「週刊GetNavi」Vol.33-3
スマホが大きな価値を持つ時代になって以降、マイクロソフトは常に追い立てられてきた。文書やコンテンツ作成、ソフトウエア開発の道具として、PCの価値がなくなったわけではないのだが、ウェブを見る、SNSに投稿するなど「そうでない使い方」をするシーンがより広がっている。いま我々がスマホを使うのは、そんなシーンが大半だ。スマホ・タブレットのニーズが広がるにつれ、日常生活でのPCへの相対的な依存度は減っていく。
もちろん、マイクロソフトもそんなことを百も承知だ。だからこそ、Windows 8以降では、PCをタブレット的に使える機能の強化や、マイクロソフト製OSを使うスマホである「Windows Phone」の環境整備が行われてきた。しかし、それがうまくいかなかったのは、皆さんもご存知の通りである。Windows 8路線の改良はPCとしての使い勝手を落としてしまい、主軸であるPCの事業においての評判を落とした。Windows Phoneは採用メーカーが増えず、Windows 8との連携も中途半端なものに終わった。
Windows 10からはそこが見直される。ようやく、PCとスマホ・タブレット向けのOSコアが同じものになり、同社のゲーム機「Xbox One」のコアもWindows 10ベースになる。
すべての機器でWindows 10を動かすと言っても、過去の、いわゆるWindows用ソフトはPCだけで動作する。ソフト実行環境としては「Universal Windows App」が使えるようになる。Universal Appは、Windows 8で「Windowsストアアプリ」「Metroアプリ」などと呼ばれていたものの発展版であるが、Windows 10コアそのものの利用範囲が広がるため、対象機種も広がることになる。理想的には、スマホ・タブレット・PC・ゲーム機などで、同じアプリが、画面サイズごとに最適化された表示で使えることになるわけで、この辺は、AndroidやiOSよりも自由度が高い。しかもそこでは、マイクロソフトが推す、同社の強いサービスも使える。クラウドストレージである「OneDrive」、そしてマイクロソフト・オフィスのサービス版である「Office 365」もそうだ。オフィスについてはすでに優秀なUniversal App版があり、使用する機器の差を感じることが少なくなっている。
ただ実際のところ、これら「あらゆるところでWindowsを」という戦略は、まだその価値がはっきりしてこない。Universal Appでの展開は、アプリの数とバリエーションが増えなければ、消費者にとっては魅力が薄い。マイクロソフト製のサービスにしても、現在はマルチプラットフォーム対応が進み、iOSやAndroidでも不満なく使える。過去のマイクロソフトであれば、サービスを自社OSに特化させ、Windowsに閉じることで利用者を囲い込む戦略を採っただろうが、現在のマイクロソフトはそういう戦略は採らない。サービスの利用者を増やすには、過度の囲い込みよりも裾野を広げて満足度を高める方がプラスであるからだ。逆にそのことは、WindowsというOSを拡販する上ではマイナスとなる。
そこで出てくるのが、「ショーケースとしてのWindowsハードウエア」という考え方である。それがどういうことなのかは、次回Vol.33-4にて。
「Vol.33-4」は8/14(金)ごろ更新予定です。
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