯電話料金に重畳するというシンプルな課金方法と、曲を携帯電話の着信音にするという仕掛けにより、利用量が急速に増えた。当時、日本はデジタル音楽の市場において、世界をリードする売り上げを誇っていたのである。

 

だがいまや、その市場は消えた。フィーチャーフォンからスマートフォンへ、携帯電話の主役が移り変わっていくと、売り上げは急速に落ちていく。日本においても、フィーチャーフォン向けの市場は、スマートフォン向けの10分の1にまで小さくなってしまった。

 

フィーチャーフォン向けの着うたは、「音楽を買っている」意識が希薄で、ある種のファングッズだった。継続的な音楽購買にはつながらず、テクノロジーの変化に伴った新しい音楽市場としては定着しなかった。CDの市場が大きいまま進み、「デジタル配信は、そこそこ儲かるが本命ではない」時代が長かったことが、日本の音楽市場を停滞させる原因ともなった。

 

現在、そのCDも売れなくなってきた。2009年の音楽ソフト売り上げは約4075億円もあったが、2014年はそこから4割以上も縮小している。

 

いまからCDの売り上げを復活させるのは難しい。だからこそ、ようやく日本の音楽レーベルも、ネット配信ビジネスに本腰を入れ始めたのである。

 

では、ストリーミング・ミュージックで市場はどう変わるのか? その辺は次回Vol.32-3にて。

 

  • 「Vol.32-3」は7/8(水)ごろ更新予定です。

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