「週刊GetNavi」Vol.33-1
現在マイクロソフトは、次期OS「Windows 10」の普及に全力を注いでいる。ご存じの方も多いとは思うが、Windows 10はWindows 7および8、8.1のユーザーには、当初一年間、無償でのアップグレードが提供される。7月29日から公開がスタートするが、いつも以上にアップグレード率は高まるのではないか、と筆者は予想している。
同時にマイクロソフトは、「Windowsという製品のアップグレード商法」を終了に向かわせる。もはや、Windows 95のように「アップデート版パッケージを求める人の行列」が生まれることはなく、「アップグレード時期に合わせたPCの新製品」も、姿を消すだろう。
これまで同社は、数年に一度OSをメジャーアップグレードし、その際にライセンスと機器の更新を促すことで、OSから利益を得る、というビジネスモデルだった。だが、このやり方はWindows 10以降は採用されない。メジャーOSとしては「Windows 10」の名称のままブラッシュアップされていき、以後の細かな改善やアップデートは基本無料になる。
こうしたやり方は、Appleがすでに採っている手法でもある。現行のMac OSである「OS X」は、「Mac OS X」の名称で登場してからすでに14年が経過しており、中身もほとんど別物に入れ替わっているが、OSのメジャーバージョン番号は「10」であり、名前も大きくは変わっていない。OSのアップグレードは無料だ。
Appleはソフトの会社と言われるが、業務的には完全に「ハードを売って儲ける会社」。MacにしろiPhoneにしろ、自社開発の最適化されたOSを使い、よりよい体験ができるハードウエアを作り、それを販売して利益を得ていることに違いはない。結局OSが必要なのだから、それを単体で提供する必要はなく、同社のハードウエア製品を使う人にはもれなく提供、アップグレードも年一度の定期処理で行う、という形が定着している。
これはなにも、マイクロソフトがAppleを追いかける、という話ではない。同社はこの先、OSというソフトを売るところから高い利益を得る戦略を限界だと分析している。今後は、「OSに紐付いたサービス」の付加価値を高めていく。具体的には、ビジネス用アプリケーション「Office」やオンラインストレージ「OneDrive」などのツールをサービス化し、そのサービスに対する費用で利益を得る。サービスを受ける側は、OSがなんでもいい。スマホでもPCでも、それこそテレビでもかまわない。結果的に収益源は増える。OSとしてのWindowsは、ハードを売りたいメーカーに「PCを作るためのパーツ」として供給されるようになる、というイメージだろうか。
とはいうものの、マイクロソフトも、SurfaceやXboxといったハードウエアを販売している。そうしたハード事業の価値とOSアップグレードの関係については、Vol.33-2以降にて解説していく。
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