「週刊GetNavi」Vol.45-4
現在、x86系アーキテクチャをゲーム機に使っているのは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)とマイクロソフトだ。PlayStation 4とXbox Oneは、ともにAMD由来のSoCを使っており、特質も似ている。PCゲームと市場連動性が高い点も近い。
一方で、ハードウエアの刷新という面で、マイクロソフトはSIEより積極的だ。8月には欧米で改良版の「Xbox One S」を、2017年末にはより高性能な「Project Scorpio」の製品化を予定している。Xbox One Sはゲーム機としての性能は従来機Xbox Oneと変わらないものの、Ultra HD Blu-rayをはじめとした4K動画に対応し、ボディの体積を現行製品の60%にまで縮小したものだが、Project Scorpioは、性能面で現行製品を大きく上回るものに刷新する。
x86系になったからといって、互換性維持が簡単なわけではない。特に、性能を大幅に向上させようと思うと、ある程度互換性を犠牲にする必要が出てくる。PCではそこが最適化の足を引っ張る要因であり、ゲーム機が互換性を犠牲にする「階段型進化」をしてきたのは、最適化とコストを優先にしたがゆえである。互換性を重視すると大幅なジャンプは難しくなり、性能が高いモデルに合わせたソフトが出しづらくなる。
ハイエンド版PS4はジャンプの幅を小幅にしつつ、既存モデルとの互換性を100%に保った。「あくまで一部のユーザー向け」と割り切った作りだ。それに対してマイクロソフトは、Project Scorpioでより大きなジャンプを狙い、互換性よりも新型機の性能を重視するとみられている。
理由は、Xbox OneがPS4に対して劣勢であるからだ。ワールドワイドでの販売量について、Xbox OneはPS4の半分程度とみられている。苦戦の理由は、性能面で3割程度の差があること、ハードウエアのサイズが大きかったことなど、簡単に言えば「ゲーム機としての完成度の低さ」だった。マイクロソフトとしては、テレビ連携などシンプルなゲーム機にとどまらない部分を軸に初期の戦略を組み立てていたが、ゲームファンの需要は「濃いゲーム」を軸にしたPS4に集まり、差が広がった。
マイクロソフトとしては、こうした問題を解決するために、ある程度大胆な戦略切り替えを必要としている。そこで、性能をテコに実質的な「リセット」を試みるのがProject Scorpio、と考えられている。PS4がリセットしない戦略を採ることとは対照的である。
一方で、マイクロソフト・SIEともに「対PC」として、この戦略が正しいかはわからない。結局最高性能はPCであることに変わりはなく、ジャンプの幅がどうあれ、結局本当に濃いファンはPCを選んでしまい、中間バージョンは結局、期待するほど売れないのでは……という指摘だ。その場合も、結局「Windows」は使われるわけで、マイクロソフトとしては両にらみとも、不徹底とも取れる状況にある。
残る1社、任天堂はまったく異なる戦略になる。来年3月の発売が予定されている新型機「NX(仮名)」は、まだ詳細が発表されていないものの、x86系は採用せず、他社ほど性能は重視しないと見られている。欧米で軸になっているトレンドに乗らないことがどういう結果を生むかは、製品が販売されるまで見えてこない。
●Vol.46-1は「GetNavi」10月号(8月24日発売)に掲載予定です。